今週のメッセージ 2001.5.13

ハンセン病訴訟判決に思う

先週金曜日(11日)、ハンセン病訴訟の熊本地裁における判決が出ました。国がとってきた隔離政策は違憲と判断され、原告の全面勝訴となりました。「やっと普通の人間になれる」とのご高齢となりつつある原告の方々のつぶやきは、言語を絶する長年の苦しみの深さと重さが伝わってきます。らい予防法廃止からすでに5年の月日が流れていました。

それにしても特効薬プロミンが開発され、他方、感染力は極めて弱く、遺伝もしないことが明らかになった時、世界保健機構(WHO)は60年には在宅治療を勧告し、アジヤの各国は数年の内に従ったのに対し、日本だけが世界唯一の例外といわれた程に隔離政策を存続させたのは一体何故だったのだろうかと考えないわけにはいきません。

わたし自身は60年代の終り頃、当時神学生の身でしたが、清瀬の全生園に何度か慰問に行ったことがありました。しかしその時、隔離の存在そのものに対しては既成の事実としてそれ以上のことは考えませんでした。ハンセン病における医学的知識と理解においてやはり無知だったいわざるを得ません。

「ハンセン病とキリスト教」(岩波書店)の著者荒井英子氏は、その著書の中で、特にキリスト者との関りで、「信仰と人権の二元論」と「天皇制とキリスト教との関り」の二点を問題点として挙げています。

この問題は、個々の人間の観点においても、また日本の社会、さらには政治や行政そして医学の世界といった観点においても、実に根深いものがあると考えます。一人のキリスト者として、否、それ以前の一人の人間として真剣に考えるべき重要課題です。この解明なくして一キリスト者、一国民、一人間として真の成長はないのだと思っています。