今週のメッセージ 2002.1.20

構造改革以前の価値観と生き方の変革

先週は、「朝日」の読者投稿欄『声』で紹介された故マルセ太郎氏の手紙について記しました。氏は、明後日が命日となる昨年122日、6年もの長きに渡った肝臓ガンとの闘いを終えてこの世を去っていかれました。

そこで今週は、マルセ太郎氏の語録について触れてみたいと思います。

氏は、特にバブルがはじける以前の経済至上主義的な日本の生き方について次のようなことばを遺しておられます。

“日本には、経済的な成功が幸福だという、大きな勘違いがある。景気が良ければ幸福で、悪ければ不幸だという考え方−。僕は、そういう生き方は最も俗っぽい、つまらん生き方だと思う。成功を望むことは否定しないが、それだけを幸福だと思うのは、想像力の欠乏です。”

また日本の教育についても次のように述べています。

“人格、つまり「人間の格」の高い人を尊敬しようという教えが、日本の教育にはありませんね。”

そして、日本のエリート、政治家、高級官僚について痛烈な批判のことばを遺しています。

“日本のエリート、政治家や高級官僚には、品性も理想もない。彼らが一度でも我々の胸を打つような理想を語ったことがありますかね、国民の前で。あるのは言い逃れ、ごまかし、先送り−。ほとんど僕は絶望しています。だから今、僕は個人主義になった。誇り高く生きる。それしかない。”

 構造改革が強く叫ばれながら、なかなか実現を見ない現実を思う時、それ以前の価値観と生き方の変革がむしろ先なのではないか。このあたりで、日本人全体が真剣に考えてみなければならない課題のように思います。