今週のメッセージ 2004.6.20

「父の日」に思う

 

先週も触れましたモーセの『十戒』の第五戒では、「あなたの父母を敬え」と教えられています。そのことは角度を変えれば、子どもに敬われるような父母であることが求められている、ということでもあります。

この第五戒は、いわゆる親孝行の教えではありません。父母が子に敬われるべき所以は、子どもにとって父母は神の代弁者であり、神の権威の代表者だからです。即ち、親の子に対する宗教教育が前提となっています。

先週(6/13)の『朝日』の「反時代的蜜語」というコラムに、「民主主義道徳の創造」と題した哲学者・梅原猛の文が掲載されていました。その中で氏は、「戦後六十年間、日本人は大変重要なことをおろそかにしていたように思われる」との書き出しで、戦後の民主主義と対をなす新しい道徳を創造することを怠ってきた」ことを指摘、その結果、「道徳なき人間が育っている」とし、「そのような人間の中から、理由もなく人を殺す子どもや、汚職や詐欺などの恥ずべき犯罪を行う大人が出る」と分析した上で、解決策として、「仏教の道徳を中心にして、たとえば儒教の人間への信頼、神道の自然崇拝、キリスト教の希望などを総合した新しい道徳体系の樹立が必要不可欠であると考える」と訴えていました。

氏は先に(4/20)同じコラムで、現首相の靖国参拝に関連し、「理性の復讐を招く靖国参拝」と題した文を記していましたが、その中で、明治の廃仏毀釈を仏殺しと断じ、戦後の天皇の「人間宣言」を以って日本人の無宗教、無道徳が現出したと指摘していました。

先週も記しましたように、宗教・信仰の根があってこそ、倫理・道徳の実も結ばれます。「父(また母)」の「父なる神」への回帰こそ、親の権威回復や道徳回復の為の一番の近道です!急がば回れです!