今週のメッセージ 2005.2.6

『後世への最大遺物』

表題『後世への最大遺物』は、内村鑑三の著書のタイトルです。もう少し厳密に言うと、内村が1894年に行った講演です。

内村鑑三は、一般的には無教会主義のクリスチャン・リーダーとして知られています。彼は上州高崎藩士の長子として生まれ、儒教的背景と武士道精神によって幼児期を育まれます。その彼がキリスト教と出会ったのは札幌農学校時代です。「少年よ、大志を抱け!」の名言で知られるクラーク博士の指導を得てキリスト教に入信します。同期の有名人としては新渡戸稲造がいます。後に内村の影響を受けた有名人としては、志賀直哉、有島武郎、正宗白鳥等の文学者、また東大総長を歴任した南原繁、矢内原忠雄等がいます。

少し前置きが長くなりましたが、本題に戻って『後世への最大遺物』とは、「勇ましい高尚なる生涯」を指しています。内村は、われわれは後世に何を遺せるかを問う中で、お金、事業、思想を挙げた上で、「それならば最大遺物とは何であるか。私が考えて見ますに人間が後世に遺すことのできる、そうしてこれは誰にでも遺すことのできるところの遺物で、利益ばかりあって害のない遺物である。それは何であるかならば勇ましい高尚なる生涯であると思いす。...しかして高尚なる勇ましい生涯とは何であるかといと、...この世の中はこれはけっして悪魔が支配する世の中にあらずして、神が支配する世の中であることを信ずることである。失望の世の中にあらずして、希望の世の中であることを信ずることである」と語っています。

起こり来るさまざまな事柄により、ついつい未来に絶望しやすい昨今ですが、「勇ましい高尚なる生涯」を志す信仰の日々でありたいと思います。