今週のメッセージ 2009.12.27

シメオンとアンナ

 

表題は二人の人物の名前です。両者とも『ルカによる福音書』においてクリスマス後の記事に登場している人たちです。シメオンは男性、アンナは84歳にもなる高齢の女性です。

主イエスの誕生から40日たった時、ヨセフとマリアはエルサレムの神殿にやって来ました。律法の定めに従い、初子のイエスを神に献げるため、そして、マリアの清めのためでした。すると、この二人の老人は、いち早くそれを覚り、その幼子イエスのところにやって来たのです。

シメオンは幼子を腕に抱き、神をたたえて言ったのです。「主よ、今こそあなたは、...この僕を安らかに去らせてくださいます。わたしはこの目であなたの救いを見たからです」と(ルカ2:29.30)。

老人は、死を身近に感じるようになっている存在です。そして老若男女を問わず、死こそ人間の最大の問題です。なぜなら、死こそ人間の罪がもたらした問題、また人間自身の力では抗うことができないものだからです。実に使徒信条は、この救い主の救いを、“罪の赦し、からだのよみがえり、永遠の命”と告白します。

従って、老人シメオンの、安らかに死を迎えることが出来るという言葉は、決して消極的な言葉ではなく、驚くべき信仰告白なのです。

他方、84歳の高齢になっていたアンナは、幼子のもとに近づいて来て神を賛美すると共に、出て行って「救いを待ち望んでいる人々皆に幼子のことを話した」(ルカ2:38)と記されています。

こうして見ると、老人は老いの悲哀を覚えながら引っ込み、消極的になってしまうのではなく、むしろ積極的にキリストの福音を証しすべき存在であることがわかります。