ユダヤ人向けの福音書

クリスチャンになり、聖書を読み始めた最初の頃、新約聖書の最初に置かれている福音書には疑問を禁じ得ませんでした。特に最初の3つ(マタイ、マルコ、ルカ)に関しては、なんで同じようなものが3つもあるのかと思いました。入信から7年して献身を決意し、神学校に入りました。

ある時、4つの福音書を統合したら主イエス・キリストの全体像がもっと鮮明に掴めるのではと考え、その作業に取り掛かりました。まずB7判の新約聖書2冊と大学ノートを購入しました。その大学ノートを横にして、各ページを2段に区切り、開いた時に4段になるようにしました。そして各欄を上から順にマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネとした上で、福音書の記事を時間的順序に従って切り取り、それを各欄に貼り付けていったのです。

厚い大学ノートを2冊使って作業を終えました。

さて結果はどうだったでしょう。まず、福音書は必ずしも時間的順序に従って記されていないことがわかりました。また、いわゆる偉人の伝記のように、誕生から死そしてキリストの場合は復活・昇天まで、満遍なく記されているのではなく、誕生そして3年6ヶ月の公生涯、取り分け十字架と復活に多くのスペースが費やされていることがわかりました。

しかし、主イエス・キリストの全体像が鮮明になったかというと、そうはならず、却って混乱を招く感じになってしまいました。

この経験から、まず各福音書ごとに読んで、その福音者が描いている主イエス・キリストの像を把握することが大事であることを知らされました。

すると、まず最初のマタイ福音書は、読者が旧約時代に通じていることが前提になっている福音書であり、それはユダヤ人という読者を強く意識して書かれているものであるということが出来るでしょう。