今週のメッセージ 2010.9.5

洗礼者ヨハネによるキリストの紹介

「その方は、聖霊と火であなたがたに洗礼をお授けになる。」

(マタイによる福音書・3:11b)

先々週、小生が神学生時代、4つの福音書を統合させてイエス・キリストの全体像を明らかにしようと試みたが失敗に終わったことを記しました。しかし、その作業の御蔭で、福音書が必ずしも時間的な順序に従って書かれてはいないことや、偉人の伝記のようには記されてはいないことをはっきり認識することが出来たことも述べました。

その一つの具体例を挙げるならば、マタイ福音書の2章と3章の間には30年近くの歳月が流れていることです。2章は聖家族一家がエジプトから帰還しナザレに定住したことが書かれています。3章に入ると洗礼者ヨハネの宣教の記事です。ルカ福音書によると、主イエスが宣教を始められた時はおよそ30歳とあります(323)。そして、主イエスの宣教開始はヨハネの逮捕・投獄を契機としていることから(マタイ412-17)、約30年の歳月の流れが推測出来るわけです。

ところで、先駆者的役割を担ったヨハネが主イエスを紹介している言葉が冒頭の聖句です。すなわち「聖霊と火で...洗礼をお授けになる」方と言うのがその紹介の言葉です。

では、“聖霊と火による洗礼”とは何を意味しているのでしょうか。

マタイは、ヨハネの出現を預言者イザヤの預言の実現とし、イザヤ403を引用しています(3節)。そのイザヤ40章の内容や、マタイ31112を考え合わせると、メシア(キリスト)による最後の審判をさしていると思われます。故に、「悔い改めよ」と叫び(2節)、「悔い改めにふさわしい実を結べ」(8節)と諭しているわけです。