今週のメッセージ 2011.8.21

適材適所

 

昭和の最後の宮大工といわれ、長年法隆寺の解体修理に携わってこられた方に西岡常一氏がおられます。すでに1995年に他界されましたが、生前、法隆寺1300年の歴史の中で、各時代の建物を、自分の目と手で確かめて、各建物の技法を体得できた工人は、恐らく自分ひとり。その意味で自分は「一番の幸せ者」といわれていたということです。

氏によると法隆寺大工の口伝で「木を買わず、山を買え」といわれているそうです。建物の条件と動きを、木の生えている山の状態にあてはめて、その山全体で必要な木を揃えよというのがその教えとのこと。同じ種類の木でも、山の頂上、中腹、谷、斜面の角度、北および西側、南および東側、風当たりの強弱、植生の疎密などで、反り、硬さ、軟らかさはもとより、材質はさまざま。右に反る木に、同じ力で左に反る木を組み合わせれば、左右に働く力が釣り合って、塔がねじれたり、傾くことはない。また力のかかる所や軸部材には、ひねくれねじれて、節のある木を持ってくる。そういう木は、山の頂上の南あるいは東側の、強い風当たりの所に生えたもの。北側、西側、他に筋に育った木は、素直でおとなしく、材質もやわらかなので力も弱く長持ちしない。そこで造作材に使うといった具合です。即ち、その木のくせを見抜いて敵意適所に使うことの中に世界最古の木造建築法隆寺の秘密があるというわけです。

ならば、最高の棟梁キリストはさらなる組み合わせをなさると信じます。

「キリストにより、体全体は、あらゆる節々が補い合うことによってしっかり組み合わされ、結び合わされて、おのおのの部分は分に応じて働いて体を成長させ、自ら愛によって造り上げられてゆくのです。」

(新約聖書・エフェソ4:16)