今週のメッセージ 2012.1.8

クリスマスと老人

 

クリスマス・ストーリーの中に、マタイは東方からの占星術の学者たちを登場させ、他方、ルカは野宿しながら夜通し羊も群れの番をしていた羊飼いたちを登場させていることは興味深い。なぜなら、東方からの学者たちは異邦人であり、ユダヤ人からは汚れた輩として蔑まれていた人たち。他方、羊飼いたちは当時ローマ皇帝による住民登録の勅令が出ていたにもかかわらず、どうやら登録の必要がないようで物の数に入れられていなかった様子。すなわち福音書は、異邦人たちを、そして社会の底辺に生きていた羊飼いたちをクリスマス・ストーリーの中に登場させているのです。

さらにルカは、救い主が生後40日経った頃の出来事を記し、その中にシメオンという老人とアンナという84歳の老女を登場させています。しかもアンナについては、「エルサレムの救いを待ち望んでいる人々皆に幼子のことを話した」(2:38)と記しています。聖書が伝えている最初の伝道といえるでしょう。

老人はとかく、もう年だから、と消極的になりがちです。しかし老人は人生を長く生きてきています。社会や歴史を長く見てきています。だからこそ、キリストの福音を福音として捉えることに広さと深さを持ち、従って福音を伝えることにおいても広く、深く、豊かに伝えられるのではないかと思います。シメオンは、「イスラエルの慰められるのを待ち望」んでいたとあります(同25節)。ローマの属国と成り下がっていた国を憂いていたのでしょう。アンナの結婚生活はわずか7年。早くに夫と死別。以後84歳になるまで一人で人生の荒波をわたってきたわけです(36,37節)。

こうして見ると、福音に豊かに与り、福音を豊に伝え得る人とはいかなる人が見えてくる感じがします。