今週のメッセージ 2012.5.6

死者の復活とキリストの復活

 

先週に引き続き“復活の章”として知られる『コリントの信徒への手紙第一』の第15章からメッセージを記します。

コリントはギリシャの町です。12節に、「キリストは死者の中から復活した、と宣べ伝えられているのに、あなたがたの中のある者が、死者の復活などない、と言っているのはどういうわけですか」とパウロが問うています。この問いの背景には、コリント教会の信徒の中に当時のギリシャ哲学の影響を受けていた者の存在が考えられるようです。

そのギリシャ哲学の影響とは、ひとことで言うならば肉体の蔑視です。プラトンはギリシャ思想史上初めて霊魂不滅の原理を打ち出した人物と言われています。そこには霊肉二元論に立った霊魂の尊重、そしてその背中合わせに肉体の蔑視の考え方がありました。

霊魂尊重から来る霊魂不滅の考え方、他方、反面の肉体蔑視から来る「からだのよみがえり」の否定は、いずれもキリスト教の福音の真理とは相容れないものです。キリスト教の宣教する福音の真理の中心は、観念的な霊魂不滅の教説ではなく、また肉体を蔑視し、「からだのよみがえり」を否定するものでもありません。それは、キリストの復活に基づく、霊とからだを併せた丸ごとの復活、現実的かつ終末論的な「死者からの復活」です。

先週、「最も大切なこと」の主題で、キリストの福音の中心――十字架の死と三日目の復活――について記しましたが、このキリストの復活と死者の復活は不即不離の関係にあります。死者の復活について語られている次の段落(1219節)では、「死者の復活がなければ、キリストも復活しなかったはずです」と二度も言われています(13,16節)。しかも死者の復活のためにキリストは復活されたと示唆されているのです。