今週のメッセージ 2012.7.15

信仰について

 

スウェーデンの作家でラーゲルクヴィストがいます。彼は1950年に『バラバ』という作品を著し、その翌年、その『バラバ』でノーベル文学賞を受賞しました。

バラバとは、福音書の主エスの十字架の場面に登場する人物です。ローマ総督ピラトは過越祭の恩赦を利用してイエスを赦そうと考えたのですが、ユダヤ人たちはバラバをと主張。そのためバラバは処刑を免れたのでした。

作品は、それ以後の彼の人生を描き(勿論フィクション)、ついに彼は、西暦64年に起きたローマ放火事件(キリスト教徒の仕業とされたが、実際は悪名高きローマ皇帝の自作自演といわれる)で捕えられ、処刑されてしまうのです。

最後のバラバの磔の場面は実に印象的です。

  バラバだけは、まだ独り生き残ってぶらさがっていた。死が、あれ程までに怖れ続けてきた死が近いと感じたとき、彼は暗闇のなかへ、まるでそれに話しかけるかのようにいった。

  ――お前さんに委せるよ、俺の魂を。

  そして彼は息絶えた。

「お前さん」とは誰を指しているのか。キリストか、それとも...と話題になりました。そこには主人公バラバが、キリストを信じたくても信じられない近代人の代表として描かれていたからでしょう。

人間は、信仰に関しても、わかったら信じようとか、見て信じようという姿勢で追及しがちですが、「信仰は聞くことにより、しかも、キリストの言葉に聞くことによって始まるのです」(ローマ1017とあるように、祈り心をもって聖書の言葉に聞くところに生まれていくものなのです。