今週のメッセージ 2014.10.12

第十戒

 

「あなたは隣人の家をむさぼってはならない。」

(旧約聖書・出エジプト記20:17、口語訳)

十戒もいよいよ最後の第十番目の戒めとなりました。冒頭には口語訳を掲げましたが、わたしたちの教会の公用聖書である新共同訳では、「隣人の家を欲してはならない」となっています。「むさぼってはならない」「欲してはならない」と訳されている語は、元々は「留め金をはずす」(奪い取る)の意味だといわれます。すると、どちらかと言えば、「むさぼってはならない」の方がニュアンス的に近いかなと考え、口語訳の方を掲げた次第です。

すでに見てきた後半の人との関わりのあり方に関する戒めでは、第六戒で「殺人」、第七戒では「姦淫」、そして第八戒では「盗み」といういずれも行いに関するものです。それに対して次の第九戒では、「偽証」という言葉に関する戒めです。では、第十戒では何が戒められているかと言うなら、それは行いではない、言葉でもない、「貪り」即ち「貪欲」という心の思いに関するものと言うことが出来ます。

ところで、「むさぼってはならない」「欲してはならない」と言われると、先の行いや言葉に関するものと比べて何か漠然とした感じを受けるかも知れません。行いとして現れていない、言葉にもなっていない、心の思いの段階ですから、どうしても今ひとつ掴みどころがない思いを禁じ得ません。

わたしたちの教会では2011年の教会標語として「受けるよりは与える方が幸い」という使徒言行録20:35に依拠した言葉を掲げました。ある神学者は、これを第十戒の積極的・肯定的な言い換えと言っています。そのように考えるならば、「隣人の家をむさぼってはならない」、がより明確に捉える助けになるでしょう。