今週のメッセージ201/01/17)

無何有郷

 

表題をご覧になって“何、これ?!”といわれる向きも多いかと思います。確かに滅多にお目にかかることのない言葉です。読み方は“むかうのさと”。その意味は、「自然のままであり、人間的な欲望・苦労のまったくない理想郷」(岩波・国語辞典)です。つまり一言でいうなら「理想郷」のことです。英語でいうならば“ユートピア(utopia)”。この“utopia”という語は、元々はギリシャ語の“ou,無”と“topos,所”が合成されて生まれた語です。明治時代に、この“utopia”の訳語として使われたのが「無何有郷」なのです。

聖書は66の書から成っていますが、最後の書は『ヨハネの黙示録』と呼ばれる書で、22章から成るこの書の最後の2章は、敢えて見出しをつけるとするならば「新天新地」がふさわしいでしょう。

その中に以下のような聖句が出て来るのです。

 「見よ、神の幕屋が人の間にあって、神が人と共に住み、人は神の民となる。神は自ら人と共にいて、その神となり、彼らの目の涙をことごとくぬぐい取ってくださる。もはや死はなく、もはや悲しみも嘆きも労苦もない。最初のものは過ぎ去ったからである。」(3,4節)

これは、俗の表現を用いるならばまさに“ユートピア(utopia)”です。しかし決して「無い所」ではありません。神はいわれます。「見よ、わたしは万物を新しくする」(5節)と。万物を創造された神は、いつの日か万物を新しくされるというのです。しかもその「新しさ」は、時の経過により古びて行く新しさではなく、古びることのない「新しさ」、即ち、1/3に記した“カイノス”なのです!キリストの救いは、最終的に「無何有郷」を現出するものです!