今週のメッセージ201/08/28)

コペルニクス的転回

 

 表題のことば、「コペルニクス的転回」は、元々はカントのことばである。このことばをヴィクトール・フランクルが、その著書『夜と霧』の中で使っている。

2時世界大戦中、ヨーロッパの千2百万人のユダヤ人たちがナチにより虐殺された。その数はヨーロッパにいたユダヤ人の3分の2以上に相当するといわれる。一旦収容所に入れられたら、煙突による救い以外に出口はない。即ち、死体焼却炉で焼かれて煙となって煙突から出る以外に出口はないというわけである。

 ところが、ヴィクトール・フランクルという精神医学者は、奇跡的に収容所から生還し、上述の書を著したのである。その中で、1944年のクリスマスと1945年の新年の間に、収容所では未だかつてなかった程の大量の死亡者が出たことが記され、その原因は、クリスマスには家に帰れると期待した囚人たちが、その期待を裏切られたことが原因といわれる。かように人間にとって希望と失望・落胆は多大の影響を及ぼすわけである。

 そうした収容所の体験を通してフランクルはいうのである。“人生から何をわれわれはまだ期待できるか”ではなく、“人生が何をわれわれから期待しているか”である、と。このことは言い換えれば、自己中心から他者中心へ、更に言えば、自己中心から神中心へ、ということだといえる。

 そこであらためて、「人を生かすものは霊であって、肉はなんの役にも立たない。わたしがあなたがたに話した言葉は霊であり、また命である」(ヨハネ663、また併せて、「人はパンだけで生きるものではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きる」(マタイ4:4)の聖書のことばを心に留めねばならない。