今週のメッセージ201/0/1

自己中心から他者中心へ

ヴィクトル・E・フランクルが著した『夜と霧』という書があります。第2次世界大戦下で、ドイツ・ナチにより、なんと当時ヨーロッパにいたユダヤ人の3分の2以上が虐殺されました。人数にすると6百万人以上と言われています。

著者フランクルは、家族全員と共にアウシュビッツの強制収容所に送られ、両親、妻、こどもはガス室で殺され、あるいは餓死したのですが、彼だけ、凄惨な生活を経て生き延びることが出来たのです。冒頭に記した著書『夜と霧』は、彼の冷静な心理学者の眼で見た限界状況における人間の姿を記録したものといわれます。

“煙突による救い以外に出口はない”といわれた強制収容所。不潔と堕落の中に追いやられ、痛めつけられ、打ちのめされ、拷問にかけられ、飢えにさらされ、そして遂には労働によって撲滅されるか、ガス室の大量死刑執行によって一掃されてしまうかが強制収容所生活の行き着くところでした。

しかしフランクルは、そのような過酷極まりない状況の中から奇跡的に生還し、その体験を記したのが『夜と霧』です。その中に、体験を通して得た悟りとして、“私は人生にまだ何を期待出来るか”ではなく、“人生は私に何を期待しているか”と問うべきだ、と記しています。

新約聖書のルカ福音書の中に、主イエスが語られた“善きサマリア人”の説話があります。(102537)そこにおいて、律法の専門家が、『わたしの隣人とはだれですか』(29節)と問うたのに対し、主イエスが、『だれが追いはぎに襲われた人の隣人になったと思うか』(36節)問い返されているのは、まさに自己中心から他者中心への転換の示唆といえます!