今週のメッセージ201/0/19)

まつのぎょうれつけむし

「すべてに耳を傾けて得た結論。『神を畏れ、その戒めを守れ。』これこそ、人間のすべて。」(旧約聖書・コヘレトの言葉12:13)

 

表題「まつのぎょうれつけむし」。あまり聞き慣れない言葉かと思います。漢字を交えて記すと「松の行列毛虫」となります。毛虫の一種と想像可能になります。「おびが」の一種の幼虫で、ヨーロッパの中部から南部に分布しているそうです。幼虫は「まつ」の枝などに大きなテントを作り、共同生活をしているそうですが、羽化するのは5月から7月ごろとのことです。春になると土のなかにもぐり、さなぎになるために、行列をつくって場所探しをする習性があるそうです。尚、このことは、ファーブル昆虫記にも記載されているそうです。

ファーブルはこの毛虫をつかまえて、植木鉢の周囲をぐるぐる回らせたそうです。毛虫は前のものの後ろにくっついて一つの輪をつくり行列し始めました。鉢の下にはエサも置いてあったのですが、それには見向きもせず、ただ黙々と歩き回り、なんと八日間も休み無く鉢の周りを回り続けたそうです。そしてとうとう八日目に飢えと疲れで倒れ、輪が崩れてしまったというのです。

習性とは言え、八日間も歩き続けたとは驚きです。またファーブルも、よく忍耐強く八日間も観察し続けたものだと思わされますが、他方、ずいぶんマツノギョウレツケムシに対して酷なことをしたものだとも思わされます。

旧約聖書の『コヘレトの言葉』の1:2に、「なんという空しさ/なんという空しさ、すべては空しい」とあります。マツノギョウレツケムシの行動は、まさにこの虚しさそのものです。彼らは本能のおもむくままに行動するだけですが、わたしたち人間はそうはいきません。やることなすことに意味や目的を求めます

冒頭の聖句は、まさにその求めに応えるものです。