今週のメッセージ(2021/10/31)

「ユダヤ人の王」ヨハネ19:16b-27

 

 主イエスはついに十字架につけられるために引き渡されました。マタイ、マルコ、ルカの当該箇所には、通りすがりのキレネ人シモンという人物が兵士の命令により十字架を背負わされたと記されています。けれどもヨハネ福音書にはシモンに関する言及がありません。著者ヨハネが注目していたのは十字架を担おうとする主イエスの姿そのものでした。

 その十字架にはピラトによる罪状書きが記され、主イエスの頭上に掲げられました。ゴルゴタの場所については主に2つの説がありますが確定できません。4世紀の調査では聖墳墓教会が建てられている地域とされていますし、19世紀に英国人ゴードンによって行われた調査では別の場所をゴルゴタとしています。いずれにせよ、主はゴルゴタ(ラテン語でカルバリ)において十字架に付けられました。

 ユダヤ人たちはピラトの書いた罪状書きが気に入らず抗議しましたが、その苦情は却下され、主イエスの罪状は公式に決定されました。それは現代の法律の基礎とされているローマ法において有効な何の訴因事実もなく、そもそも罪とも言えないものです。けれども主は自ら十字架を背負い、私たちの罪の贖いのためにそのすべてを甘んじてお受けになられました。死の激痛に耐えながら衣服を分け合うためにくじを引く兵士を見つめ、さらには母マリアのために気を配られた主のはかりしれない愛が十字架によって浮き彫りにされているのです。