メッセージ(10/11)

仲直りの大原則

              

 先週木曜日、来日している韓国の金大中大統領の国会演説をラジオで聞いた。深い感銘を受けた。勿論政治家としてすぐれた方だと思うが、それ以前に人間として立派な方だと感じた。

 金大中と言えば、例の73年に東京のホテルで起きた拉致事件で知られる人だ。救出された後、その手記が新聞に掲載された。それを読んだ時も感動した。政治家以前にクリスチャンとしての信仰に立った強い精神の持ち主との印象を受けた。その手記は切り抜いて今でもどこかに保存してある。

 今回の演説の中で特に感銘深かったのは、わが国と韓国の関係における過去と未来について語った部分だ。彼は次のように語った。

「日本には、過去を直視し歴史を恐れる、真の勇気が必要であり、韓国は、日本の変化した姿を正しく評価しながら、未来の可能性に対する希望を見出す必要があります。」

 これまでの日韓の間に横たわってきたわだかまりを考える時、実に重みと深みのある格調高い言葉と感じた。

 国家間とは限らず、具合が悪くなっている関係が改善されるための大原則がそこにある。一つは、過去を正しく認識し、反省すべきところは謙虚に反省する勇気を持つこと。もう一つは、そうした反省に基づき相手が変わってきたならば、それを正しく評価して、未来に向けてより良い関係を築くべく努めていくこと。どちらか一方でも欠けるならば、関係の回復や修復はうまくいかない。まさに『仲直りの大原則』と言うべきものだ。