第11話 運動会その八・暗い三連星

まず砦九龍(サイクロン)、その後ろに帝斧吽(タイフーン)が、私の乗る星鈴に向かって突撃してきました。

これはチャンスです。この位置なら、私の後ろにいる佐藤さんは、死角になって彼らから見えません。

佐藤さんはマグナム弾を装填した愛用のピストルを取り出しました。

佐藤さんにとっても砦九龍は死角で見えないのですが、目隠しをしていても

15メートル先のマッチ箱に命中させる銃の名手佐藤さんの手にかかれば

正面から一直線に突撃してくる目標に当てることくらいた易いことです。

しかしその時、帝斧吽の背後からもう一頭の騎馬が飛び出してきました。張蹴燕(ハリケーン)です。

張蹴燕の先頭輝尾君は、他の4人をおぶって、なんと3メートル近くジャンプし、

前にいる帝斧吽と砦九龍を飛び越え頭上から襲いかかってきたのです。

しかし、星鈴の先頭の来田君が、私たち4人を背負いすばやく横に飛び退きました。

あとコンマ1秒遅れていたら危なかったでしょう。

私たちが立っていた場所には、直径2メートル、深さ50センチにも及ぶ穴が開いていました。

恐るべき技です。張蹴燕の輝尾君、帝斧吽の会賀君、砦九龍の湯島君のネクラ3人組、

通称「暗い3連星」のコンビネーションが生み出すジェットストリームアタック。

この技については、諜報活動担当の岸和田さんから聞いていましたが、まさかここまでの威力とは

思ってもいませんでした。再び彼らは襲いかかってきました。しかも、さっきを上回るスピードです。

さっきと同様、砦九龍を先頭として後ろに帝斧吽、その後ろに張蹴燕が・・・いません!

気がついたときには、既に星鈴の上空2メートルにまで迫っていました。一体いつ飛んだのか、

全く分かりせんでした。殺られる、と思ったとき、また来田君が私たち4人を背負いました。

そして、今度は避けるのではなく、逆に張蹴燕に向かってジャンプしたのです。空中で両者は

激しく激突しました。高度で勝る張蹴燕ですが、5人の体重の合計は196キロ、一方星鈴は232キロです。

星鈴も少しダメージを受けたものの、張蹴燕の方は7メートルも吹き飛ばされ、地面に激突しました。

さっきのジェットストリームアタックの攻撃を上回る、直径3メートル、深さ1メートルのクレーターが

製造されました。そして下敷きになった輝尾君は、全身骨折と内臓破裂で貴い生命を失いました。

輝尾君のかわりに、先頭には後ろにいた内川君が入りましたが、

これでもうジェットストリームアタックは使えません。

そして、4人となった張蹴燕の前に、淵谷君率いる緋虎が立ちはだかったのです。


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