・・・時は少し遡る

「・・・弐号機パイロット・・・行くわよ・・・」

レイが歩き出す

「・・・ったくも〜・・・何だって言うのよ!?」

私は慌ててレイを追いかけた

レイは私をどこに連れて行くのか・・・その不安を抱きつつ・・・


心の隙間                                                        

第五話 復活する記憶3


私とレイは来た道を戻り始めた。私とレイの間に会話はない

・・・あなたとは一対一で話したかったの・・・

この言葉が私の頭に染みついている

私はレイの後ろ姿を見ながら考えていた

とりあえず・・・レイが私の記憶を思い出させようとしてくれているのは分かる。しかし何故一対一なのか?

一対一で話したがると言うことは・・・聞かれたくない話なのか・・・

・・・考えても仕方がない。分からないものは分からない。レイは私の記憶を思い出す手助けをしてくれる・・・そう思っておこう

・・・思考を現実に戻してみると・・・いつの間にかネルフの出口だった

「ちょっと・・・出口よ?ここ?」

「・・・・・・」

私の疑問には答えずにレイは再び歩きだす。しょうがないから私も歩き出す

(ダメね・・・今のレイとは会話は成り立ちそうにないわ・・・)

溜息をついた。こういう雰囲気はあまり好きではない

レイは怒っている・・・と思う

ただでさえ感情を出さない少女だ。確信は持てない

では・・・怒っているとしたら何故怒る?

レイが怒り出したのは記憶を思い出してからだと思う

・・・真の記憶では私はレイに嫌なことをしていたのだろうか?

それとも碇シンジが何かしたのだろうか?

・・・碇シンジ・・・

EVAの中で私の頭の中に流れ込んできたイメージは碇シンジの記憶だと加持さんは言っていた

だとしたら・・・私を迎えに来たのは碇シンジ?

私とユニゾンしていたのは碇シンジ?

マグマの中で私を助けてくれたのは碇シンジ?

・・・・・・そういえば一つだけ私の記憶には無い出来事があったわね・・・

えと・・・確か白いEVAと弐号機が戦っているのよね・・・

弐号機にいるのは・・・多分私。加持さん、何も言わなかったもの

全ての白いEVAを倒して・・・けどその白いEVAがまた立ち上がってきて・・・弐号機は刺された・・・

要約するとこんなんだったわね・・・

けどさ・・・白いEVAと戦った記憶も真の記憶だとしたら・・・何故私はここに生きているの?

はっきり言って・・・あれじゃ絶対に死んでるわ

じゃあ、今ここにいる私は誰?記憶喪失とか、記憶操作じゃ説明がつかない・・・

一体どういう事かしら?

「弐号機パイロット・・・」

レイの呼ぶ声がして私は意識を現実に戻した

「・・・ここよ・・・」

周りを見渡す

・・・ここはコンフォ−ト17マンション!?

「ちょっとレイ!私は家に戻りに来たわけじゃないのよ!!」

アスカはレイにつかみかかる。レイは表情も変えない

「・・・この部屋に入って・・・」

「はあ?」

レイの発言はさらに私の頭を混乱させた

私の部屋はもっと向こう。碇家はもっと手前

けど・・・この部屋は誰も使っていないはず・・・

一応、部屋番号を見て、名札が入っているか見る

・・・・11−2−A・・・住んでいる人無し・・・

「なんでこの部屋なのよ!!」

からかわれた!?そう言う考えが私の頭の中に浮かんだ

「・・・入るわよ」

レイは無造作にドアを開け、中に入っていった

レイが中に入ったんだからアスカも入らないわけにはいかない

アスカは中に入った

中にはいると・・・そこは変哲のないただの部屋

私の家と一緒の普通の部屋

碇家と一緒の普通の部屋

だけど・・・・何故か懐かしい感じがするのは何故?

「・・・・・・ただいま・・・・・・」

無意識にこんな言葉を発してしまった。慌てて口を押さえる

レイはそんな私を冷ややかな視線で見ていた・・・まるで人形みたいに

「な、なによ!!」

その視線に耐えきれず、つい声を出してしまう

「・・・残留思念・・・みたいな物かしらね・・・」

「はあ?」

思わず間抜けな声が出てしまった。ザンリュウシネン?何?それ?

アスカはまだそんな難しい言葉は知らなかった

「・・・残留とは残りとどまること・・・思念というのは・・・そうね、思い、とでも言うべきかしら・・・?」

私がザンリュウシネンの意味が分かってないと思ってレイは丁寧に説明してくれた

「・・・いきなり何の話よ?」

「・・・気にしないで・・・さあ、入って・・・」

体よくごまかされたような気がするが、レイが奥に入ってしまったので私も奥に入る

「ところで・・・お腹空いてない?」

「はあ?いきなり何よ?」

「いいから。空いてる?空いてない?」

シンクロテストがあったのは午後1時。今は色々ごたごたがあって午後3時だ

それに加えて昼食も軽めにしたから空いていないと言うことはない

「まあ・・・ちょっと空いてるけど・・・」

「何か軽いモノでも作るわ」

「はあ?」

私が間の抜けた返事を返している間にレイはエプロンを付けて冷蔵庫の中から数種類の野菜をとりだした

・・・おかしい・・・

「どうして誰も住んでないのに野菜が冷蔵庫の中に入ってるのよ?」

「さあ・・・ここに住んでた住人が置いてったんじゃない?」

「・・・なに言ってんの?」

私の知る限り、ここに住んでた人は知らない。私が日本に来たのは半年前だから・・・って!!

「その野菜、大丈夫なの!!!」

「大丈夫よ・・・匂いもおかしくないし」

そう言ってレイはネギを一つまみ自分の口に放り込んだ

「本当に?」

そう言って私もレイの側に行って野菜を見てみる

・・・・確かに、腐ってるとかそう言う風なのはなさそうだ・・・

「さあ・・・作るわ・・・」

レイはスパゲッティを茹で始めた

「あなたは椅子に座っていて」

何も応えずに指し示された椅子に座った

台所からお湯が沸騰する音、野菜を切る音などが聞こえてくる

・・・そういえば、レイが作ってくれるなんて珍しいわね・・・

私の知る限りレイが自分で料理したのは数えるほどだ。普段は兄のカヲルが作っているはずだ

女なのに男に作らせてるなんて・・・まるで昔の私みたい・・・

私はそう思って微笑んだ・・・・が、次の瞬間にはその表情が険しいモノに変わる

・・・昔っていつの事よ!私には兄も弟もいない!料理は時々するけど、大体はママが作ってくれる

私は男と同居なんてしたことがない。なのに・・・

この椅子に座っている自分

台所から聞こえてくる音

この光景に覚えがあるのはどうして!!?

・・・いや・・・思い出したくない・・・

アスカは耳を押さえ、目をつぶり椅子の上にうずくまるように座った

 

「・・・弐号機パイロット・・・」

返事がない。もう一度呼んでみる

「弐号機パイロット?」

返事がない。台所から出てテーブルに行く

そこには椅子の上にうずくまっている、アスカがいた

「・・・弐号機パイロット?」

「・・・・・・ない・・」

「え?」

何かぶつぶつ言っている。耳を近づけてみる

「・・・出したくない・・・」

「・・・なんて?」

もう少し近づける。そこでやっと聞こえた

「・・・思い出したくない・・・」

「!!!」

衝撃が走る。思い出したくないの?

どうしよう・・・思い出すのが一番良いことだと思ったけど・・・

とにかくこの状態でほっとくわけにはいかない

そう思った私はアスカをゆらし、呼びかけた

「弐号機パイロット!弐号機パイロット!」

「・・・思い出したくない・・・」

「弐号機パイロット!弐号機・・・・アスカ!!」

弐号機パイロットと呼んだのは彼女の記憶を思い出しやすくするため。でもそれがここに来て悪い影響を与えたのかもしれない

だから私はアスカと呼んだ。案の定、反応があった

「・・・レイ?」

まだ目が虚ろだ

「気がついた?」

「・・・私、どうしたの?」

「・・・ちょっとぼ〜っとしてたようね・・・スパゲッティ、出来たわよ」

「・・・ありがとう・・・」

「食べましょ」

アスカの向かい側にレイが座る。スパゲッティは肉抜きのナポリタンだ

「・・・いただきます」

「・・・・・・いただきます」

 

黙々とナポリタンを食べている。味は・・・まあまあ

食べてる内に落ち着いてきた・・・そうすると冷静にレイの様子を観察できた

レイは已然、さっきと変わりなし・・・そこで一つ思ったのだが・・・

レイが怒っていると思ったのは私の勘違いで、コレがこの子の普段の姿?

・・・はあ・・・記憶を思い出す前と後と余り違いがないように感じたのに・・・

あ・・・それより・・・

「ねえ・・・さっきアスカって呼んだわよね?」

一瞬の沈黙の後、レイは応えた

「ええ・・・『弐号機パイロット』って呼んでも反応無かったから・・・」

「あのさあ・・・その弐号機パイロットってやめてくれない?私はEVAだけに生きる訳じゃないんだから・・・」

奇妙な感覚

「・・・本当にそう?」

まっすぐとこっちを見ているレイの視線。紅い視線

その眼に押されながらも私は応えた

「え、ええ。もちろんよ。私は惣流・アスカ・ラングレー!弐号機パイロットって名前じゃないわ!」

「・・・分かった・・・アスカ・・・」

「よし」

再び食事を開始する。私はナポリタンを食べながらさっきの奇妙な感覚を考えていた

なんだろ・・・さっきの感覚・・・矛盾?・・・私が自分の生き方に矛盾を感じているの?

・・・そんなことはない!私は良きにしろ、悪きにしろ・・・後悔するような人生は・・・歩んでない!

 

私はEVAだけに生きる訳じゃない

確かに、今はそう。けど、昔はそう言う考えをあなたがしていなかったのも事実

・・・アスカが弐号機パイロットと呼ばれるのを嫌うなら、私はアスカと呼ぶしかない・・・

私がここに来た理由はあのころの生活に少しでも似せるためだ。だから私はアスカの事を弐号機パイロットと呼んだ

しかし・・・今この方法を拒絶されたからには・・・仕方ないわね

私は食事の手を休めて、立ち上がった

「ん?どうしたの?」

「・・・買い物・・・ちょっと買いたい物があるの・・・」

「まだご飯残ってるわよ?それを食べてからでも良いんじゃない?」

「・・・・・急ぐの」

返答を待たずに玄関から飛び出していった

残されたアスカは呆然とするばかり

「・・・なんなのよ・・・」

仕方なく残されたアスカは食事を続けた

 

「・・・ただいま・・・」

しばらくして玄関の扉が開く音がして、レイが帰ってきた

私はテレビに目を向けていた。しかしレイの声を聞いて玄関まで行く

「遅かったじゃない。一体どこ・・・に・・・・」

私の言葉は最後まで告げられなかった。何故かというと・・・

レイの髪は黒く、眼も黒く、そして格好もTシャツにジーパンとさっきの格好とは違ったからだ

「・・・あ・・・あ・・・」

私は呆然として何も言えなかった

 

私は町に行って髪を染め、黒のカラーコンタクトをつけた。格好も男の子の格好を意識したつもりだった

何故そういうことをしたか?それは碇君をアスカに思い出させるためだ

私と碇君の顔立ちは似ている。だったら髪を染めてカラーコンタクトをすれば碇君の格好になるんじゃないか?と思った

その思惑は・・・成功半分、失敗半分と言うところだろう

顔は上手くいった。結構碇君に似ていると思う

でも・・・この胸の膨らみと女性特有の丸いからだ、そして雰囲気までは真似できない

・・・こればっかりはどうしようもないのだ

しかし、呆然としているアスカをほっとくわけにもいかない

「・・・アスカ・・・」

ちょっと遠慮気味に名を呼ぶ

「・・・な、なんで・・・?」

「・・・ちょっとしたイメージチェンジよ・・・」

イメージチェンジ。略してイメチェン。言葉としては知っていた。でも自分でこの言葉を使うとは思わなかった

「・・・何か思い出さない?」

アスカは平静を取り戻したようだ

「・・・別に・・・でも、同じような顔を見たことある気がするわ。町ででも見かけたかしら?」

やった・・・少し前進したようだ・・・

しかし記憶を思い出すまでは行かなかったみたい・・・けどこれも予測済み。私は次の作戦に移る

「・・・ねえ、アスカ。ユニゾンの時行った公園に行かない?」

私は出来る限り碇君の声をイメージし、その声に似せるようにアスカに言った

いきなり声の変わったレイにアスカはちょっと驚くが、一瞬で心を落ち着かせるとレイに返事を返した

「ユニゾンの時行った公園って・・・どこよ?それ?」

「なら思い出させてあげる・・・よ。ついて来て」

「???」

無理にシンジの言葉遣いをしようとして間違える。そんなレイをアスカは不思議そうな顔をして見ていた

 

私は公園にアスカを連れてきた

何故私がこの場所を知っているのか?それは私が碇君の記憶を持っているからだ

ちょうど二人目から記憶を継承したときに似ている

あの時・・・EVAから色んなことが流れ込んできたとき・・・私の記憶にないことも流れ込んできた。もちろん、真の記憶にも無いことだ

それは・・・たくさんの綾波レイを葛城三佐、赤木博士・・・そして碇君が見ている記憶

私は葛城三佐とも碇君ともあそこに行った覚えは無い

だとしたらあれは誰の記憶だろうか?

葛城三佐、赤木博士、そして碇君・・・この三人以外にはあり得ない

でも・・・私には分かっていた。この記憶は碇君のものだと

案の定、私の記憶には碇君の記憶が流れ込んできた

それは、料理のレシピだったり・・・チェロの演奏の仕方だったり・・・アスカとキスした記憶だったり・・・私を押し倒した記憶だったり・・・

残念なのは碇君がその時、何を感じ、考えていたかは分からない。例えば・・・私のことをどう思っているか・・・とかは分からない

ともかく私はその記憶を頼りにこの公園に来たのだ

私は碇君の声で話しかけた

「・・・覚えてる?ユニゾンの時アスカ、飛び出しちゃってさあ・・・ここで色々話したよね・・・」

自分でも信じられないくらい次々と言葉が出てくる。まるで碇君が取り憑いたかのようだ

「・・・レイ・・・さっきから何を言ってるの?」

一見すると何も感じていないように見える。けど私には分かる。それは動揺を隠しているだけ・・・

私はそのまま言葉を続けることにした

 

この顔・・・この声・・・この言葉使い・・・

内側から何かがこみ上げてくるのが分かる。でも・・・私は必死でそれを押しとどめる

そんな私の心情を知ってか知らずか・・・レイはそのまま言葉を続けた

「・・・この椅子に立ってさあ・・・」

レイはそう言ってベンチの上に立った

「サンドイッチを食べながらこう言ったよね・・・「傷つけられたプライドは十倍にして返すのよ!」って・・・」

その言葉はEVAのなかで流れ込んできた記憶と一緒だった。もちろん私にはそう言う記憶はない

「・・・その後のマグマの中の使徒は危なかったよね・・・何とかアスカが熱膨張を利用して倒したけど・・・ケーブル切られちゃったじゃないか」

「・・・ええ・・・まあ・・・」

それは記憶にあったのですんなりと受け入れられた。だが次の言葉は記憶にない言葉だった

「あの時僕が助けなきゃ死んでいたね・・・恩をきせるわけじゃないんだ・・・ただ、僕もちょっとは男らしくなったかな?と思って・・・」

「・・・あの時は・・・カヲルが助けてくれた・・・はずよ」

私の言葉を無視してレイは言葉を続ける

「・・・母さんの命日の時・・・」

そこで一旦レイは言葉を切った

「・・・キスをしたよね・・・」

「・・・・・」

私が?誰と?

「そ・・・」

そんなこと無いと言おうとして頭の中に浮かぶ一つのイメージ

SDATを聴いている一人の少年。今のレイと顔が似ている・・・けど胸の膨らみがないことからレイではないことが分かる

私は・・・寝転がって雑誌を読んでいる

不意にその男子に目を向けたかと思うと何かを話し始めた。一言二言受け答えをして立ち上がる

 

そしてその二人はキスをした

 

そこで思考は現実に戻る

「・・・・なんなのよ・・・」

汗が大量に出ている

何を恐れているの?私は?

記憶を思い出すこと?

レイが今まで通りの眼で私を見ていた。そして再びしゃべり出す

「・・・キスした後、アスカがうがいしちゃうから結構ショックだったんだ・・・」

ズキ

頭が痛い・・・

それだけじゃない。体が震える・・・

いや・・・

「・・・やめて・・・」

アスカが拒絶の声を出す

「第十二使徒の時、アスカにはやし立てられてついムキになって、独断専行しちゃったんだよね・・・あの時はみんなに迷惑かけたなあ・・・」

「・・・やめて・・・」

ついに耐えきれなくなったかのようにアスカは耳をふさいだ。しかしレイの声は耳をふさいでも聞こえてくる

「トウジが参号機のパイロットになったのは驚いたよね・・・それで使徒に汚染されて・・・結局トウジを助けられなくてさあ・・・情けなかったなあ・・・」

「・・・やめて・・・」

「・・・そして第十五使徒・・・アスカ、精神汚染」

「やめて!!!!!!」

アスカは大声を出した

「・・・お願いだから・・・やめてよお・・・」

涙声。アスカは泣き始めてしまった

レイはその様子を見て心が痛んだ

 

本当は・・・思い出さない方がいいのかもしれない・・・

このままでいいのかもしれない・・・

なにより、それが碇君の望みのはず・・・

レイは首を振ってその考えを振り払った

 

あの戦いで一番苦しんでいたのは碇君。その碇君がどこに行ったのか分からないけど、このまま消えるのは我慢ならない

鈴原君や相田君、アスカに洞木さんと騒いでいたとき、碇君は笑っていた

あの笑みは嘘じゃない。本当に・・・心底楽しそうだった

ということは碇君がここにいないのは碇君が本当に望んだ願いじゃないはず・・・

だったら私は全力で碇君を現世に戻す

それが碇君をいなくならせた原因の一端を担った私の使命

アスカの記憶を思い出させるのが碇君を助けるのに関係があるのかは分からない

けど碇君が戻ったとき、アスカが碇君のことを憶えてないと知ったとき・・・碇君は悲しむだろう

碇君が悲しむ姿は見たくない

だから私はアスカに碇君のことを思い出させる

それはレイの小さな決意だった

 

レイはそのまま言葉を続けた

「・・・アスカ、精神汚染されちゃったよね・・・」

「やめてやめてやめて」

「・・・それで綾波が助けて・・・」

「やめてやめてやめて」

「あの時助けられなくて・・・ごめんね」

「やめてええええええええ!!!」

アスカはなおも耳をふさいでうずくまっている

・・・拒絶するってことは・・・思い出しかけてるって事・・・

でももしかしたらこのまま壊れてしまうかもしれない・・・

私は次の行動を起こせずにいた・・・

 

「やめてええええええええ!!!」

私はなおいっそう手を耳に押しつけ目をつぶり座り込んだ。外界からの全ての情報をシャットダウンするかのように

どれぐらいそうしていただろう・・・まだ気持ちは落ち着かない・・・

眼をつぶっていると当然辺りは真っ暗

それなのに何かが見える・・・いえ、コレも頭の中に流れ込んでいるのかもしれない・・・

それはさっきレイが言ったことが画になったようなもの・・・まるでビデオを見ているかのようだった

ベンチの上に立っている私。その側で座っている一人の少年

「傷つけられたプライドは十倍にして返すのよ!」

次はマグマの中・・・

「バカ・・・無理しちゃって・・・」

そう言う私は涙ぐんでいて、嬉しそうな声だった

そして・・・キス・・・

確かに・・・レイの言うとおり私はこの男の子とキスした後、うがいをしている・・・

酷い女

自分のことにも関わらず、私はそう言ってしまった

自分のこと?

私がこんな事をしたの?

そんなことを考えている間も次の映像は流れる

黒いEVA・・・参号機?

確かこの時は・・・あれ?どうしたんだっけ・・・?

私は使徒に汚染された参号機と戦ったことがある。それは確か

けど・・・どうやって倒したんだっけ・・・?

あ!弐号機がやられてる・・・っていうより、不意をつかれたの?

・・・けど・・・なんで私は攻撃しなかったんだろう・・・

また場面が変わる

今度は・・・雨?

弐号機と零号機・・・あ!ポジトロンライフルを打った・・・

・・・敵は・・・空?・・・宇宙?・・・ああ、第十五使徒か・・・

けど・・・やっぱり思い出せない・・・どうやって殲滅したのか・・・

「いやああああああ!!!!!!」

私の叫び声。見ると弐号機が七色の光線を浴びていた

使徒の精神攻撃

「入ってこないで!私の中に入ってこないでええええええええ!!!!!!」

わ、わたしの・・・絶叫・・・

いや・・・次の映像は・・・多分・・・あれだ・・・

お願い・・・見せないで・・・

この時私は記憶が戻っていたんだろう。もちろん、自分でも気づいてはいなかったが・・・

けど・・・次の映像は記憶が戻っているから私に多大な影響を与える。もし戻っていなかったら、私は何ともなかっただろう

 

次の映像は

 

弐号機がEVA量産機に刺され

 

プラグ内では私が片目を押さえ

 

何度も何度も呟いていた

 

憎悪・・・否、殺意という感情をその言葉に乗せて

 

そしてその言葉は

 

一機の量産機が槍を構えて

 

弐号機のコアに刺すまで続いた

 

その光景に耐えられず・・・

 

「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

私は絶叫して

 

壊れた

 


後書き

誰にでも思い出したくない記憶って言うのはある物で・・・それを見たアスカは発狂して壊れちゃいました

しかし・・・強引な思い出させかただなあ(汗)

・・・・・・レイとシンジって・・・似てるのかなあ?←自分で書いてて疑問に思う奴(爆)

それに・・・加持さんも出てこないし・・・

ついに加持さん主役の座から転落か?(笑)


琥珀のコメント

・・・・・・・・・・・・壊れちゃいましたねぇ

いつも思うことなんですが、アスカってひどく脆い子ですよね。

トラウマが人の倍ありそう(爆)

レイとシンジは・・・どうだろう?微妙に似ているような似ていないような(答えになってないし)

物語もそろそろ佳境・・・って感じですね。

アスカはどうなってしまうのでしょう?そして加持さん一体どこに??

・・・・・・・・・カヲル君(ぼそ)


モドル   ツヅク