あの時をもう一度
最終話 「消えて逝く」
「やっと…ここまで来た……長かった…本当に長かったよ…だけど…短かったようにも感じる……まるで今までのことが夢だったような気がするよ……夢…か…夢は現実の続き…現実は夢の続きだったかな?……それでは僕は…どっちにいるんだろう…夢?それとも現実?…まあ、どっちでも良いや…これが夢ならそれでも良い…僕が見てきたもの全てが夢ならば…それはそれで良い。…だけど…これが現実ならば今、この時で全て終わらせる…例え…それが自己満足だとしても、…例えそれを誰かに止められようとも……僕が…僕が……碇シンジと言う名を持つこの僕が…終わらせてみせる…哀しみを…全ての使徒の哀しみを…終わらせてみせる」
痛みを耐えているのかその声は掠れ、力を全く感じさせなかった。
それは一体誰に聞かせようと思って出した声なのだろうか。
シンジ以外に解るはずも無い。
特にシンジの眼の前にいる魂の無いエヴァ…初号機には…
「初号機…待っていてね……複製だとしても……その苦しみから…哀しみを…消してあげるから……もう少しだけ待っていてね…初号機…」
そう言ってシンジは魂の無いエヴァ…初号機から離れ、他のエヴァのあるケージに向かって歩いていった。
「ふぅ…ちょっと体が重いかな…やっぱり人の形をとどめていられるのももう少しの間だけか……もってくれよ…僕の体…フィフスチルドレン…惣流・アスカ・ラングレーが来るまでは……」
そう呟きながら………
数日前
「予想はしてたよ…フィフスがアスカだと云う事は…」
司令室ではシンジ、カヲル、ゲンドウ、冬月、ユイ、リツコが委員会から直接送られてくるチルドレン…フィフスチルドレンについて話していた。
今、ここにいるカヲルはシンジの元いた世界にあらわれた時の姿そのまま…つまり体を持っている。
セカンドチルドレン渚カオルの遺伝子がシンジ、カヲルが記憶しているカヲルの体を構成する遺伝子とほぼ一致しているためカオルの細胞を元にカヲルの体をクローニング技術により作り出した。そしてカヲルの魂をそれに入れてある。若干以前の体と違いはあるようだが、カヲルは特に気にしていない様子。
「どういう事だい?シンジ君」
その体を持ったカヲルがシンジに問いただす。
「若干の違いはあるにせよ、ここは僕のいた世界と同じ……まず始めに、フィフスはゼーレが直接送り込んでくる。これは貴方達がチルドレンをかくまってる?…中学校にいるはずない、ということ。そしてその学校にはトウジがいる…カオルちゃんは…まあ、カヲル君として…残りのチルドレンはアスカだけ…」
「シンジ君…それって結構強引な考え方だよ」
「気にしちゃだめ」
「シンジ君、今MAGI改が全力で身元、その他を洗ってるけどどうする?」
MAGI改と云うのはシンジ、カヲル、リツコの三人が共同で開発したMAGIの後継機だ、彼らの持てる全ての知識と技術を持って作られた世界最高のコンピュータ。MAGIと同様にカスパー、メルキオール、バルタザールが存在するがそれらには赤木ナオコの人格を入れてはいない、シンジ、カヲル、リツコの三人の人格が代わりに入れてある。理由と言えばシンジ、カヲルの方が分析力が上だからだ。
この時シンジはリツコがなぜ笑顔でそんなことを聞いてくるのか解らなかった。なぜならそんなもの聞く必要も無い事だから。
なぜなのだろうと考えていたシンジにまさに天恵とでもいうべき考えが浮かんできた。
―――そうかそう云う事なんだね…その笑顔の意味するところは…リツコさん………
「必要、ないよ…リッちゃん…」
そう…リツコはシンジにただ『リッちゃん』と呼んで欲しかっただけなのだ。
『リッちゃん』と言われにへら〜と笑うリツコを完全に無視しながらシンジは話を進めた。
「フィフス…アスカの事は僕達に任せてください、そちらは計画通りに事を進めていてください……」
苦々しい顔をしながらシンジはゲンドウ、ユイ、冬月に言った。
「シンジ……大丈夫なの?」
息子を心配する母の心、嬉しいと思うと同時にシンジはあの世界で母…ユイがいればもっとましな結果になったなと感じている。ユイが何を願って初号機に取りこまれたのか実際のところシンジはよくわかっていない。しかし、いまさらユイに聞きたいと思っていない。ユイにはユイの考えがあったのだろう、そうシンジは最終的に答えを出した。
「大丈夫だよ、母さん」
「そう…大丈夫なのね?」
「だから大丈夫だって…心配性だね母さんは…僕は大丈夫だよ」
久しぶりに極上の笑顔を見せながらシンジはユイに言った。
シンジの極上の笑顔を間近でみたユイは…息子相手に…シンジ相手に赤面してしまった。
その瞬間、ユイを中心にして異常なプレッシャーが発生した。
「ユイさん……」 by リツコ
「お義母さん…」 by カヲル
「ユイ…」 by ゲンドウ
「ユイ君…」 by 冬月
約一名『お義母さん』などとわけのわからないことを言っているが、彼らはみな『息子相手に赤面したユイ』に対して何かが言いたいわけじゃなく『シンジの久しぶりの(極上の)笑顔を一人で受けたユイ』に 対して皆…何かが言いたいようだ…
「みなさん…どうかなされたの…………うっうっ…べ、別に良いじゃない、シンジは私の息子なんだから…」
ユイが弁解し終わった刹那
みなのジト目がユイに向けられた……
「卑怯ねユイさん…親だからって…」 by リツコ
「負けないよ、お義母さん。…いつか僕がシンジ君の笑顔を独り占めしてみせるよ…」 by カヲル
「ユイ…たとえお前でも…シンジの笑顔を独占することは許さん」 by ゲンドウ
「碇の言う通りだ、ユイ君、たとえ君でもそれは許される事じゃない」 by 冬月
『シンジ君の笑顔を皆で均等に分かち合おう委員会(Named by アイ &シンジ非公認)』のメンバー達がユイに詰め寄る。一応ユイもそのメンバーなのでシンジの笑顔を独占する事は委員会の規約に違反していることになる。当然違反した者には罰則が存在する。すなわち…『会員の特権、シンジの笑顔を盗撮した写真がもらえなくなる。』である。
「…うっうっ…私はいらない人間なのね……初号機の中から戻ってこなきゃ良かった……」
ユイは皆のもの言いに耐えきれず地べたに座りいじけてるように見えた。実際のところ単にシンジの盗撮写真がもらえなくなることが原因なのだが…
そのユイの姿はシンジの世界でネルフに戦自が突入してきたときのシンジの姿そのものだった。やはり親子、と云うべきか…
「か、母さん…いい年していじけないでよ…あとね、初号機の中から戻ってこなきゃよかったなんて哀しい事言わないでよ…ほら笑ってよ母さん…母さんにはいつも笑顔でいてもらいたいんだ…」
いじけているユイに近づき、シンジは再び笑顔をユイに向ける。
優しい、本当に優しい笑顔。この世界でもっとも強く、優しい心を持った少年の笑顔。
その少年の笑顔を前になぜかユイの瞳は閉じられ心なしか顔…顎が上に向いている…どうみてもユイがシンジにキスをねだっているようにしか見えない。
そして当然のごとく次に続くのは…
バシィィィィィィン
ハリセンで殴られるユイ。
現在
「これで終わりだ…恐らくアスカが同化しようとするのは弐号機…赤い弐号機はやはり彼女に似合ってるからね…」
カヲル用にアメリカから運ばれてきた参号機を前にしてシンジはある作業を終わらせた。
今回も一応参号機に使徒…バルディエルがくっついていたのだが起動実験を始める前にシンジの手によって殲滅されていた。
「さて………行くかな…あそこへ……カヲル君と始めてあった場所へ………」
今回も第16使徒アルミサエルを殲滅するために零号機を遠隔操作で自爆させて殲滅した。そのためここには以前の世界と同じようにここに海(湖?)がある。
その海の水の打ち寄せる音にまじって鼻歌が聞こえた。
ベートーベン作交響曲第九番『合唱』いわゆる『第九』だ。
それが耳に入ってきた瞬間、シンジは笑いたいのを堪えながら歌っている主の方を見た。
「歌は良いわね」
「はっはっはっはっはっはっはははははは」
アスカから『歌は良いわね』なんて言葉が聞けるとはシンジは思ってもみなかった。
笑いがとまらない…これほど笑ったのは幾日ぶりだろうか、そんなことを思いながらシンジは笑いつづけた。
「あ、あんた…な、なんなのよ?…バカ?…」
「ひっひっひっひっひっひ」
非常に奇妙な笑い声を辺りに撒き散らすシンジ、この姿を見れば倒れる人間もたくさんいる事だろう…
「ああ、もう折角考えてきた私の台詞が台無しじゃない。このバカシンジ」
「バカシンジ?」
ようやく笑いが収まったころにいきなり懐かしい『バカシンジ』なんて言葉を聞いてシンジは少し呆けてた。
「そうよ、あんたなんかにはそれで十分よ」
「君は僕の名前を知っているんだね」
「あんたバカ〜、知らないはずないじゃない、仮にもあんたはエヴァのパイロットなのよ」
「へぇ〜、僕がエヴァのパイロットだってしってるんだ…あの、君は?」
「きぃ〜〜〜ふざけんじゃないわよあんた!この私を知らないなんて!」
「知るわけないじゃない、君が何処の誰だかなんて僕がしるわけないよ、だいたい、いきなり第九を鼻歌で歌いながら現れる女の子なんて始めてみたよ……違った…二人目だ…」
一人目は渚カオル嬢だ。オーバーザレインボーの上でシンジが始めてあったとき鼻歌ではなくアカペラで歌っていた。
『やっぱ第九は良いわ〜、ねえ君もそう思わない?』とシンジが聞かれたとか聞かれてないとか…
「なんで知らないのよ。このフィフスチルドレン。惣流・アスカ・ラングレーを」
「へぇチルドレンなんだ」
「へ?」
「いや〜、いきなり歌は良いね、って聞かれてから自己紹介すらしてもらってないから…君がフィフスだったんだ」
「そ、そうよ」
「そっか、よろしくね…ア…惣流さん」
アスカと言いかけてここで怪しまれるのもどうかと思い即座に言いなおした。
「アスカ、で良いわよ。バカシンジ」
―――間違いない…彼女は……アスカは…使徒だ…
暢気な感じでアスカと話していたシンジだが心の中ではそう確信していた
「あ、カオルちゃん」
「やあ、シンジちゃん。一つ聞きたい事があるんだよ、いいかな?」
非常にカヲルのようなしゃべり方をしているが、彼女は渚カオル嬢だ。
遺伝子的に見てもほぼ一致しているのだから声も似ているはずなのだが、その辺は男と女の違いということで声は違う、カオルの方が幾分音が高い。
通常『シンジ』に『ちゃん』を付ける時は『シンちゃん』なのだが、ここはカオル嬢、周りと同じ事はしたいくないと『シンジちゃん』と呼んでいる。始めの頃はシンジもかなり嫌がっていたが今ではもうなれたらしい。
「どうしたの?」
「ペン2(ペンツー)が何処にいるかしらない?」
ペン2―カオルがペンペンの事を呼ぶときの呼び方。ペンペンの呼び方すら他人と同じ事をしたくないカオルが命名したのだ。…大昔のパソコンのCPUの呼び方と同じような気がするが、それはもちろん気のせいだ。
「またネルフに来てるの?」
「そうらしいんだけど…」
シンジがミサトの家に住んでいないということは当然ミサトの家が荒れている事と同意。そんな中でペンペンがまともな食事が出来るわけもなく、こうやってちょくちょく一人(?)でネルフに食事をとりに来る。
カオルはペンペンが気に入っているようでペンペンがネルフに来た時は一緒に食事をしている。というわけでいつものように食事をしようとペンペンを探している、というわけだ。
「じゃあ、僕も一緒に探すの手伝うよ」
「そうかい、ありがとう。シンジちゃん」
シンジの本日の予定はアスカと会う事だけだった。それがついさっき終わったためシンジは現在する事がない。家に帰って休めば良いのだが最後の使徒であるアスカが何時行動を起こすか解らないのでそうそうネルフを離れる事は出来ない。そのため非常にシンジは暇なのだ。
「さて、何処探そうか?当てはないの?」
「さあ、ボクはペン2じゃないからね〜彼が何処に行くかなんて知らないな〜」
「カヲル君にでも聞こうか?」
「似非兄貴にかい?止めとこう話がややこしくなる恐れがあるからね」
現在カヲルはカオルの兄として戸籍を取ってある。この『似非兄貴』というのは実際の兄ではないからそう呼んでいるだけであって別にカオルはカヲルのことが嫌いなわけではない。
「そっか…ま、いろいろ周ってみようか」
「そうだね。昼まではまだ少し時間があるからね〜」
「まて〜ペンペン」
非常に性格の変わっているような気がするアイの声がネルフ内に響き渡った。
―――てやんでぃ、まってられるか!こちとら江戸っ子でぃ
と、ペンペンが実際思っているかは解らないが、おそらくそう思っているだろう。
「止まれ〜〜止まらんと撃つぞ〜」
一体何を打つのかは全くもって解らないが止まらないと何かを撃つらしい。
―――待てといわれて待つ奴がいるかってんだ
「ペンペン…止まりなさい」
走っているペンペンの前に突如として人影が現れた。
「レイ〜ペンペン捕まえて〜」
どうやら人影はレイのようだ。
アイが体を持った最初の頃、レイとアイを身間違える輩が大量に出てきため、解りやすくするためアイは髪を黒に染めている。当然眉毛もだ。某マ○ドサイエンティストのように眉毛だけ染めていないといった奇妙なことはしていない。
「了解…姉さん」
口数は以前と変わらず少ないレイであったが、話しかけられたら話すようになっていたし、何かあれば自分から離すようにもなっていた。
―――姉(あね)さん、後生だ〜俺を、俺を止めないでくれ〜
「嫌…」
どうやらレイにはペンペンの言葉がわかるらしい。
―――そ、そんな…姉さん…俺を売るってのかい
「売る?解らないわ…(ニヤリ)」
あたかも『ニヤリ』と聞こえそうなほどレイの顔は『ニヤリ』とした。
「ふっふっふっふ、観念しろ〜!!ペンぺン」
―――嫌だ〜〜〜俺はまだ死ねないんだ〜〜
「はぁ〜面白かったわ。やっぱり遊ぶなら刑事物じゃないとね〜」
アイの手には『美人姉妹アイ&レイ刑事の事件簿』という題名が書いてある冊子があった。そしてその下には
配役 | 役者名 |
綾波アイ刑事 | 綾波アイ |
綾波レイ刑事 | 綾波レイ |
殺人犯 | ペンペン |
その他 | |
ペン2の声吹き替え | 綾波アイ&レイ |
カメラ | 渚カヲル |
と書いてあった……彼女達は自分で作ったシナリオを自分達で実践していたようだ。
「私も…楽しかった…」
「やっぱり〜レイもそう思うでしょ…」
「ふっ…僕はいつになったらカメラ以外の役がもらえるんだい…」
「カメラを撮る人間がネルフ内に現れるまで」
「そ、そうか…つまり僕は一生カメラを撮る役なわけだね…」
「さぁて、次はどんなシナリオ書こうかな…今度は碇君にも出てもらおっと…どんなにしようかな……そうだ、この世界に来るまでによった世界のこと書こうかな…結構面白かったし」(←作者注 暇があったら本当に書きます)
「おお、それじゃあ今度は僕も出れるんだね」
「いや〜あんたの代わりにカオルちゃん出そうかな〜と思ってるんだけど…」
「……綾波アイ…君は僕の事が嫌いなのかい?」
「碇君に手を出さないあんたなら嫌いじゃないわ」
「そうか…そういうことなんだね…僕に嫉妬してるんだね君は…」
スパァァァァァン
「姉さんを苛める奴は許さない」
そう言ったレイの手にはハリセンが握られていた。
「そ、そのハリセンは何処から……」
「企業秘密よ…」
「さて、レイ、ペンペン。お昼にしよう」
「はい」
「クェ〜」
二人+一羽の歩き出したあとには一体の人間が倒れていた。
その倒れていた人間の名を…
「ぼ、僕はカヲル…渚カヲル……」
「見つからなかったね…」
「そうね…何処に行ったのかなペン2は…」
シンジとカオルは二人でネルフ施設内のほとんどを探した。だが最終的にペンペンは見つからなかった。さすがに施設のほとんどを周っていたためお腹が空いた彼らはペンペンを探すのをあきらめ食事をするために食堂に来ていた。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…碇君!!!」
突如食堂内に響き渡る奇声。
「そ、そんな……碇君が…」
「クェ〜〜〜」
二人と一羽が食堂に到着したようだ。
「「い・か・り・く・ん」」
これを一般にステレオ効果と言う。
「……な、何?」
「「カ・オ・ル・ちゃ・ん・と・な・に・し・て・る・の?」」
「い、いや〜カオルちゃんと一緒にペンペン探してたんだけど見つからなくて…」
「「そ・れ・で」」
「お腹空いたから食事を…」
「「そう」」
「あ、ペン2だ。何処に行ってたんだい?探したんだよ」
―――映画を撮ってたんや
と、ペンペンが関西弁で思考しているのかレイ以外にわからない。
「そうか。そういうことなんだね。ペン2」
レイと同じくカオルにも理解出来ている。
―――そうや、今度は姉さんも出れるようなシナリオ書く言ってましたでアイの姉さんが
「ボクも出るんだ…楽しみだね〜」
「そうそう、そうなんだよ、カオルちゃん。今度はカオルちゃんも出れるようなシナリオ書くから」
「う〜ん。楽しみだよ。アイちゃん。みんな集まったんだ、食事にしようか」
「そうだね」
どうやらシンジへの追求は忘れてしまったようだ。
「さあ、食事だね」
「君は何を願うんだ?…リリス……」
呟く声は本当に彼女に届いてるんだろうか、シンジはそう思いながらリリスに声をかけ続ける。
「後は初号機、弐号機、アスカ、そして君だけなんだ…他の使徒は全て僕の中にいる。彼らも寂しかったんだね…たった一人で生きてきて一人で死んでいくのは寂しい事だよ…たとえ最強の力…ATフィールドを持っていたとしても…あれはただの壁…心の壁…他人と自分を拒絶するためのもの…寂しさを忘れるためのものじゃない…むしろ寂しさを増やすだけ…それを僕は消してあげた…僕の中にある世界で彼らはみんなと…僕の元いた世界にいた人達と一緒に暮らしてる…まあ、元いた世界の人って言っても偽者だけどね…みんなLCLになっちゃったんだからさ…それでも…楽しそうだよ…リリス…君も来るかい?」
シンジにはそのとき目の前にいるリリスの顔が少し動いたように見えた。
「そっか。君も寂しいんだね…もうちょっとまっててね…アスカが…タブリスが動くまでは…恐らく明日だと思うからもう少しだよ…リリス…」
弐号機の前に立つ赤い髪の少女が弐号機に向かって声を掛ける。
「さあ、行くわよ、来なさいアダムの分身…そしてリリンの僕…」
その瞬間彼女は宙に浮いた。
「弐号機起動」
突如、警報と共に弐号機が起動した。
「弐号機が?カオルちゃんは?」
葛城ミサトが弐号機の専属パイロットであるカオルの現在位置をオペレータに対して求めた。
「後ろにいるよ、葛城さん」
「どあっ!」
いきなり後ろから声を掛けられミサトは仰け反った。
「カ、カオルちゃん。頼むからいきなり声をかけるの止めてくれない?」
「問題無い…ふっ」
最近女のチルドレンの中でゲンドウの『問題無い』がはやっている。もちろん『ふっ』は鼻で笑っている音だ。
「問題あるって〜の…マヤちゃん。どういうことなの」
マヤと呼びかけられたオペレータはその問いにすぐに答えた。
「エントリープラグは挿入されてません。MAGI改は回答を…違う……カスパーが!」
「どうしたのマヤちゃん!」
「マヤ!何があったというの。報告しなさい」
遅れてきたリツコがマヤに状況を報告させる。
「カスパーが…メルキオール、バルタザールを乗っ取りに入りました」
「!!カスパー…シンジ君が?」
カスパーにはシンジの人格、メルキオール、バルタザールにはそれぞれカヲル、リツコの人格が入っている。カスパーがそれを行うということはその人格の主、シンジがそれを行うに等しい。
刹那、衝撃が辺りを埋め尽くす。
「何!」
ミサトの叫びが発令所に響く。
「ATフィールドの発生を確認、パターン青。間違いありません、使徒です」
「弐号機ではなく?」
「はい、使徒です」
ミサトの問いに目がねを掛けた男のオペレータが答える。
「使徒…こんな時に」
「シンジ君…貴方は何をする気なの?マヤ、シンジ君は」
シンジが一体何をしようとしているのか全力で考えながらリツコはシンジの居場所をマヤに問う。
「…ロストしました」
「ちっ、他のチルドレン達は?」
リツコに代わりその答えに反応しながらミサトはある予想をしながら聞いた。
「「「後ろです」」」
「やっぱりね…」
予想していたぶん先ほどのようにはならず冷静だ。
「パイロット諸君、君達はなぜここにいる」
突如発令所の上からゲンドウがチルドレン達に声を掛けた。
「…コアに宿る魂を除き、エヴァの使徒たる部分はシンジ君に抜かれてしまったので…今のエヴァでは何をしても無駄なので……状況がわかると思われるここに来ました。」
いつになく真面目に答えるカヲルに周りの皆は呆然とした。
「…くすん」
自分のキャラが壊れキャラと皆に思われているのだと理解したカヲルはちょっと泣いた。
「カヲル君…どう云う事なの?…エヴァの使徒の部分をシンジが抜き取ったというのは…」
発令所の上…ゲンドウ達と一緒にいるユイがカヲルにカヲルの言った事の意味を聞いた。
「…こればかりは…僕にも解りません……彼が…シンジ君が唯一僕達にも秘密にしてきたことなので…ただ、一つだけ解るのは…」
「解るのは?」
「カスパーを使い…違うな、最初から仕組まれていたと考えたほうがいいね…これは…カスパーによってMAGI改を乗っ取る事により今から行う事に邪魔を入らせなくしようとしている…」
「今から行う事…」
「ねぇ、カヲル君。アスカ…フィフスチルドレンは?」
ミサトがここにいないチルドレン…アスカのことを聞く。
「彼女は…使徒ですからね……」
「し、使徒?彼女が?」
「あれ?聞いてませんでしたか?赤木リツコさんには言ったんですけど」
「リツコ…」
「私は確かにミサトに言ったわよ。『今度来るチルドレンは使徒』だって」
「……そう言えば言ってたかも……」
「そうよ」
こんな時に何を言い争っているの、とアイとレイは思っていた。
「「碇君、貴方は何をする気なの……」」
瞬間、再び警報がなる。
「初号機起動」
そのオペレータの声と同時にスクリーンにシンジの顔が出てきた。
「……他人には理解されない行為…それを行うのさ」
たったそれだけの言葉を残してスクリーンからシンジの顔が消えた。
「「碇君」」
「シンジちゃん」
「シンジ君」
「シンちゃん」
「シンジ君」
「シンジ」
「シンジ」
「シンジ君」
皆それぞれの呼び方でシンジを呼ぶ。
「遅いわね…バカシンジ…私を待たせるんじゃないわよ」
「アスカ……いや第十七使徒『タブリス』…その哀しみから…解き放ってあげる」
「やっとおでましね」
「やあ、アスカ」
「どう?裏切られた気持ちは」
「…シナリオ通りだよ」
「シナリオ?何いってんの。あんたやっぱりバカね」
「それでもいいさ…ごめんよカオルちゃん」
言い様シンジは初号機の方からプログレッシブナイフを取り出し弐号機を切りつけた。
ガシィィィン
硬質的な音が発生する。
初号機、弐号機のプログレッシブナイフのぶつかり合う音。
「……エヴァシリーズ、アダムから生まれた人間にとって忌むべき存在。それを利用してまで生き延びようなんて思うリリン…私にはわからない」
アスカを背に戦い続ける初号機と弐号機。
「アスカ…どう…」
『あっても、使徒として生き続けるの?使徒という呪縛から僕は君を解き放つ事ができる』と言おうとしたシンジだったがそれはアスカの言葉によってさえぎられた。
「エヴァは私と同じ体で出来てるのよ、私もアダムよりうまれしものだからね。魂さえなければ同化できるのよ、この弐号機の魂は自ら閉じこもっているんだから」
―――誰もそんな事聞いてないよ…
シンジはそう言ってあげたかったが言えばアスカが怒ると思い、言わなかった。
ガシィィィン
再びぶつかり合うプログレッシブナイフ
先ほどとぶつかり合う角度が違ったのか初号機のプログレッシブナイフがアスカを目掛けて宙を滑っていく。
キィィィン
「ATフィールドか…」
「そう、あんたらリリンはそうよんでるわね。何人にも犯されない聖なる領域、心の光、リリンも解ってるんでしょ?、ATフィールドは誰もが持っている心の壁だと言うことを…」
アスカのATフィールドにぶつかっていたプログレッシブナイフを手元に戻し再びシンジは弐号機との戦いを始めた。
「人の定めね…人の希望は哀しみに綴られているわね…」
その瞬間強力なATフィールドが辺りを埋め尽くした。
「どう言う事?」
「これまでにない強力なATフィールドです」
ミサトの問いに律儀に答える目がねのオペレータ。
「綾波アイ、レイ…ATフィールドが張れるかい?」
カヲルはアイとレイに問う。
何を当然のこと、という顔をしながら彼女達は身の周りにATフィールドを張ろうとした。が、しかし
「!!」
「何故?」
張れない。いつもなら手を動かすが如く作れるATフィールド、それが今は作れない。
「やはり…か…シンジ君…君のやる事が少し解ってきたよ……ゲンドウさん、ユイさん、冬月さん…下に降りてきてくれませんか?」
「何かわかったのかねカヲル君」
冬月がゲンドウ、ユイの顔を見ながらカヲルに問う。
「はい…シンジ君のやろうとしている事の大半が…」
「解った、今下へ降りよう」
少し焦り気味にゲンドウはそう答え下へ降りていった。続いてユイ、冬月も…
一、二分してゲンドウ達がカヲル達の前に現れた。
「オペレータの皆さん。どうか、シンジ君のエントリープラグの映像が見えるようにしてください。お願いします」
「「「了解」」」
マヤ、目がね、そしてロン毛の男がそれに答える。
「ありがとうございます」
「それでカヲル君。何が解ったんだ?」
いつもの人を威圧するような言い方ではなく、一人の親として息子を心配しているような言い方。
「シンジ君は……………還(か)える気です…LCLへと…それが全ての…第一から第十七。そしてシンジ君の世界にいた人達…第十八までの使徒の寂しさを無くすために……それが自分の…自分の体がLCLへと還元すると知っていながら…」
「「「「「「「「!!」」」」」」」」
予想もしない…否、出来ない衝撃的な事実を知り皆、声が出ない。
そんな中カヲルは続ける。
「始めてここに来た時に戦った第三使徒サキエルを倒した際にシンジ君はサキエルのコア…サキエルの心を口にしました。もっと前…ずっと昔から考えていたんでしょう僕らには…僕とアイの心と繋がっていながら彼はそれを隠し通してきた…そんな事が出来るはずが無いのに…………あの時…サキエルのコアを口にしたとき気づくべきだった…どうして…どうして気づかなかったんだろう…シンジ君…」
流れる涙…始めて流す涙。後悔と悔しさとやるせなさを含んだ涙。
「あれ?…これは……涙………僕に涙なんてあるはず無いのに……どうしたんだろう……」
始めて流す涙に困惑しながらカヲルは泣き続けた。
カヲルの涙が止まるまで誰もカヲルに話しかける者はいなかった。
「おそらく、アイとレイに関しても使徒である部分は取り除かれています。ATフィールドが張れないのがその証拠だと思います」
さっきまで泣いていた人物とは思えないほど毅然としているカヲル。
「何時の間に…」
自分の知らない間に人間にされていたアイ、レイは戸惑いを隠せない。
今まで人間になりたいと思っていたレイだったが完全な人間になったはずなのにレイには嬉しさが生まれなかった。どうしてだろう、そう考えながらレイはシンジの笑顔を思い出す。そうだ…ATフィールドを張れない私は碇君を助けれないからなのね。哀しみと共にそう結論を出した。
「寝ている間だと思うよ…」
「繋がりました!」
マヤの声にそこにいた人物はいっせいにスクリーンの方を向いた。
そこにいたのは…
「やあ……ばれちゃったんだね…その様子だと……」
数十分前のシンジから見るとまるで違う人間かと思えるほどシンジの顔は土気色をしていた。その姿に皆…声を失った。そして皆一様に『ああ、もう遅い』そう感じた。
「シ…シンジ」
そんな中唯一声が出たのがユイだった。ただ…涙声だったが……
「やあ、母さん…嘘ついてごめんね…大丈夫じゃないみたいだ……」
今にも倒れそうなシンジの顔にその時微笑みが現れた。
「ほら…笑ってよ…ねぇ母さん…言ったじゃない………母さんには何時も笑っていて欲しいって…」
だが、ユイは今、まさに死に行くような人間を前にして笑えるような人間じゃない。しかもその相手が息子ならなおさらだ。
「シ、シンジ……私の…息子……可愛い…可愛い…私の息子……私が…私が…『人の生きた証』を求めた結果が…こんな事になるなんて……………」
後悔。ユイの中にはそれしかなかった。
「良いんだよ…母さん、これは………僕が望んだ事なんだから……母さんが『人の生きた証』を求めエヴァの中に消えたように…僕は『全ての使徒の寂しさを無くす事』が望みなんだよ…」
「シンジ……」
もう…声が出てこない。
「碇君!」
突如アイの声が静かな、本当に静かな発令所内に響き渡った。
「なんだい?…レイ………そうだった……アイだったね今は…」
「!……碇君。貴方の願いは『全ての使徒の寂しさを無くす事』………だけど、この世界に住んでいる人達はどうするの?彼らも第十八使徒リリンなのよ…それを置いて…なんで…私達の…貴方を失うその寂しさはどうするの!」
記憶がすでに鮮明ではないシンジに驚きながらもアイはシンジに思いのたけをぶつけた。
「アイ……僕にはもう一つ願いがある。それは『他人がいる事』…つまり僕達の世界のように……群体であるリリンを一つにさせない事。ひとつになってしまえば…それは……僕達の結果と同じ…それでは…ここに来た意味が無くなってしまう…そう云う事なんだよ……もうそろそろお別れだ……弐号機は…アスカを騙すために残しておいた弐号機の使徒の部分はもう吸収した………あとは初号機とアスカと…リリスだけ………ああ、それと…父さん?」
「なんだシンジ…」
いつものように聞こえる声、だが…どこか哀しみを含む声。
「アダムは勝手に貰ったよ……」
「そうか……」
ゲンドウの少ない言葉の中にどれほどの感情が込められているのだろう。
「シンジちゃん…もうだめなのかい?」
今まで黙っていたカオルもシンジと会えるのが最後と知り
「そうだよ…もう…ほっておいても…僕の体はLCLへと還元される…」
「どうしてシンジちゃんの体を使わなきゃいけなかったの」
「使徒の寂しさを…ATフィールドの無くなった使徒の寂しさを無くすためには……LCLで出来た心の世界が……必要だった。そして…それは…僕の中にある。そういうことだよ…」
「解らないよ……シンジちゃん」
「全ての使徒の心を受け取りその世界は僕のATフィールドにも干渉するようになってきた。初号機、アスカ、そしてリリスを取り込めば間違い無く僕が僕でいるために必要となるATフィールドは無くなってしまう…そしてそれは僕自身がLCLになる事を意味している…」
「何を言っているの…シンジちゃん」
「科学者達への説明」
「何を言っているんだよ…」
「もう時間だ…」
「まってシンジちゃん!」
「さようなら…お別れだ…みんな……………」
その瞬間…またしてもシンジを写していたスクリーン…モニターが消えた。
「やあ、アスカ…待たせたね」
「そう云う事だったの…どうりで他のエヴァからはアダムのにおいが少なかったのね…」
「やっぱり使徒達は…アダムの匂いを…嗅ぎながら来るんだ」
「…やっぱりバカね」
「良いんだよ…自分でも…解ってるから…」
「で、どうするの?私を」
「人間に…なってもらう」
「私を?」
「そう云う事…ちょっと待ってて…」
エントリープラグの排出操作をしながらシンジは初号機に対峙しているアスカに言った。
カシュ
単純な音と共にエントリープラグが排出され、中からシンジが出てきた。
そしてシンジはアスカの前へと宙を歩いていった。
「やあアスカ」
「ゼーレへの報告は全て嘘ってわけね」
「そうだよ、全て嘘」
「どうなっても知らないわよ」
「それは父さん達に任せてあるよ…最後の使徒を倒したと同時に戦自、政府…世界全体にゼーレの情報を全て流す…これである程度は大丈夫さ」
「考えてるわね」
「そりゃね…二度目だから」
「面白い事言うわね…聞きたいけど…」
「そう、時間が無いんだよ…あとでカヲル君やアイに聞いてよ」
「カヲルとアイね。解ったわ」
「じゃ……あっ、下はLCLだから落ちても安心して」
「えっ!」
アスカの素っ頓狂な叫びが終わる前にシンジの右腕がアスカの…使徒のコアに突き刺さった。そしてシンジはコアに腕を突き刺すと同時に一瞬でアスカの体を人間へと変えた。これはアイ、レイの時にも行った事、本当に一瞬と呼べる時間なのでアイ、レイは気づかなかったのだ。
「術式完了」
その言葉と同時にアスカは下にあるLCLの海に落ちていった。
「これが…タブリスのコア…」
アスカに突き刺した右腕を目の前に移動させシンジは手に掴んでいるコアを見つめた。
一分もそうしていただろうか、見ているのが飽きたかのようにシンジはそれを口に入れた。
「ぐはっ」
うめき声を上げたシンジの口からは血が出てきた…だが…それはLCLと同じ色をしていた。それを見たシンジはため息と共に声を出した。
「内臓のほとんどはもうLCLに還っている…次は初号機…」
初号機に振り返りシンジは宙を伝ってコアを隠す装甲板の前まで来た。
そしてシンジはATフィールドを使い装甲板を破壊する。装甲板が破壊されたその向こうには紛れも無い初号機のコアがあった。
「これでよし………」
ATフィールドを使用し初号機のコアの使徒たる部分を抜きとる。
「OKだ…ぐっ」
アスカのコアとは違いシンジはそれを見ようともせずに摂取する。
「次は…リリス…君の番だよ…」
振り返り様シンジはリリスに向かってそう言った。
取り出したリリスのコアを前にシンジは一人呟いていた。
「やあ、リリス…待ったかい?」
―――いいえ
「そうなのか…」
―――私にとって人の一日なんて本当に些細な時間
「そっか…」
―――ええ、そう
「君も…寂しかったんだろ?」
―――ええ…とても…一人で生きていく事に私はもう疲れてしまったの
「みんなと一緒なら生きていけるよね?」
―――ええ…一人じゃないなら…
「じゃあ、おいで…みなの…アダムの待つ僕の心の中へ…」
―――行くわ…
リリスのコアがシンジの口の中に入る…………
「…………もう…終わりだ…長い旅も…ここで終点………」
小さな…小さな声が聞こえる。シンジの、碇シンジの声がリリスのあった場所の真下から聞こえる。
「シンジ!!」「シンジ!」「シンジ君!」「シンジ君!」「「碇君!!」」「シンジちゃん!」「シンちゃん!」「シンジ君!!」「バカシンジ!!」
そのシンジを呼ぶ声が聞こえる。モニターが消えた後シンジを追いかけてきた彼らの声が。
「ああ、誰かの呼ぶ声がする…気のせいだよね…ふっふっふ……耳も…おかしくなってきたみたいだ……母さん、父さん、冬月先生、カヲル君、アイ、レイ、カオルちゃん、ミサトさん、リッちゃん…はは…アスカの声も聞こえる…あったかいな……こんなにも暖かい物を捨てて僕は何処に行くんだろう………寂しいな…一人は……やっぱり……忘れてたよ…自分の事……」
「シ…ン…ジ…」
掠れるようなユイの…シンジの母の声が聞こえる。
「母さん…生きてたんだ……顔…見たかったな……あんまり覚えてないんだ……」
シンジの体と共に記憶が消えて逝く
「シンジ…」
「父さん…一緒に暮らしたかったな……朝起きて、父さんと母さんがいる日常……一度で良いからやりたかったな」
「シンジ君」
「冬月先生……父さんをあんまり苛めないでね……あれでも結構傷つきやすいんだから……」
「シンジ君…」
「カヲル君……生きてたんだ…良かった……僕……カヲル君を殺しちゃったのかと思ってた…大丈夫だったんだね…」
「シンジちゃん…」
「あれ?…おかしいな…カヲル君が女の子に見えるよ………目も…おかしくなっちゃったんだ…」
「シンちゃん」
「ミサトさん…ビールは控えめにね…」
「シンジ君……」
「リツコさん………その金髪は…やめようよ……黒か…茶色の方が似合ってると思うよ……」
「バカシンジ…」
「アスカ………ごめんね…助けてあげられなくて…でも無事だったんだ…よかった…」
「「碇君」」
「…あれ?……綾波が二人に見えるよ……やっぱり目がおかしくなっちゃったんだ………でも一人は黒い髪に見える……なんでだろ……」
「ああ、眠いな……疲れちゃった………僕…もう寝るね?………また……あ…し…」
その日、碇シンジと呼ばれる一人の人間がこの世界から消えた。
(了)
後書き
まず、これを読んでくれていた方々にお詫びと御礼を申し上げます。
本当なら全使徒分書かなければいけなかったのですが、作者…僕の精神状態が非常に不安定を極めているため
全て書くのは困難だと思い、最終話だけ書かせていただきました。
前回の話まででほとんど設定を書いてしまったためネタが無くなっんだろといわれればそれまでなんですが…
作中にも書きましたがいつか書く気が起こればこの話の設定でシンジ達がよった世界のことを書こうと思っております。いつになるか、また書くかどうかはわかりませんが。
追記
この話を書くため参考にした(気づいたらそれを使っていると思いまして…)ゲーム等があります。
ここでそのゲーム達に感謝いたします。
『久遠の絆』((c)F・O・G) 『EVE〜burst error〜』 ((c)C's
ware)
『久遠の絆 散華…散り逝く花火』を聴きながら
タイキ
琥珀のコメント
タイキさん、お疲れ様でした&大変ありがとうございました。
こんな私のへっぽこHPに彩りを添えてくださいまして・・・・・・・・・・・・
もう、感謝してもし足りないです!
最終話、なんだかシンジ君が可哀想で仕方がないです。
シンジ自身が望んだこととはいえ、
ずっと一緒にいたレイやカヲルにも自分の行動を明かさなかった・・・
残される者の淋しさ、苦しみを知っていてなお、その未来を選んだシンジ。
なんだかやるせないですね。
それを表した小説で、いろいろと考えさせられました。
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