活力ある鹿児島づくり 4  商工業・

LAST UPDATE:Thursday, November 19, 2009

      

 5 商工業   



  大型店を拒まない鹿児島だが、市は2006年9月に地域への貢献を求める独自のガイドライン(指針)を設けた。店舗面積が1万平方メートル以上の新設店や、増床で新たに1万平方メートルを超す既存店を対象に、地元産品の販促への協力など10項目の条件を付けた。新設物件を対象にした指針は全国初という。10月20日、市はイオン九州とこの指針で協定を結んだ。的場課長は「大型店と共存する地域経済を目指すために指針を設定した」と説明する。

 鹿児島の商工業

 商業統計

 経済産業省の「商業統計」によると,鹿児島県の小売業事業所数は82年の3.1万をピークに,04年には2.1万と約30%減。この間の減少率は全都道府県中9番目の高位水準である。 
 経済産業省発表の04 (平成16) 年商業販売統計(確報)によると,鹿児島県の卸売業及び小売業の事業所数は,26,158事業所(前回比▲2.6%),従業者数は,146,249人(同▲2.2%),年間商品販売額は,4兆2338億円(同▲2.3%)である。
 卸売業は事業所数4,675事業所,前回比3.2%と増加したが,従業者数38,215人,前回比▲1.9%,年間商品販売額2兆5837億円,前回比▲1.8%と減少している。
 一方,小売業は事業所数21,483事業所,前回比▲3.8%,従業者数108,034人,前回比▲2.4%,年間商品販売額1兆6502億円,前回比▲2.9%といずれも減少している。
 年間商品販売額では,卸売業,小売業の年間商品販売額は4兆2338億円で,前回調査に比べて981億円(▲2.3%)の減少である。

鹿児島県商業の推移グラフ:2004年商業統計より
商業統計調査;鹿児島県 全国

・個人事業所の大幅減少
 県内小売業は,個人経営の小規模事業所の割合が,(1982年:鹿児島県83.7%,全国74.7%,04年:鹿児島県59.6%,全国53.3%)と,全国平均と比べて高い。加えて,小規模事業所は1982年の2.6万から04年の1.2万と大幅に減少した。この主な原因としては,大型小売店の増加,過疎化,後継者不足等があげられる。
小売業の年間販売額は1999年以降減少
 県小売業の年間販売額は1999年の1.7兆円をピークに減少している。地域別では,鹿児島市以外の地域は97年をピークに,鹿児島市は1999年をピークにそれぞれ減少に転じた。
小売業の総売り場面積は縮小傾向
 県内小売業者の総売り場面積は増加傾向にあったが,02年をピークに減少に転じた。04年の総売り場面積は鹿児島市がピーク比マイナス1.0%,鹿児島市以外の地域はマイナス1.9%である。 

・コンビニエンスストア−−競争の緩い地域
 05年度の都道府県ごとの店舗の増減をみると,増加数の首位は東京都の230店,2位は愛知県の112店で前回調査と変わらなかった。 
  都道府県の人口(05年度,総務省調べ)に対するコンビニエンスストア店舗数では,一店舗当たりの人口が最も少なく競争条件が厳しいのが東京都で,2101人に一店舗の割合。次いで北海道 (2284人),宮城県(2398人)である。
 一店舗当たりの人口が多く,競争条件が緩いといえるのは島根県(4727人),高知県 (4423人),鹿児島県(4361人)の順。三県はいずれもセブンイレブンが進出していない地域で,最も店舗密度の高い東京都とは店舗当たりの人口で2倍以上の開きがある。


7-2 鹿児島市の商業

 商業統計によると,02年の鹿児島市内にある小売業の売り場面積は合計で約63万平方メートル。

 1970年代,市域の50%近くを,商業施設がほとんど立地できない第一種低層住居専用地域に指定した鹿児島市。市街化区域の5.8%に当たる497ヘクタールの商業地域に延べ床面積3000平方b以上の商業施設の65%が集中する。また,郊外では道路整備が遅れ,売り場面積が1万平方bを超える商業施設が2棟しか出店していなかったことも幸いし,中心市街地のにぎわいが保たれてきた。
 功を奏したのは中心市街地に新たに生まれた商業拠点を既存拠点と結びつける策だ。04年9月鹿児島中央駅に開業した商業施設「アミュプラザ」,臨海部に05年4月末にオープンした複合型商業施設「ドルフィンポート」と中心商業拠点,天文館地区を循環バスが結んでいる。
 
 鹿児島市は,デパートなど店舗面積1万平方メートル以上の大型店4店が天文館一帯に立地,商店街と共存共栄してきた。市内に平地が少ないうえ,丘陵地が切り開かれても大半は住宅用地になり,大型店は郊外に出店しにくいという地理条件に加え,市電,バスのルートが天文館に集まり,天文館一帯の発展に貢献してきた。集客力のある大型店を公交通機関で結ぶことで,点から線,線から面へとにぎわい保ってきた。なお,天文館全体の06年度の売上高推定は約1900億円で,ピーク時の02年度の約2400億円から500億円落ち込んでいる。
 
 07年秋以降,スクエアモール鹿児島宇宿,フレスポジャングルパーク,イオン鹿児島ショッピングセンター,オプシアと大型施設が市内に続々登場した。いま,市中心商店街は転機にある。遊休地の有効利用のため市が04年春に行った用途地域の見直しが,郊外への大型店進出を促した。宇宿地区の木材団地付近など,これまで進出が困難だった地区への出店が緩和され,家電販売大手・売上高業界第4位のケーズデンキ(水戸市)が07年12月に鹿児島市東開町に店舗面積4750平方メートル,駐車場台数は258台の店舗を出店した。市南部の産業道路沿いには1999年にヤマダ電機(前橋市)が初進出。以降,コジマ(宇都宮市),デオデオ(広島市),鹿児島ベスト電器(鹿児島市)が次々と開業した。ケーズデンキの出店により,約7キロの範囲内に大型店5店が林立する事態になった。
 こうした市南部地区での相次ぐ大型商業施設の出店は,雇用拡大につながる半面,地元商店街,中心街に大きな影響を及ぼしている。また,交通渋滞の慢性化も懸念されるところである。

 市は06年9月,大規模小売店舗の設置者に地域貢献を求める指針を策定した。活力あるまちづくりに地域社会の一員として参加してもらうのが狙いだ。これまで,イオン鹿児島ショッピングセンターを運営するイオン九州山形屋,など4社が,指針に基づいて市と地域貢献協定を結んでいる。地域で親しまれる店舗を目指し,既存店と共存共栄していくためには,今後実効ある貢献策を積極的に展開することが求められる。なお,既存の大型店にも協力を依頼し,山形屋やナフコ,Misumiとも既に協定を結んでいる。

 一方で,中心商店街の危機を乗り切る動きも出ている。住民の“都心回帰”の傾向だ。これを反映してか,東千石町など繁華街の真ん中に大型マンションの建設が相次いでいる。この動きは,「高齢者や単身者だけでなく,ファミリー層の,都心回帰」ともみられる。

 人と共生する商店街――。日本政策投資銀行南九州支店は,各地の商店街が「シャッター通り」になっている現状からして,「鹿児島は職住接近のコンパクトシティーに転換すべき。人口減少が続く天文館を人が住める町にしていくことが必要」と提言している。

山形屋 増床計画を一時凍結
 山形屋は,九州新幹線鹿児島ルートが全線開業する2011年春に予定していた売り場増床を延期した。急速な景気悪化で09年2月期決算の売上高は前年比で過去最悪の落ち込みが予想され,回復の見通しも立たない中,増床しても十分な収益は期待できないとの判断による。
 進めている工事は中断。景気の動向を見ながら10年秋以降に工事を再開するが、増床部分のオープンは早くても12年秋となる。
 山形屋は新幹線開業効果を狙い,売り場を現在約3万3000平方メートルの1.5倍の約4万80000平方メートルに増やす工事に昨年6月着手していた。

 だが,消費の急激な落ち込みで,今期売上高は前年比5.6%減の524億円を予想。この状態では増床しても効果は見込めないとして,景気回復のめどが立つまで工事中断を決めた。計画の縮小や中止は考えていないという。
 岩元修士社長は「増床は,中心市街地活性化の大きな核。新幹線全線開業には間に合わないが,なるべく早く工事再開を目指したい」との意向。

       We Love 天文館協議会:天文館の商店街振興組合や町内会,百貨店など13団体・企業で結成

09年三越 鹿児島店(天文館)撤退
 三越伊勢丹ホールディングスは,不採算事業の撤退など構造改革の一環として,三越鹿児島店(鹿児島市呉服町)を,2009年5月6日で閉店した。鹿児島店は,前身の丸屋時代から,山形屋を超えられず“地域二番店”の位置に甘んじてきたことが,閉店に至る根本原因であろう。
 三越鹿児島店の06年度の来店者数は約350万人で,02年と比べて90万人減だという。ライバルでもある山形屋の岩元修士社長は「地方は,生き延びるか衰退するか分かれ目にある。生き延びるためには中心街の活性化が必要」と語っている。

三越鹿児島店の跡地に2010年春開業する新しい商業施設の名称が,「マルヤガーデンズ」に決まる
 三越鹿児島店の土地建物の約6割を所有している丸屋は,テナントを誘致し、複合商業施設「マルヤガーデン」として,再出発する。施設は丸屋が運営し,マルヤガーデンズには,書籍販売の大手「ジュンク堂」や,ブライダルに対応するレストランなどの入居が決まり,売り場スペースのおよそ8割が埋まったということである。関係者は,残りのスペースに鹿児島に店舗がない婦人服メーカーなどを誘致し,マルヤガーデンズの魅力を高めたいと話している。
 同店は地上8階,地下1階で売り場面積1万8700平方メートル。

中心市街地活性化(中活)基本計画−小売業年間商品販売額2100億円

 鹿児島市は07年10月,策定を進めている中心市街地活性化(中活)基本計画の最終案を示した。国の指導を受け見直した数値目標は,2010年の地区内の小売業年間商品販売額を約5億8千万円増の2100億円とするなど3指標を採用。

◆ いづろ−中心市街地中小商業活性化支援事業に採択される

 中小企業庁は,「中心市街地の活性化に関する法律」に基づく商業活性化事業を対象に,商店街・商業者などが幅広い関係者の参画を得て実施する取組みについて重点的に支援する平成19年度「戦略的中心市街地中小商業等活性化支援事業費補助金」(第6次募集)の交付先2件を決定した。採択されたのは,株式会社まちづくり長野(長野市)の「起業家インキュベーション施設事業(空きビルのワンフロアを改修し,創業間もない起業家を対象としたインキュベーション施設を運営) 」と,鹿児島市のいづろ商店街振興組合の商店街ショッピングモール化事業(いづろ商店街におけるアーケード整備。第1期)の2件。

07年10月 イオン鹿児島ショッピングセンター開店

 市南部には10月のイオン鹿児島ショッピングセンターに続き,11月にはオプシアミスミが開業した。
 
 総合スーパージャスコを核店舗に170の専門店をそろえる鹿児島最大の商業施設・イオン鹿児島ショッピングセンター(SC)=鹿児島市東開町=が,07年10月オープンした。渋滞が心配された産業道路や施設周辺道路は,ふだんより通行量は多いが目立った混雑はおきていない。
 イオンSCが新たな競争相手となる県内流通関係者,天文館地区の流通業者は「宮崎,熊本のイオンSCに比べると見劣りする。鹿児島進出は脅威だと思っていたが,やり方によっては対抗できる」としている。

・イオン対抗策−“レトロモダン”/空き店舗を再利用=鹿児島市宇宿商店街
 鹿児島市宇宿三丁目にある宇宿商店街は,イオン鹿児島ショッピングセンター(SC)への対抗策の一環として,古い空き店舗を使いレトロな雰囲気を生かした,新しいスタイルのチャレンジショップ運営に取り組んでいる。

 

7−3 鹿児島県の工業

 鹿児島県の工業は,1事業所当たり出荷額及び1従業者当たり出荷額は全国と比べ非常に低く,規模が零細で生産性が低い。また,主な業種の製造品出荷額をみると,食料品と電気機械器具で4分の3以上を占める。
  製造品出荷額は, 地域別では霧島市,曽於郡,大口市など17地域で増加となり,鹿児島市,薩摩川内市など9地域は減少している。

 経済産業省実施の05(平成17)年工業統計調査結果(4人以上事業所)によると,
  ・) 事業所数 2811事業所 (対前年比 5.2% 140事業所増)
  ・) 従業者数 7万6967人 (対前年比 ▲0.3% 219人減)
  ・) 製造品出荷額等 1兆8113億3514万円 (対前年比 ▲1.6% 299億1324万円減)


世界同時不況と鹿児島のダメージ
平成17年鹿児島県工業統計   

焼酎

こだわりや健康志向に応える魅力の酒として人気急上昇 10年間で6割増の本格焼酎  

  業務用市場を中心に発生した“静かなブーム”が,専門店や量販店にも波及し,いまや全国区となった本格焼酎。その大半が九州で製造され,かつては消費地もその近辺にほぼ限られていた。昨今,全国各地で消費拡大が進み,市場は安定した成長を続けている。本格焼酎の消費数量は,10年問で約6割増となっており,直近の5年間では毎年,前年比105−110%程度の伸び率で推移している。

◆ 08焼酎年度、焼酎出荷2年連続減少−−08焼酎年度14万9531キロリットル 「事故米の風評被害残る」
 鹿児島県県酒造組合が発表した08焼酎年度(08年7月〜09年6月)の需給状況によると、鹿児島県内の焼酎全体の出荷量は14万9531キロリットル(前年比1・7%減)と,値上げの影響で減少に転じた07年度に続き、2年連続の減少となった。この背景としては,「事故米の風評被害」があげられる。
 原料別の生産量は、芋焼酎13万1380キロリットル(同2・1%減),麦焼酎6万2134キロリットル(同10・4%減),黒糖焼酎1万1250キロリットル(同4・7%減),米焼酎2865キロリットル(同8%増)−−である。
 出荷先は県外が8万6351キロリットル(同1・9%減)で10年ぶりに減少に転じた。業界では,北海道や東北地方への販路拡大を目指すと共に,中国など国外市場にも目を向けて消費拡大を図るとしている。

 鹿児島の建設業

 鹿児島県内でも建設業界を取り巻く環境は年々厳しさを増している。受注額に限らず,従業員数も急速な減少傾向にあり,業界は生き残りの厳しさに加え,技術継承の面でも不安視されている。西日本建設業保証鹿児島支店のまとめによると,県内公共工事の請負金額は05年度に2546億円と98年のピーク時から半減,02年度と比べても約3割減少した。一時は千百社を超えた県建設業協会の会員数も減少を続け,06年06月時点で約950社。協会によると,多くは倒産や経営難による廃業という。会員企業の従業員数も十年で約4割にあたる1万3000人余りが減った。
 県内では90年代後半,九州新幹線関連の大型工事や8・6水害後の甲突川激特事業といった大型工事があった。国の景気対策も重なり,この時期に業界規模は急速に拡大。その後の公共投資削減は,業界縮小の勢いに拍車を掛けている。




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