5タラントニュース 2017年6月号(No121 小堀憲助氏 召天記念号)


死は恐るるに足らず

 父は、身体が悪くなる過程で、「これ以上家族に迷惑はかけれない」と一旦は施設入所を望み、近隣の施設に手続きも済ませましたが、入所当日になり「やはり家が良い」と前言撤回しました。
 父は晩年になり自らのことを立身出世主義の権化と自省していました。能力を高め社会で認められるに連れ孤独感も増していたのでしょう、自分が弱くなり、家族に支えられることが、気持ちを動かしたようです。
 父が立身出世なら私は個人主義の権化でしたので、父は父、私は私で生きてきました。父の身体が弱るに連れ、必要に迫られ介護を始める中、父の意識の変化が強烈に伝わり、私の心のスイッチが音を立てて切り替わりました。その瞬間、父は私にトイレの世話をされることを大変喜んでいました。
 私たちは、形のいびつな歯車同士の角が漸く取れて、かみ合って回り始めたようでした。
 思い出話をしながら「良い人生だった」と人生の総決算をするように語り、いつもユーモアで周囲を笑わせていましたが、最後の十日間位に、パタッと無口になり、最期を迎える準備をしていることがはっきり伝わってきました。
 私は何十年も前から親の死を恐れていました。そしてその時を今迎え驚くべき感情を味わっています。清々しく、暖かく、平和で、まるでこの世のものではないような気持ちです。「死は恐れるに足らず」。これを父は私に教えてくれました。父は、私の予想を遥かに超えた偉大なる教育者であったと今確信しています。
 最後になりますが、多くの専門職の方々に支えて戴いたことを感謝申し上げます。

2017年6月11日 葬儀にて
 小堀 俊二




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