施設経営救済の願書と話し合いの経緯



 2004年6月11日に、神奈川県庁において、神奈川県知事宛に社会福祉法人ホミニス会理事長小堀憲助より、「施設経営救済の願書」が福祉部を通じて提出されました。それはA4で8ページに渡る文書で、主旨は以下の通りです。

1 ホミニス学園は利用者減少により収入が不足し経営が困難な状況であり、その救済の願い出。
補足:ホミニス学園は現在概ね年間1千万円の大幅な赤字を抱えており、現状が続けば数年後には破産するのは確実です。

2 その背後には、地域の関連機関の責任放棄、腐敗、それらによる人権侵害があり、その告発。
補足:現在、関係機関からホミニス学園に対する利用者の紹介、あっせん調整は全くされていません。例えば、この数年間、近隣養護学校や自治体からの紹介による見学や実習は全くありません。このことは、障害者本人の自己選択権が脅かされていると言わざるを得ません。

3 法人として認可され、不正なく、しかも私費、無料講演による全国からの寄付により運営されていることの説明。
補足:ホミニス会理事長は全国で無料講演と募金活動を行い、ホミニス学園は過去に年間一千万円から数百万円の寄付を戴いて参りました。それがなければ、既に経営破たんを迎えていたでしょう。

4 これらを、一生を学問を通じ国に貢献してきた者の名誉にかけて、また、良質な地域福祉の実現、施設利用者の権利が保証されることを切望し、願い出ていること。
補足:これまでホミニス学園は自治体職員からあからさまに「問題施設」と呼ばれてきました。その言われなき汚名を晴らし、利用者本人の自己選択権が保証されること、その為の関係機関のあり方の是正を望んでいます。

 このページには、この願書が受理されてからの県や関連機関との連絡を記録します。またこのページは理事会の決裁を受けておらず、その意味からは公的なものとは言えません。しかし、現代の地域福祉の現状を記録するという意義により作成しました。文責はホミニス学園長小堀俊二にあります。(上から下に記録していきます)


2004年6月23日
 県福祉部障害福祉課施設班より3名来園し、現場視察およびホミニス学園長と面接を行った。
 話し合いの内容は、当方からの事情説明と、以下のような県からの説明があった。
1 制度上、財政支援は出来ない。 
2 今回の話し合いに先立ち茅ヶ崎市と面接をしたが、本面接とは食い違いがある。 
3 本面接の内容を茅ヶ崎市、県教育庁に伝える。 
4 事情説明は2年前の監査あるいは更に遡った過去から受けていたにも関わらず対応が現在に至ったことを謝罪する。 
5 施設としても関係機関との良好な関係を構築し経営努力をされたい。
 面接により感じたことは、以下の通り。
1 願書に含まれる意味、即ち、自治体及び関係機関の腐敗、責任放棄や、それに伴う重大な人権侵害の告発であることが理解されておらず、告発者側が「改善せよ」と意見される有り様だった。
2 障害者自身が利用施設を選ぶという、自己決定が理解されていない。保護者やケースワーカーが現場を全く視察せず、本人の意志を確認することなく退園させていることに、全く問題意識を感じていなかった。
3 県は通所施設の待機者がいると説明していたが、その明確な根拠の説明を避けた。仮にそれが事実であれば尚更のこと事態を深刻に受け止め、管理責任を自覚すべきと思われるが、それらは一切感じられなかった。
4 全体的に透明性の中で問題解決を目指すというよりも、「理事長も事を荒立てるつもりはないと言っていた」の言葉が示すように、「隠ぺい」を強く感じる面接だった。

2004年6月24日
 前日の面接を記録に残し、公文書化することを、県は拒否した。意味が不明であるとのこと。

2004年6月25日
 理事長と県福祉部との電話による会談が行われ、23日に行われた面接内容の確認が行われた。その中には問題解決に向けた取り組み意志の確認的内容も含まれた。

2004年8月26日 県監査にて
1 監査班との面接
 ホミニス学園の周囲の専門機関の現状が重大な人権侵害に繋がっているケースについて、具体的に県として動きだしたい旨申し出あり、それを了承した。該当ケースのケース会議議事録を資料として提供した。
2 前回面接(6/23)の施設班との面接
 前回面接の内容を市、養護学校(教育庁と話し合ったつもりだったが、どちらの間違えか不明)に伝えた際の先方の回答の報告。双方とも、保護者の意向がその主体となっている。

私感
 施設班からの報告が示すように、「本人の選択」は蔑ろにされているといわざるを得ず、またそれをそのまま報告する施設班にも問題点に対する気付きは感じられない。今回の報告は「子どものつかい」と叱責されても致し方ないレベルだった。ホミニス学園に意図的に利用者を紹介あっせんしない意図はない、という主張と、現実に見学、実習が無い事、又は面接の申し出に応じない、などの現状は、全く整合性がないからである。
 今回の面接により、行政が人権侵害に加担している、という論旨がより明確になった。これが県の上層部に早急に届き、地域在住の障害者の権利擁護に繋がることを切望する。
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覚え書き(問題点の整理)
1 人権侵害の内容の整理
 *本人に選択権が与えられない
 *困窮した利用者への支援に関わる関係機関の責任放棄
2 何故そうなるのか
 *本人に選択能力があることを認めない
  これを差別として認識することが出来ない
  保護者の媚びることが支援だと信じ込んでいる。(又はその方が都合が良いから)
 *事なかれ主義
  役人は移動があればさようならだからもめ事を嫌う
 *県を含め、関係機関職員の勉強不足
  制度の主旨、思想的背景を理解していない
 *何らかの悪意
3 誰が悪いのか
 *事情説明は概ね5年以上前から行わているにも関わらず、監督責任を果さなかった県福祉部にある。今や、状況は悪化し、福祉部レベルでは収拾が付かない。現在の深刻な状況は、県福祉部の責任放棄により、起るべくして起っている、と明言できる。
4 現在の課題
 *行政の取り組み意思
 前記と重複するが、この問題はもめ事を避けるその場限りの県職員には「些か荷が重い」と言わざるを得ない。今行われているレベルでの面接を繰り返しても、事体は改善されてはいかないだろう。県議会、県知事レベルでの対応が求められる。(そもそも嘆願書は県知事宛なのだし)
備考
 県あるいは国に、根源的思想をしっかり身につけている人がいて、その人と面接できれば、事体は好転するかも知れない。「単純な理屈ほど理解されない」からである。
 関連機関の組織の規模も大きく関連しているだろう。言わば、スケールデメリットだ。
 ホミニス学園が嫌われるの仕方ないにしても、通っている利用者をエゴイズムの犠牲にするのは許せない。これがなければ教育委員会の管轄を問題にすることはなかった。

2004年9月2日 県監査班と学園長との電話連絡
 上記覚え書き(問題点の整理)の主旨を説明し、県の責任について「その通りである」との返答を受けた。再度内部で検討するとのこと。

同日 県監査班と理事長との電話連絡
 県と茅ヶ崎市で話し合いを持ち、その後、ホミニス学園と三者で話し合いたい旨申し出があった。

2005年1月5日 県監査班との電話連絡
 1月中に市障害福祉課、県監査班、ホミニス学園の3者面談を行いたいとのこと、その日程調整の連絡を行った。また当方より、将来的に県教育委員会を交えた話し合いを望むことを申し出、了承を得た。



2005年1月24日 ホミニス学園において、神奈川県福祉部、茅ヶ崎市福祉部、ホミニス学園の面接
 県より4名、市より2名、ホミニス学園より理事長、学園長の2名が出席した。
議題1 昨年8月26日の面接において、介入の申し出があったケースについて。
 状況の説明、今後の方針の確認、他。今後は市と施設が主体となる話し合いをすることとなった。
議題2 施設が利用者不足による経営困難になっていることについて。
 過去の退園者の措置解除手続きにおいて、本人の自己選択を中心とする適正な手続きが行われなかった事実が確認され、県からは取り組みが遅れたことについて謝罪があった。今後は事態の是正を目指すと共に、茅ヶ崎養護学校と県、ホミニス学園の面接を行うこととなった。

私感
 自治体が公の場で全面的に非を認めたことは大変な進歩だと感じる。その反面、特定のケースについて、行政主導で介入しようとする姿勢は制度理解の点から疑問を持たざるを得ない。また、個人情報の厳重な管理を取り決めていた(前年8月26日)が、情報は県からリークしており、既に市は個人を特定していた。このことも、問題として残さないわけにはいかないだろう。
 多々、問題のある面接ではあったが、ここではあえて暴露しないこととする。自治体が責任を認めたことが色褪せてしまうからである。より詳細な面接記録は別に作成しているので、見たい人はメールして下さい。また、面接当日の私の感想については下記BBSの記事232参照のこと。(関連:記事240)
http://www2s.biglobe.ne.jp/~kobo/bbs2/light.cgi

関連記事:ホミニス便り05年3月号(冒頭のコラム) ホミニス便り05年10月号


2005年3月29日 県福祉部、県教育部、県立茅ヶ崎養護学校、ホミニス学園の面接。

 当方からの事柄の経緯、現状の説明の他、主なやりとりは以下の通り。

養護学校在校生の実習や見学がないこと
 養護学校より
・スケジュール上の問題により実施できなかった。(ホミニス学園が少数のみの受け付けとなっていることにも一因がある)
・保護者や本人に対して、情報提供は行っている。
 県教育部より
・本人は勿論だが、保護者の意見も尊重している。
 当方より
・養護学校からの説明は、些か不自然である。同じ市内に在住し、施設はいつでも見学が可能だからである。
・保護者が本人の最適な代弁者であるとは限らない。それは近年盛んに報道される保護者による暴力、虐待防止法の流れからも明確である。
・保護者すら見に来ない実体と整合性がない。情報提供が適格に行われているか、疑問を持たざるを得ない。

養護学校の進路担当が本人の進路先見学について、管理的傾向になりがちなことについて。
 県教育部より
・本人は勿論のこと、保護者、地域を視野に入れ、学齢期から卒業後数年に渡っての支援を、全人的な把握の上でそれらを行おうとしている。その為に、学校に無断で施設見学をすることが、学校からすると好ましく思われないことが、ないではない。
・学校のプログラム以外の施設見学において事故があった場合の賠償責任が学校に問われる危惧がある。
 当方より
・あくまで選択の主体は本人であり、学校による支援が主体になること、あるいはその誤解を生むような状況は望ましくない。また、個人情報の管理の視点から疑問が残る。(個人の行動を報告しなければならないこと) 

卒業生のフォロー
 当方より
・実際には行われていない。重大な人権侵害の実体がある。
 県教育部からの説明
・由々しき問題であり、善処したい。

保護者の要望
 県教育部より
・本人の意志の尊重は大切ではあるが、親としての願いも、情として無視できない。
 当方より
・本人と保護者は別人格であり、問題の種別(例えば、保護者のカウンセリングが必要なのか、情報提供が必要なのかなど)を見極めることが大切である。保護者に媚びることは、多くの場合、本人の人権侵害に繋がり、時としてその度合いは極めて深刻である。

機関の連携
 県教育部より
・教育部として取り組み意思を持つが、障害児の進路については福祉行政が絡む事柄であり全てを管理できるわけではない。
 当方より
・市福祉部には、利用者あっせん、本会議で問題にしている事柄についての取り組み意志はない。ホミニス学園の閉鎖を前提にしている体たらくである。認可制度や人権を冒涜していると言わざるを得ないが、それはともかく、実質的な本件の改善に向けて、当事者と施設の契約が大変重要であり、その意味から、養護学校及びその監督機関である教育庁に期待すべきところは極めて大きい。

まとめ
 施設、学校、行政が、それぞれの業務の中で、本日確認された問題点について取り組む。

備考
 知事宛の「施設経営救済の願書」は、現在、福祉部長まで届いているとのこと。

私感
 糠に釘・・かな?

05年3月30日
 県ホームページを通じ、松沢知事にメールを送った。内容は、1現状の説明、2自治体の自浄能力が期待できない、3嘆願書を読んで欲しい、4急を要する、などです。

05年4月18日
 松沢県知事より返信のメールを受けた。その内容は こちらです。それを読んだ率直な感想はこちらです。

05年4月19日
 松沢しげふみ事務所に電話連絡。
・昨日受信したメールは、到底知事本人が書いたものとは思えないが、その確認をしたい。
・担当部局による隠ぺいの可能性が極めて高い。
・地域の障害者の人権が脅かされている。
 などを訴え、個人事務所として政策に関わる事柄を扱うことが出来ないが、公開されているホームページを見て、対応が決まったならば連絡する、との回答を得た。ファックスにてこのページ、ホミニス学園のページのアドレスを伝えた。

05年5月10日
 厚生労働省にメールを送った。これまでの経緯の概略を説明すると共に、このページ及びホミニス学園のページのアドレスを伝えた。

05年5月14日
 文部科学省にメールを送った。内容は上記厚生労働省へのものと同様。

06年4月11日
 茅ヶ崎養護学校から職員3名が来園。進路担当者が変わったとのこと。以下の点について説明を再度行った。
・障害者当人の選択権をないがしろにしないで欲しい。
・卒業生に対する支援を放棄しないで欲しい。
・苦情を隠ぺいしないで、透明性のある学校運営をして欲しい。
・インターネットを活用して(外出が困難である人に対する支援として)欲しい。等々

 先方より「これまでも事情は薄々は伝わってきていたが、今回改めて検討していきたい」との返答を受けた。

06年8月1日
 県監査にて。本話し合いが始まり現在まで、あっ旋、見学、実習などは全く行われていないことを説明した。





06年9月3日 理事会にて事業終了を議決

-------ここまでの連絡を通じた覚え書き---------
1 県知事の責任を土台とした面接であったが、訴えが知事まで届くことはなかった。
2 何度も県職員より問題の所在が行政にあることを謝罪されてきたが、実際には利用者あっせんは皆無であり、この部分だけをみるならば、一連の話し合いは無効であった。
3 総体的に、知的障害者の自己決定権については、認識が極めて低く、未だに父兄が無条件に代弁者であると盲信されている。癒着構造の中で障害者自らの意思と無関係に居場所が決められ、背後では事業者が利益を得ている様は人身売買といっても過言ではなかろう。
4 県の市に対する監督は機能していない。私の目前で「市の当事者軽視の実体に驚きを禁じ得ない」と県は市障害福祉課に指導していたにも関わらず、翌年になれば市は更なる人権侵害を犯し、担当者が変わった県はそれを肯定するという、これこそ驚きを禁じ得ない出来事であった。

以下はホミニス学園で行った里親活動について

1 虐待加害者の意向が尊重されるばかりではなく、施設への悪意が被害者に向けられ、本人の意思を無視した施設入所への働きかけ、療育手帳、サービス受給者証、医療費助成などが奪われるという、行政による積極的な人権侵害が行われた。
2 県の在宅障害者手当ては、同居の実体のない実父が管理する戸籍に存在しない名義の口座(旧姓)に振り込まれている。税金の使途として、許されざることである。
3 成年後見制度の申し立てが(幸運にも未然に防ぐことができた)あったが、制度の目的である自己決定の尊重、残存能力の活用、低コスト化、などの正反対を目指し申し立てられたことも、特筆に値する。法や制度の理解のないところに権限が集中した結果である。
4 重度のチック症という他者との共同生活が営みにくい特種な障害に対する、通所施設の夜間を用いた柔軟な支援は、厚生労働省からの通所施設で短期入所事業を認めるという通知と時期が重なり、本質にも時流にも合致した活動だったが、自治体の無理解、障害者差別は圧倒的であった。
5 困窮する者を匿うことは、社会全体が敵となることである。新聞社、近隣の相談機関などとも連絡を取ったが、それらすら、自治体からの説得により、「良く話し合って下さい」「本人の為に何が良いか周囲が考えるべき」と一様に本質をはぐらかそうとした。逆に、本当の被援助者はこのような八方塞がりに追い詰められた者であることに気付かされた。

関連記事 ホミニス便り05年10月号

備考:本人は過去には中度の判定も受けており、言語能力、意思表示能力とも、自らの生活の場所や方法を支援者に伝えることに、何ら障害はない。また自治体職員の本人との面接は嫌がる本人を背中から見た数十秒のみである。

記録を停止するにあたり
結論として、21世紀初頭の神奈川県の地域福祉にとって、障害者の自己決定権の擁護は未だ高いハードルであり、その原因は、制度自体ではなくその運用に関わる福祉や教育の分野の、障害者に対して権限を持つ者達による差別と偏見、癒着構造に因るのは間違いない。

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