ホミニス便り2002年9月号



「こりゃ哲学だ」 学園長 小堀俊二
 とある会議で私がホミニス学園について、その学事の内容や価値観の基準について話したところ、会場から「こりゃ哲学だ」との声が聞こえました。私はなるほどと思いながらも「じゃ、福祉に哲学は要らないのかな」とも自問し始めていました。
 ホミニス学園に着任すると繰り返し聞かされる言葉に「階層的な思考」があります。例えば、運動会の準備でリボンを買いに行くとするなら、ここには、運動会から種目のスズ割り→スズの中にはリボンが必要、という階層が出来、反対側には、地域との交流という目的→行事による実践→運動会、という階層が出来ます。つまり地域との交流という目的を果たす為に今リボンを買いに行くのであり、今の行動が何に根差しているものかを見失うと、正に場当たり的な支援となるばかりか、多くの場合、とんでもない尻拭いが待っています。
 昨今騒がれる有事法制化に関する報道には戦争への驚くべき情熱が感じられますが、その根拠には国民の安全の確保をうたったとしても、解決しない問題があります。それは、人が生きる手段として相手を殺すことが赦されるのか、突き詰めると、何を目的として人は生きるのかに辿り着きます。正に哲学です。そして政府は、有事の際には宗教と思想を制限する可能性が在ると明言しました。本末転倒とはこのことです。生きる意味を問うことなしに、それを守れる訳はありません。人間は物体ではないのです。
 戦争に役立つことが生きる目的とされるならば、教育も福祉もすべて優秀な兵士の為のものとなります。それに寄与しないものは生きる価値はないものとなり、つまり優生思想が復活します。
 社会福祉にしろ教育にしろ、その目的を見失ったら、相手を生かすつもりが殺すことに簡単にすり替わるのです。社会福祉が何故人権侵害を繰り返してきたのか、その根底の問題を掘り下げ、振り返り、真摯に頭を垂れることなくして、未来の共生社会は在りえないと思うのです。

〜〜リレーエッセイ〜〜
私の中の差別意識 生活指導員 竹田朝子
 最近「謝罪」ということに関して、いかに自分が避けて通ってきた道だということを感じさせられました。自分がしてしまった失敗に対してそれを隠さずに自分が行った事実を認めること、そして「謝る」という一見聞くと極々当たり前のことなのですが、私はそれすらもできていませんでした。
 今までありとあらゆる失敗をしてきましたが、今思えば利用者の方達に対して「謝る」ということすら私は知らなかったと思います。それはきっと自分の中にあるごまかしや、自己を正当化したい思い、そして一番問題なのが私の中に無意識のうちに潜んでいる差別意識に他ならないと思います。
 きっと謝罪の気持ちというものは自分が悪いと思えば自然に出てくるものだと思いますしかしそれが出てこないというのは、悪いことをしたということすら認識していないのだと思うと恐ろしくなりました。
 自分の余りの不完全ぶりに悲嘆することもあり、まだまだ「当たり前のこと」ができる人間になるまでには遠い道程ですが、その無意識の偏った考えに少しでも気付かせてくれたホミニスに関わる全ての方に対して頭が上がらない思いで一杯です。

〜〜リスクマネジメント研究 1〜〜
暴力って何?その2
 前回は暴力には身体的な暴力と心理的な暴力があるというお話でした。今回は同じ事を違う角度から考えてみたいと思います。
 それは例えばAさんがBさんの頭を叩くとすると、それはBさん個人に対する暴力です。しかし、その原因はBさんが大声で集団の活動を邪魔していたとすると、それはBさんによる集団に対する暴力と言えます。つまり暴力には、個人に対する暴力と集団に対する暴力があるのです。
 ホミニス学園がリスクマネジメントに取り組む中で、このテーマを掘り下げようとした理由は、集団に対する暴力という視点に対して、あまりに無頓着だったからです。集団の機能を阻止する行動(暴れる、大声、不衛生な行動など)を好意的に受け止めることに偏りすぎ、暴力の被害者の声を、私達は傾聴してこなかったのです。(続く)



「渦巻きを音にするとね〜」
「・・・」

質問コーナー 
Q 何故ホミニスの先生は無言なのですか?(見学者dさん)
A 完全に無言ではありません。必要なコミュニケーションは行っています。しかし、利用者の声を聴くことに比重が極端に高い為に、初めて来た人には無言に感じられるようです。
 また、発する声は、相手の「心に届く」必要があります。そうでないとただの雑音として空間を濁すだけです。そして、相手の心に届く為には、大きな声は必要ありません。時としてより小さな声、更には沈黙が大きなメッセージを伝えることもあります。
 また、ホミニス学園では生活の主体が利用者本人にあります。つまり余程の必然性が無いかぎりは職員にとやかく言われないのです。
 そして最後に、ホミニス学園の過半数の利用者は、日常生活レベルの言語能力を持たず、その人たちも含め「誰も乗り遅れない」ことを目指しているのです。


陶芸&バイキング大会
 7月18日に、親御さん3名と一緒に陶芸とバイキングの一時を持ちました。午後には、臨時のホームルームを行い、午前の陶芸の感想や、今一番気になることなどを語り合いました。
 今回特に良かったのは人数だと思います。これ以上大勢になるとがやがやしてしまうし、ディスカッションの場面でも話し合いがしにくくなってしまうからです。こじんまりとしていて、良い空間だったと思います。


弦楽二重奏

今月の苦情 
利用者の方から以下の要望を戴きました。
*汗をかいて着替えたが、着てきた服を着て帰りたい。
 着替えを洗濯し乾燥させるまで2時間あれば可能です。その事を説明しまし、希望通りに実施しました。

〜〜苦情大歓迎〜〜
 ホミニス学園を利用していて、納得が行かなかったり、直接言いにくい要望があるときは、第三者委員または下記機関までご連絡下さい。
 今年度の第三者委員は、下記の通り、戸塚教会の尾毛牧師です。

・第三者委員
  日本キリスト教団戸塚教会
  尾毛佳靖子牧師 (045-881-3416)(受け付け、及び苦情報告受理)

・福祉サービス運営適正化委員会(045-317-2200)

・権利擁護センター「アシスト」(045-312-1121)


〜〜〜5タラントの会報告〜〜〜
南アフリカの実情を知る生活指導員 竹田朝子
 今回は南アフリカのエイズ問題について発表をしました。現在、南アフリカでは9人に1人がエイズに感染しているという報告がありました。国連は先進国に対してさらなる資金援助の要請をしたそうです。しかし、このようないわゆる「後進国」でエイズが広がっている原因として調べたところ、今のところ特効薬が開発されていない事と、国自体が貧困ゆえに富む人と貧しい人の格差が激しくなっているという事実です。
 なぜ貧しくなると病気が増えていくのかというと、結果として女性、そして幼い子供までもがその日を生きる為に「売春」をしてお金を稼がなくてはいけないからです。そしてどんどん病気の感染が広がり悪循環につながってしまうのです。南アフリカ以外にもタイや南米などでも同じようにエイズ感染は確実に増え続けているとのことです。
 罪もない子供たちまでもがどうしてそのような悲しい目に遭わなくてはいけないのだろうと、私は神様に対して「どうして?」と問い掛けたい気持ちにかられました。神父さんに思い切って質問したら、「一言では言えないけれど、そういった苦しんでいる人達こそ神様が人間が目に見えない形で必ず側にいてくださっている。」と、答えてくれました。
 神様が考えている計画は私たち人間には決して理解出来るものではありません。けれどマザーテレサは“愛するという事はその人の為に行動する事です”と言ったそうです。自分が出来る行動とは一体何だろう?と考え、やはり一人一人が「祈る」事だと思いました。自分のためだけに祈るのでなく、他者の為に捧げる祈りというものを遠い国で苦しんでいる方達の現実を知る事によって考えさせられました。


罪を直視する勇気 学園長 小堀俊二
 今回の発表は、カトリック司祭による新聞記事を元に、罪と謝罪、について考えました。
 記事の内容は以下の様なものです。ベトナムに滞在した時に、ストリートチルドレンにつきまとわれます。始めはガムを1ドルで売り付けていたその少女から、本当のメッセージ「私をボスの所から連れ出して!」が聞えた途端に、少女を通りに放り出し司祭はホテルに戻り、自らの「人道に反する罪」を直視させられた、というものです。後半は、ネルソンマンデラ氏の働き、キリスト教会の過ち、などを通じて、暗部を明らかにして心からの謝罪と刷新運動を訴えています。
 その記事から私は2つのポイントを取り上げました。一つ目は、事柄の明確化です。罪を許すことと事柄を曖昧化することは全くことなります。例えば、虐待の問題を曖昧化により収束しようとするならば、犠牲には被虐待者がなることには疑問の余地はないでしょう。また、神様は光として例えられますが、それは希望の光であると同時に、私達が目を背けたい現実を照らし出す光でもあるのです。
 もう一つのポイントは、私達が赦しあう土台には、神様から前述の照らし出された罪を日々許されていることを忘れてはならないことです。憎しみ合うことは言わば人の本能であり、愛しあい生かしあうことは神への祈りなしには在りえないことだと思うのです。
 障害福祉に携わっていると、曖昧化による事態の収束がとても多くあります。その犠牲には弱者がなり、当事者のもつれた感情を周囲は傍観するのみです。
 私は、事柄の明確化とそこからの謝罪、神に赦されているのと同じようにお互いに赦しあうことがとても大切だと思います。

5タラントの会
 キリスト教主義の勉強会を中心に、保護者との懇談、福祉相談、利用者預かりなどを行っています。相談事等、気軽に声をかけて下さい。次回は8月31日に勉強会&懇談会を行います。どなたでも参加できますのでお気軽にどうぞ。


9月の予定
2日 体重測定
19日 バス旅行(未定)
11日 防災訓練 歯科検診
26日 誕生会

10月の予定
1日 体重測定
9日 防災訓練
15〜18日 授業参観
31日 誕生会

高橋医院にて内科検診(日程は未定)

 授業参観を見に来られる方は早めにお申し出下さい。1回に3名程度にしたいと思います。



9月の歌 賛美歌497番

心穏やかに 主の御手に眠る

ただしき御民の いまわのゆかしさ

生き死にの恐れ つゆなき心の

のどけきみ空に 雲すらかからず



編集後記
 昨年の9月から1年経とうとしています。報復は過ちです。お互いに多様性を認め合わなければなりません。日本国が再び過ちを犯しませんように。(小堀)


発行:社会福祉法人ホミニス会ホミニス学園
電話 0467-53-2980 ファックス 0467-52-4160

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