ホミニス便り2002年10月号



「職員研修の難しさ」 学園長 小堀俊二
 チェルノブイリの原発事故の現場をある学者が視察に行き「事故は起こるべくして起こった」と感想を話しました。何故ならば操作盤のスイッチはどれも同じ形で、その説明のラベルは剥がれかかっていて、間違えない方がおかしいというわけです。その学者の研究テーマは「如何に難しいことを如何に簡単に説明するか」とのことでした。この記事がパソコンの雑誌に掲載されたのはもう10年近く前ですが、私の心に強く響いたのを今も覚えています。
 それまでの経験で、人の指導を受けるということはその相手により成果や実感が大きく異なるということを体験的に知っていましたし、どうしたら相手の認知に訴えられるかという興味は、自分が指導する立場になってからは益々高まりました。特に音楽講師の時代には、生徒さんが授業がつまらないと感じ、辞めてしまったならば、私の生活レベルは、それに応じてすぐさま低下したので、問題は切実でした。
 自分が技術を習得することは、それ程難しいことではありません。特に近年の様な情報に満たされている環境では、熱意さえあればある程度のレベルに必ず到達します。これは音楽や福祉以外の分野でも概ね同じではないでしょうか。しかし、自ら蓄えたノウハウを他者に伝授するときは、これまでとは全く異る知識が必要となります。これまでの原動力であった熱意は、多くの場合何故か空回りします。そして、その成果が施設の利用者の利益に直結している事実に向きあわされる時に、恐怖にも似た焦りに襲われます。
 懸命に追いかけながらも未だに微かな光すら見えず、正に暗中模索の日々です。例えば、「人は誰でも必要な条件が揃うならば自然に成長する」というロジャースの主張と、施設利用者の利益とを、どのようにバランスをとるべきでしょうか。成長には時間がかかりますが、利用者は今、目の前にいるからです。
 私達職員の喘ぎにも似た姿を、利用者達はどう見ているのかなと、時々気になります。

〜〜リレーエッセイ〜〜
 主任指導員 吉永暁子
 皆さんは、時間の流れをどの様に感じていますか。私は、時間の流れが速すぎると感じています。「もっとゆっくり!」「急かさないで!」と叫んでいます。
 これは、自分自身に対する危険信号です。今在る現実に対して、何かと理由をつけ、こそこそと逃げているからです。全ての事に対する怠慢と不勉強がその大きな要因です。
 しかし、利用者は違います。実に堂々と自分の足で立ち、自分の生活を管理しています。時間の流れすら変えてしまっているように思います。
 私は、無知や無関心の上に自分自身の弱さを利用者からはっきりと映しだされます。利用者は私の鏡です。彼等と接するときに、どきどきと緊張する事があります。それは、私自身を見ているからなのですよね。今更ながら気付きました。援助者は、一体誰なのか・・・。

〜〜リスクマネジメント研究 3〜〜
支援のポイント
 これまでのお話から、暴力は身体的、精神的、また対象が個人と集団に分類できることがわかりました。さて、それを防ぐ為にはといういよいよリスクマネジメントの視点に入ります。
 暴力が振るわれる状況を図式化すると以下のようになります。

  暴力の要因==加害者==被害者
(時間は左から右へ流れます)

 暴力の要因という箇所が、今回特に注目している、利用者の反社会的行動で、それ故、左の要因を作っている人が被害者となります。要因は限りなくさかのぼる事が出来、根源的には多くの場合、本人の持つ「障害」と(先天的か後天的かは別として)なるでしょう。そして、上の図の3つのポイントが支援の対象となります。更に、事故を防ぐという意味からは、それが可能なのか否か、あるいは起きてしまった事故をフォロー可能か否かに分類されます。(つづく)


ケーブルカーは動力を持ちません。
引っ張ってもらい山を登ります。
私達の信仰も同じです。


音楽と絵画の融合

質問コーナー 
Q 就職の際、何故論文の試験があるのですか?(見学者eさん)
A 今回も求人に関る質問です。多くの応募者が論文の試験があることに驚き、正式な申込みに至りません。(ハローワークの資料には書いてあるのですが)
 対人援助職(つまり指導員のこと)は、経験が物を言うのは確かなのですが、それ以上に「論理的な思考」が必要です。それと同時に新しい情報を調べる行動力も欠かせません。与えられたテーマについて、自分で調べ、整理し、自分なりの論理で組み立て論じる。これが出来なければ職務を遂行することは出来ません。
 施設の実務は流動的です。社会の現状(ニード)の変動、そして社会通念の変化が主な理由です。私達は聖書に土台を据えながら、現実の問題に対してどう対応すれば良いのか、常に考え続けなければならないのです。
 労働市場の現状を率直に表現するならば、多くの応募者はこの事を殆ど理解していません。

三角って何だ?ある日の勉強の風景



今月の苦情 
利用者の方から以下の要望を戴きました。
*給食の時間に他の園生に服を汚された。

 その場で簡単な洗濯をしましたが汚れは落ちず、謝罪により本人の承諾を得ました。
 衣服の汚損、破損、紛失などは極力避けるように気をつけていますが、出来るだけ汚れてもよい服で登園するようにお願いします。また私物も出来るだけ持たないようにお願いします。

〜〜苦情大歓迎〜〜
 ホミニス学園を利用していて、納得が行かなかったり、直接言いにくい要望があるときは、第三者委員または下記機関までご連絡下さい。
 今年度の第三者委員は、下記の通り、戸塚教会の尾毛牧師です。

・第三者委員
  日本キリスト教団戸塚教会
  尾毛佳靖子牧師 (045-881-3416)(受け付け、及び苦情報告受理)

・福祉サービス運営適正化委員会(045-317-2200)

・権利擁護センター「アシスト」(045-312-1121)


〜〜〜5タラントの会報告〜〜〜
祈り主任指導員 吉永暁子
 今回は、祈りをテ−マに発表をしました。前回、祈ることが非常に大切だと学びました。そこで、実際、祈ってみようと思いました。しかし、祈る時がない、祈れないと思いました。
 そんな時、祈れないのは、言い訳だという言葉に出会いました。
 祈るために、仕事を中断することやいつも黙想をする必要はないと、清い心で人々を愛し、すべて人、得に貧しい人々を愛することが、間断ない祈りになると。
 祈れないのは言い訳かと衝撃を受けました。では、祈るとは何かと思いを巡らしました。私が思った祈りとは、もっとこうなって欲しいという自分の欲求を満たすことでした。
 祈るとは一体どういうことなのかと、「祈り−信頼の源へ−」マザ−・テレサ/ブラザ−・ロジェ著の主にマザ−・テレサの文章を引用しました。
 祈りとは
 「ほんとうのところ、真実の祈り、実在する祈りはただ一つです。それは、キリストご自身です。地表から立ち上がる声はただ一つ、キリストの声です。祈りは、このキリストと一つになることです。」
 「祈りの第一は沈黙」
 非常に深い言葉だと思います。沈黙の言葉の後には、次の言葉が添えられていました。「ほんとうに祈ることを望むのならば、まず、聴くこと学ねばなりません。」
『聴く』ことこれは、学園での最重要課題です。
 祈ることは、生活の中の一部なのだと思いました。祈るという行動に縛られていたなと思いました。祈りとは、沈黙そして聴くこと。十分ではありませんが、私が日頃気を付けていることです。この沈黙と聴くことを通して、イエス・キリストが私に変わり祈ってくれているだのと思います。


もう一つも見えざる手 学園長 小堀俊二
 今回の発表は、東京大学の岩井教授による、「米国の会社統治制度」(朝日新聞8月5日夕刊)の記事を元に行いました。
 記事の内容は以下の様なものです。アメリカで標準とまでなった会社が粉飾決算などで告発されました。それにより新たな倫理が求められているが、この様な出来事は会社統治制度における論理的帰結つまりそうなるべくしてなった出来事だというのです。何故なら、経営者と所有者(株主)との利益を連動させる「彼らの博愛心ではなく自己愛に訴える」方法では、元々倫理を要求されていない経営者が内部情報を所有しているという、不正行為への招待状のような仕組みだからです。確かに米国は「見えざる手」に導かれるような長期にわたる反映を手にしたのではありますが、前記のような矛盾により、岩井教授は社会の中で人間が倫理の問題から逃避することの困難、とまとめておられます。
 この記事が示している競争原理や資本主義、利益を受けるべき株主と経営者の関係は、現代の福祉施設が向かうべき世界であると叫ばれています。福祉への民間参入、競争原理による淘汰、顧客の獲得など、福祉の講習会で何度も聴いた言葉です。前記の株主は福祉の分野では納税者つまり施設利用者に例えることが出来るのではないでしょうか。それなのに、その会社経営の仕組みは矛盾をはらむと指摘されているのです。
 別の記事で岩井教授は、資本主義の論理は「儲かれば良い」で、倫理は「儲かればよいというものではない」と書いています。私達が今、会社組織を目指すように促されながらも、企業は既に儲かるだけじゃだめだ、と地域との共存を目指し始めているようです。淘汰されないための施設運営、これは福祉と呼べるのでしょうか。
 私はむしろ福祉施設は、古代からある宗教団体の道を歩むべきだと思うのです。人の生きる道を説き、人々の叫びを聞き、共に苦しみ、自らは(それぞれの)神に問いかけます。社会のあらゆる問題に「損得勘定」ではなく、「神が何を命じるか」に基準を置く。正に倫理と離れようにも離れられない運営です。私はキリスト者でありながらも、ホミニス学園を時々「お寺」に例えて説明しますが、それは駆け込み寺であり、寺小屋なのです。

5タラントの会
 キリスト教主義の勉強会、懇談会を毎月最終土曜日に行っています。場所はホミニス学園、時間は10時からです。どなたでも参加できますのでお気軽にどうぞ。


10月の予定
1日 体重測定
4日 契約制度に伴う面接(茅ヶ崎市の方)
9日 防災訓練
15〜18日 授業参観
23日、24日 内科検診(高橋医院にて)
31日 誕生会

*授業参観を見に来られる方は早めにお申し出下さい。1回に3名程度にしたいと思います。


11月の予定
1日 体重測定
7日 お楽しみ会
13日 防災訓練
28日 誕生会


10月の歌 賛美歌541番

父、御子、みたまの

おおみかみに、

ときわにたえせず

みさかえあれ





編集後記
 いよいよ契約制度への移行の手続きが始まりましたね。この機会をどう捉えるかで本人達の利益にも不利益にもなります。「そうは言っても施設が足りないから」の合い言葉はこれからは無しにしたいですね。創造的なコミュニティであればと思います。(小堀)


発行:社会福祉法人ホミニス会ホミニス学園
電話 0467-53-2980 ファックス 0467-52-4160

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