寛政のころ。

11代将軍徳川家斉の信任も厚い松平定信は、失脚した田沼意次の後を
受けて30歳で幕府老中首座に就任する。
彼は、華美ぜいたくの徹底的な禁止を行い、黄表紙、洒落本などにもつ
ぎつぎに統制を加えていった。
1790年10月27日のこと、幕府は江戸の出版業者である地本問屋
に特に浮世絵や戯作に対しての規制を強化。時事をとりあげることの禁
止、好色本の絶版、などが再三にわたり発令され、多くの戯作者が筆を
折り、さらに多くが筆を曲げた。

そんな中で細々と時代劇をかけ続けている場末の、一軒の名画座があった。