教室と、こどもをめぐるエトセトラ


廊下へでろっ!事件

ずうっと前のこじま塾ができた頃のことなのでもうその生徒は大人になってますが、
すんごく元気な小学生がおりまして、
あんまりしゃべってばっかりいて勉強に集中しないんで、
「お、おまえってやつはぁ〜、そんなにしゃべりたければ廊下でひとりで勉強してろー!」
って怒ったのです。
そしたら彼は、
「え〜、いいの〜、はいはいっ」とか言ってほいほいひとりで出ていった。しかも机とイスも自分で運んじゃう。
「それではみなさん、がんばって」
一同唖然。
「先生、ほんとにいっちゃったよ」
「……うん、まあ、すぐごめんなさいって帰ってくるさ」

ところが敵もさるもの、「うーん、分数が、なるほど……」とかぶつぶつ言いながらひとりでやっているわけですよ。

で、しばらくすると、外でアヤツが誰かと話している声が聞こえるではありませんか。
ちなみにこじま塾には廊下なんてないので、彼は入り口の前の歩道に出ているのでした。(おいおい)
あわてて、外に出てみると、相手の姿はなくアヤツめがひとりで座っておりまして。
「おいっ、誰と話してたの」
「あ〜、先生。お母さんが通りかかって、あんた、なにやってんの、だってさー」

ちなみにこじま塾でお菓子やお饅頭などのいただきものがあったとき、
この子はいつも「弟と妹にも持っていってやりたいんだよ、先生」
と泣かせることを言うので、
「よしよし、お前いいとこあるじゃねえか」と三つあげていたのですが、
あとでお母さんに聞くと、
「持って帰ったこと、ありませんけど……」
さては○っちゃん、帰り道で全部食べてたな。。。

(2003.10/10UP)

きゅうり君再来

 きゅうり君が再び放課後の(?)教室にやってきた。
「せんせいー、大学うかりましたよー」
 農大に現役で推薦入学したという。
(えらいやっちゃ)
 きゅうりのおみやげからいつのまにやら3年がたっていた。
(はやいもんだ)
 とりあえず缶コーヒーなどを買いに行かせて、高一の時に将棋で負けた借りを返しに来たというのでさっそく勝負勝負。
 前は15分ほどで勝負がついていたのでそのつもりでいたのだが、なんと1時間半もかかってしまった。
 彼はくやしがりながらバイクで帰っていった。
(きゅうりの時は荷台にダンボールのっけた自転車だった)

 それから2週間ほどして彼はまた勝負しにやってきた。
 また缶コーヒーを買いにいかせて勝負勝負。
 今度は30分ほどで決着がついて、
「おぼえてろー」といいながら帰っていった。

 さらにまたしばらくして、またまたやってきた彼の左手には、缶コーヒーが2本握られていた。
「僕もバイトやってるんですから、たまにはおごりますよ」だと。
 こっちも220円用意して待っていたんだけど、
「おまえなあ。気い使うんじゃないよ。ふふ・・・」
 たかが缶コーヒーのことだけど、生徒におごられたのははじめてである。
 なんともいえない気分。
 そういうこともあってか勝負はもつれてほとんどこっちが負けそうになったが、最後は逆転勝利。
 彼は「また来ますねー」と言って帰っていったのであった。

(1997.9.26UP)
きゅうりのおみやげ

 春に卒業した生徒が高1になって遊びに来た。
「せんせいー、ひさしぶりー、おみやげだよー」
「ほうほう、うれしいなあ」
「僕が作ったきゅうりだよ」
 彼は農業高校に行ったのだった。
「ありがとう、うまそうだなあ」
「あんまりまっすぐじゃないね」
「そこがいいんじゃないですかー。まっすぐなのはだめですよ」
 さっそく洗って教室にあるお塩をかけて食べてみた。
「うまい」
「無農薬だぜ」
 きゅうりは大好きである。(特にもろきゅう)
「ありがとう、うまかったよ」
「そう言ってくれるとうれしいです。まだまだいっぱいありますよ」
 彼は外に出ると大きなダンボール箱を持ってきた。
 中にはほんとにいっぱいきゅうりが入っている。
「おいおい、こんなにもらっちゃ悪いよ」
「いいんですよー。ほんの一部なんですからー」

 それから一週間ほど、きゅうりにことかかない毎日が続いたのだった。

(1997.9.22UP)
やきいも事件

 のどかな秋の日の授業中である。
 さっきから外で「いーしやーきいもー」の声が聞こえていた。
 それまでおとなしく勉強していたひとりの子が突然立ち上がった。
「おい、どうした」
 彼は脱兎のごとく教室を飛び出すと、

「おじさーーーん、やきいもーーー」

 そしてさっとドアを閉めてすました顔でもどってきた。
「いしやきいもー」の声がぴたりとやんで、しばらくの沈黙。
 やがて再びスピーカーをならしつつ遠ざかっていった。

「おお、おまえというやつはーーー」
 
 やっこさん、それからさんざんおこられて半べそかいていたが、帰るときにはけろりとしていたのであった。
 うーむ。
 
(1997.9.21UP)
BIG SLEEP

 小学3年生の授業が終わる時間だったが、その子はノートに顔をうずめてぐっすり眠っていた。
 休み時間になって周りの子たちがカバンに勉強道具をしまってそーっと帰っていったが、彼の熟睡(塾睡?)は続いている。
 そろそろ次の時間が始まるころになって、入ってきた生徒に口の前に人差し指を立てて目で合図を送ると、彼らも無言のまま席について黙ってテキストを広げる。(いつもはそんなに静かなクラスでもなかったのだが、その時の静かだったこと)
 そして、そのまま20分ほどが経過。
 彼はようやく目を覚ました。まわりはでかい中3連中が黙々と勉強している。
 顔を上げるとよだれの池になったノートと口のよだれがつながっている。しばらくは状況がわからなくてぼーっとしていたが、左右をキョロキョロと見回したかと思うと机の上のノートはそのままにカバンをつかんでダッ、と教室を飛び出していったのだった。

 と、いうようなことがあったのも7、8年前のことになるだろうか。前の塾にいたときのことだからもう彼も高校生になっているはずである。

(1997.9.12UP)
踏切事故注意

 何年か前の夏のある日。
 昼間の夏期講習の時にはなんでもなかったのに夜の平常授業には鼻にばんそうこうをしてきている生徒がいた。
 Bくんとしておこう。

「どうしたのよ」
「・・・・・・」
「なにがあったのよ」
「・・・・・・」もじもじもじ。

 しばらくそうした問答があった後、となりに座っていた友達が
「先生ー、骨折してるんだよー」
「え?骨折ってだいじょうぶなのか?どしたのよ」
「打った」
「なにで?」
「棒みたいなやつ」
「どういう?」
「踏切にあるでしょ。降りてくるやつ」
「??????」

 くわしく話を聞いてみると、カンカンなっている踏切をダッシュで抜けようとして降りてくる遮断機に激突したらしい。そんな、あほな。
 小雨が降っていたので傘をさしながら走っていて、傘ごとぶつかってひっくりかえったらしいのだ。危ないなあ。
「それにしても今日骨折したばかりなのにだいじょうぶなのか?」
Bくん「俺、鼻が柔らかいからぜんぜん痛くないんだー」
 そう言ってしきりにぐりぐり鼻をさわっている。しかしさすがにさわると痛いらしくイテイテと顔をしかめている。
「さわるんじゃない!そっとしときなさい」
 それでも気になるらしく授業が終わるまでの間ずっと時々さわってみては怒られるBくんなのであった。
中1最初の期末テストで・・・

 数学や英語はなかなかきびしい状況のAくん。
 一番の得意は給食と体育で、テストの前にも決意の言葉を口にしていた。
「先生、おれ体育はばっちり準備してがんばるよ」
 ところがテストの返ってきた日の授業にやってきた彼はすっかりしょげていたのであった。
「先生ー、テスト悪かったよー」
 なぜ、どうして、WHY?
 テストの範囲は陸上。彼は体育のテストの前日、他の数学や英語の準備もそこそこに2時間近くもバトンを渡す練習と走り高跳びの踏み切りの練習をしていたのである。
 ところが意気揚々とテストに臨んだ彼を待っていたのは無情にもペーパーテストで、出題されたのはリレーのルールや走り幅跳びの飛び方の名前だったのだ。
「ペーパーテストだなんて聞いてないよー」
って、聞いてない君が悪いのよ。
選択問題A、B

 教室でテストをして解答用紙を送り、結果や偏差値が郵送されて戻ってきた。さっそくひとりずつ生徒に返したのだが、ある生徒が採点済みの解答用紙を持ってきて「なんで全部×なんですかあ」と抗議してきた。(たしか社会だったと思うが)
 後ろの方の回答欄が[A][A][A][A][A][A][A]といったぐあいに全部Aで埋まっているのである。
「全部A書いたのに全部×ってことはないでしょう。じゃあ答えは全部Bなのかー。はめられたー」
 ほかの子の答えを見るとちゃんと「建武の新政」とか「リアス式海岸」といった記述式の答えが書いてあってそれなりに○とか×がついている。
「えー、なんでー、なんでだよおお」 
 なんなんだ?と思って問題を取り出してきてよく見てみると、次のように書いてあった。

 後半の[4]〜[6]の問題は選択問題です。学校で習っている内容によって地理の人はAを、歴史の人はBを答えなさい。

 彼の中学校が地理コースだったのは言うまでもない。

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