聞き手
:上田早苗さん
:古谷敏郎さん

ゲスト
:中村吉右衛門さん

義経千本桜、蜘蛛巣城のお話、ひげのお話など、とても楽しいひとときでした。
その中から、吉右衛門さんの過去の、また現在の、エピソードのお話を中心にまとめてみました。


少年時代のエピソードより

@初舞台すっぽかし事件(四歳)

ふだん優しいおじいちゃんであり、養父でもある初代が
血だらけでにらみつける(という役の)姿がこわくて、イヤダイヤダと言って
何日間目に泣いてやめちゃった。
代役はお弟子のせがれが代わりに……こんな人はあんまりないでしょう。

A女形舞台で声変わり事件(小学四年生)

籠の中から「あいあいー」ってかわいい声で言ってなんのことはなく踊るって役で、
ある日、出てきなさいって言われたらば
「アイアイー」って、
自分でもわかんなかったんですけどお客さんはウワアーって。
ほんとにはずかしくて出るのいやだったですよ。
その時はすっぽかさなかったけど。

B学芸会で主役

映画で有名な「タイタニック」の、ディカプリオの役の
……相手役の女役をやることになって、舞台の上でふてくされてラブシーン。

C修学旅行の夜(小学六年)

京都への修学旅行の夜。お世話になっているご挨拶に行かなければということで、
みんなが寝る頃にお茶屋へ行って、ついでに遊んで……
知っている舞妓さんたちが出てきて「ようおきやした」

D中学生でナイトクラブへ

役者は社交上手でなくてはならないので、スーツを着て行って……
女性の扱い方を覚えると……なかなか、大変でした。
放課後すぐ楽屋入りしたり稽古したりでなかなか同年齢の友達と遊んだりすることもできず、
だから友達になるのは悪い奴ばっかり、ふっふふ。

意外な素顔

@おしゃれなブレックファースト

小さい頃からのパン食で、
朝は、卵とパンと、ミルクティー。
娘達はみんなごはんをガーッて。その中でひとりクロワッサン。

A音楽の好みはJAZZ

小学校高学年から好きで、自分たちでバンドもやったり演奏したりしていた。
デューク・エリントンやカウント・ベイシーなどのビックバンドやチェット・ベイカーみたいな。
ボーカルも好きで、ナット・キング・コールなんか、いまだにクルマの中にCD入れて聴いている。
うちに帰ると娘達が今の音楽を聴いているんで聴けないので、クルマの中が自分の世界……
侘びしいですねえ。

Bアメリカン・テレビドラマ・フリーク

エド・サリバンショー、ルーシーショーからはじまって、アメリカのものに憧れていた。
現在も奥様の影響で、ERやビバリーヒルズ青春白書などを見ている。
ERではグリーン先生とかが好き。内容は殺伐としたものだけれど人間がおもしろく描けていて、
それをバカ丁寧にみせるのではなく画面がパッパッ切り替わって何かものすごい事件がおきるけれどパット気分を切り替えてやっていく、
というところがすっきりする。キャロルさんというのもずいぶんとまた、波瀾万丈の人生ですねえ。

質問コーナー

役者になっていなかったら……

職業にはつかなかったかもしれない。絵を描いてぶらぶらして暮らしたい。
小説を書いて、暮らしたい。
フランスに行って、ジゴロになりたい。

健康の秘訣は……

ストレスをためないこと。
あとは寝ていること。寝るより楽はなかりけり。

どうしたらそんなにダンディーになれるのか……

自分はダンディーとは思っていないんでわかりませんが、
自分の心のままに生きること、それがある種のダンディーさを生むのではないかとおもうけれど、
ぼくはそう心のままには生きられないので、遠慮して遠慮して生きています。。


1993年「半ズボンをはいた播磨屋」インタビューへ