<釣りバカ日誌全国版in小田原/真鶴>

一日目
朝の5時半ごろ出発して小田原でビジネスホテルを探して宿を確保。
早川港でお昼頃から釣りはじめる。
いつもの川崎とくらべるとさすがに水がきれいで赤い魚や青い魚やしましまのが群れて泳いでいるのがよく見える。
はじめサビキ仕掛けで糸を垂れるといきなりあたりがあった。
さっぱとは違うあたりだ。
あげてみると、小さなのが2匹いっぺんにかかっている。



カワハギ?それと5センチくらいの赤い魚だった。
(逃がしてやるから大きくなって恩返しにくるんだよー)
これは今日は大漁になりそうだ。
と、思ったがしかし。
結局暗くなるまでにかかったのはその2匹だけだったのであった。

二日目は真鶴まで足をのばした。
予定は網代だったのだが、熱海の手前あたりでクルマがまったく動かなくなって急遽Uターンしたのだ。
すいすいとのぼり車線を走りながらさっきまでいたとなりの車線を見ると、クルマの列はますます長くなっている。
正解。さっき30分以上かかってずっと前に通ったように思えたところに5分くらいで来てしまった。
こんなに近かったのか。




真鶴では堤防の外側にでっかいテトラポットがおいてあって、そこで釣っていたお父さんが大きな魚を釣り上げていた。
魚は背中のひれがとがっていて、そのお父さん手を切ってしまった。
それで魚をつかむための道具を貸してあげると、
「どうもありがとうございます。助かりました」
「いやあ、とんでもない。実はそれ、今まで使ったことないんです。今度は自分で使ってみたいです。ははは」
お父さんはまたテトラポットの上で釣りはじめたが、今度はいっしょに釣っていた息子さん(二十歳ぐらい)の竿に同じ魚がかかって、また魚つかみを貸してあげた。
「また使って下さい」
「どうも、まいどすみません」
お父さんと息子さんとお母さんと三人で来ていて、お母さんはテトラポットには行かずに堤防のところで日傘をさして座っていた。
テトラポットはひとつひとつがとてもでかくて間があいているし、海面までずいぶん距離があってとてもこわいので、堤防から竿を出してお母さんと話をしたりしながら釣っていたのだが、これがなかなか釣れない。そこでついに竿とえさを持ってそっちで釣ってみることにした。
「次こそ自分で魚はさみを使うぞー」
ところがしかし。
えさはエビの小さいみたいなやつなのだがすぐ針から取られてしまう。
あっという間にえさだけがなくなって上がろうとしたが、さっきは「えいっ」と飛び降りたものの今度は堤防までもどるのが容易なことではない。
すると見かねた息子さんが竿を持ってくれてなんとかずりずりはい上がるようにして堤防まで上がることができた。
助かったー。
あとで気が付いたら足がすりきずだらけになっていてすりむけていた。
すこし離れたとなりの堤防で釣っていたS先生のところへ行ってみると、投げ釣りでシロギスが釣れたところだった。
しかも見ているうちにたて続けに3匹釣れちゃった。
(結局帰るまでにシロギスは6匹になった)



えさはさっきまでの沖アミにかわってアオイソメ(にょろにょろしたやつ)を使っている。
先に帰った釣り人のおじさんがまるまる残っていたやつをくれて、おまけに魚がいる秘密のポイントまで教えてくれたらしい。
釣り人は親切なのである。
わたしもそのにょろにょろをもらってそこで釣ることにしたのだが・・・
釣れない。
そうこうしているうちにだんだんと日が暮れてきて、「なんとか一匹は釣りたいなあ。ふぅ」と思いながらふと足下を見ると、
けっこういいかたのカワハギがちょろちょろ群れているではないか。
(ん?恩返し?)
これだ。
さっそく糸を直接持って垂らしてみると3匹のカワハギ軍団が一斉ににょろにょろに群がってきた。
手につんつんとくる感触。
が、しかし。
カワハギ軍団はえさだけをうまいこと取って針だけを残してどこかへいなくなってしまった。
ようし、今度こそ。
えさをつけて針を落とすとまたどこからともなく現れて、そしてえさを取って去ってゆく。
こうなると、もう意地である。
人間としてはカワハギに負けているわけにはいかないのである。
針を小さいのにかえてみたり、にょろにょろをいっぺんにたくさんつけてみたりするものの、結果は同じ。
にょろにょろの中にえらい元気なやつがいて、針に刺そうとすると逆に針にかみついてくる。これだ、こいつだ。逆にカワハギのやつに噛みついてやれっ。あいつらに勝つのは君しかいない。
しかし。
その勇者もえさ取り巧者のカワハギ軍団の前には単なるえさでしかなかったのだった。
「なんだかハトにえさをあげに来ているみたいっすねえ。はは」
帰る時間が近づいて後かたづけをすることになった。
それでロープの付いたバケツで水をくんでコマセなどを洗っているうちに、ビビビッとある考えが頭に浮かんだ。
「釣ってだめならすくってやるっ」
(プライドはないのか、プライドは)
まってろよー、カワハギ軍団!
ばけつを用意して残ったにょろにょろを全部投げ入れた。
さあ、こいっ。
が、しかし。
さっきまでは一匹落としただけで群がってきた連中が一匹も出てこない。
もうお腹いっぱいになってしまったのか。
「遊びの時間はおわりだぜ、ベイビー。はやくおうちに帰んな」
ってことなのか。
そして後かたづけを終えて帰ろうとした耳にS先生の声が。
「こっちにカワハギがいるぞ」
見ると、例の3匹がほんとに海面の近くまできて楽しそうに泳いでいたのである。
「楽しかったぜ。いつでも遊んでやるからまた来いよ。ふふふ」



ちなみに。
帰ってから調べてみたら、あの大きな魚は「クロダイ」でした。(たぶん)
家族で釣りに来てお父さんと息子が一匹ずつあげて、その日の晩御飯の光景が目に浮かぶようです。


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