自然が友・健康メモ
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03遺伝子組換えとは:

遺伝子組換えとは、DNA上にある目的とする遺伝子を取り出し、ベクター(vector、遺伝子を一定の方向へ運ぶ物)に組込み、宿主(host)細胞に導入すること。ここで、遺伝子断片の選択的な取り出しには、制限酵素(restriction enzyme)が重要な役割を果たす。また、ベクターとしては、細菌の細胞内に存在する環状DNAのプラスミドが利用され、大腸菌プラスミドが有名である。

(1)目的とする遺伝子の両端を特定の制限酵素(この場合は、EcoRT:イーコアールワン)で切断して遺伝子を取り出す。この遺伝子は外来遺伝子と呼ばれる。また、1本鎖の部分を粘着末端と呼び、(3)の図に示されるように、ベクター由来の遺伝子片と相補結合する。

制限酵素とは、特定の塩基配列を認識し、特定の位置で切断する酵素である。EcoRTは、GAATTCの6文字の配列を認識し、GとAの間を切断する。GAATTCと相補関係にある対抗鎖の配列の逆は、同じようにGAATTCとなっている。このように、逆さに読んでも同じになる配列をパリンドローム(palindrome)と呼び、制限酵素はこのような配列を認識する。制限酵素には、4,5,6そして8塩基対のパリンドロームを認識する多くの種類が知られている。


(2)大腸菌からプラスミドだけを取り出し、(1)と同じ制限酵素で切断する。1本鎖の部分を粘着末端と呼び、上図のDNAと相補結合する。


(3)(1)と(2)の両者を混合してDNAリガーゼ(ligase:DNAの粘着末端を接合する酵素)を加えると、ベクターの切断部分の間に目的とする遺伝子が組み込まれた環状DNAが作られる。以上が組換えDNA(recombinant DNA)プロセスの概略である。

(4)外来遺伝子を組込んだ組換えプラスミドは、プラスミドど含まない大腸菌(宿主細胞)に導入される。この宿主細胞を増殖させると、目標とする遺伝子も大量に複製され、当然の事ながら、外来遺伝子に特有なタンパク質が大量に合成されるのである。単純に計算するなら、1個の大腸菌細胞は僅か5.6時間で百万倍になる。11時間で1兆倍である。

遺伝子組換え技術の福音として、インスリンや成長ホルモンなどがある。しかし、恐ろしい部分も含まれるので、遺伝子組換え実験(処理方法や施設)については、国内外とも厳重な指針がある。

もしもDNA分子の塩基配列が完全に制御できるようになれば、人間が創造主になれるかも知れない。その是非は別として、多くの科学者が遺伝子制御技術(形質制御)の確立のために研究に励んでいる。その初期段階として、最近世間を賑わせている遺伝子組換え技術がある。たとえば、害虫抵抗性植物、病害抵抗性植物、除草剤耐性植物、保存性向上植物などがそれである。

害虫抵抗性植物としては、害虫にとって有害となるタンパク質を生成するように、DNAの塩基配列を組換えたものが作られています。その植物を食べた害虫は死滅します。これなどは序の口の技術であり、多分将来的には、特定の種族(ヒトも含めて)のみを選択的に絶滅させることも可能となるでしょう。遺伝子制御技術の究極の姿は何でしょうか。


以上に、ベクターを使う遺伝子組換え法の概略を述べた。

ベクターを使わない方法もあり、たとえば、細胞とDNAの混合状態において、何らかの手段で細胞璧に小孔をあけ、DNAを侵入させる方法がある。小孔をあけるエネルギー源としては、高電圧放電による電気的エネルギー、硬質粒子の衝突による運動エネルギーなどがある。また、注射器によって細胞内へ注入する方法もある。簡便性においては優れているが、精密性においてベクターを使う方法より遥かに劣る。


プラスミド
DNAの形状には鎖状と環状の2種類が知られている。真核生物(動・植物、酵母菌など)の細胞の核内に存在するDNAは鎖状であるが、核外の細胞質にあるミトコンドリア、葉緑体、プラスミドのDNAは短い環状をしている。原核生物(大腸菌など細菌)のプラスミドや核様体のDNAはすべて環状である。大腸菌のプラスミドは、遺伝子組換え技術の重要なパーツ(たとえば、ベクター)としてしばしば利用される。

宿主−ベクター系:
組換えDNAを導入される生細胞を宿主といい、宿主に外来DNAを運ぶDNAをベクターと呼ぶ。大腸菌K12株を宿主とするEK系、酵母を宿主とするSC系、枯草菌を宿主とするBS系が、組換えDNA実験指針で認められている。