父の遺産



私の父は、とてもまじめな人でした。

過去形で語らねばなりません。

父は胃腸が丈夫でなく、いつも「キャベジン」か「ワカモト」を飲用していました。

父が亡くなって、気持ちの整理がつかないまま、

父の荷物の整理をしておりました。

その中に、見慣れない物があります。

「あれっ? 父ちゃん、こんなの飲んでたの?」

私は母に尋ねました。

親父は越えられないと思いました。

そこには飲み残した「太田胃散」があったのです。

ずーっと真面目一本で通してきた父が、

人生の最後に、一発かましてくれたのです。

子供達に無言のイサンをのこして...。


          

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