【用語解説】 ダイオキシンと環境ホルモンの関係(用語)

ダイオキシン(dioxin)〔公害・環境〕

 非常に強い毒性をもつ有機塩素化合物で、ポリ塩化ジベンゾダイオキシンの略称。異性体が70種類以上あるなかで2‐3‐7‐8四塩化ジベンゾダイオキシン(TCDD)は史上最強の毒物といわれる。極めて安定した物質で水に溶けにくい性質をもつ。毒性は皮膚障害、内臓障害、発がん性、催奇形性と多様かつ、強力である。ベトナム戦争当時、「枯葉作戦」としてアメリカ軍がジャングルに散布した除草剤の中にはダイオキシンが含まれていて、解放後のベトナムではこれが原因と思われる重篤な胎児の奇形が数多く報告されている。この「枯葉剤」を生産していたアメリカ国内の工場跡地からもダイオキシンが発見された。1967年には、イタリアのセベソで農薬工場が爆発事故を起こし、ダイオキシンがばらまかれた。どちらの例も周辺住民は町ごと移住している。 かねてから警告されていたゴミ焼却によるダイオキシン発生は、1997(平成9)年に厚生省の調査結果から耳目を集めた。この時点で具体的な施設名は伏せられていたが、市民団体「止めよう!ダイオキシン汚染関東ネットワーク」の独自の調査が発表され、厚生省も公表を余儀なくされた。九月には文部省が全国の学校のゴミ焼却炉を全廃することを決めるなど、ゴミを燃やして処理する行為そのものが問い直されることとなった。環境庁は12月、大気汚染防止法の指定物質にダイオキシンを加え、焼却炉のばいじん規制も前倒しを決めた。WHOは98年5月、ダイオキシンの環境ホルモンとしての観点も加えてリスク評価を強化、これまで体重1キログラム当たり10ピコグラムだった耐容1日摂取量を1から4ピコグラムと決めた。日本国内の基準値も見直しが迫られている。7月、環境庁の調査でディーゼル排ガス中にもダイオキシンがみつかるなど、大気や土壌、魚介類からの汚染報告も続々とあがっている。日本は対策が遅れているために大気中のダイオキシン濃度も、欧米より一桁高い。まだ手つかずの食品調査を含めた全国の実態調査が急がれる。 対策としては、燃焼温度を900℃より下げないようなゴミの燃焼方式の改善に加えて、ゴミの徹底した分別が必要で、とくに塩ビ製品を焼却に回さないことである。生協や大手スーパーも食品の包装に使用するラップを塩化ビニリデンから、ポリオレフィン系に切り替える動きが出てきている。ドイツでは建築資材でも電線や配水管、床材などから塩ビを追放する試みがある。取り壊しのときには分別できても火災となれば燃えてしまうので、初めから塩ビを使わないほうがよい。ダイオキシンから身を守るには消費生活の見直しが不可欠である。



環境ホルモン(environmental hormones)〔健康問題〕

 正式には(外因性)内分泌攪乱化学物質(environmental endocrine disruptors ; わが国では1997(平成9)年に入って、一般の関心が急激に高まったが、環境ホルモンはここへきて突如登場してきた新種の物質ではない。すでに存在し、しかも人々がその存在に気づいていた物質 に、あらたに衝撃的な作用のあることがわかってきたのである。 現在、環境庁は約70種の化学物質を指定し、98年6月には300種を調査対象として新たに指定しているが、その中の最右翼がダイオキシンだ。ベトナム戦争のときに米軍が枯れ葉作戦で散布した除草剤に含まれていた物質である。
これまでダイオキシンの危険性は、ある一定量以上を体内に取り入れたときに発生するものと思われていたが、それが超微量が体内に入っただけで、長期間、体内に残留し、やがて生殖機能に異常を引き起こすことがわかった。さらに怖いのは、侵入された生体には当面何の異常も発生しないのに、胎児あるいは乳児に伝わって20年、30年後に生殖能力がないという、人類を滅亡に追い込むような作用に気づく点である。 環境ホルモンというと、米フロリダ州アポプカ湖のワニのペニスが短小化しているという、野性動物のメス化現象や、巻き貝のメスにペニスが生えるというインポセックス現象、さらには人間の若い男性に起きている精子減少の現象がセンセーショナルに伝えられ、人々は恐怖と好奇心の入り交じった感覚でこの種のニュースを受け止めているが、公害とか環境問題に対して個人的な対策はありえない。オゾンホール、地球温暖化現象などとともに国家的、世界的規模での研究や対策が必要である。





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