「神社古来旧儀式
御調
(
おしらべ
)
理ノ義ニ付御届」
明治25年
草岡神社
(
春季例祭
)
に伝わる
古い神事
「
鼠
(
ねずみ
)
の儀式」・「
深湯瓮
(
くがだち
)
の式」・「
小槌
(
こづち
)
の舞」
原文
古事記の鼠
一、式内御社 草岡神社
一、春季例祭神式
但シ神楽式と相唱テ、大ナル鼠ヲ
拵
(
こしらえ
)
へ、
夫
(
それ
)
ヲ御本殿ノメグリヲ三度
廻り、其ノ時、大音ニテ男女二人、外ハすふすふ、内ハほらほろト
申テ廻り、夫ヨリ神前ニ、該鼠ヲ備ヒテ式全ク終ル、次ニ
深湯瓮
(
くがだち
)
の式
ト申テ、沐浴斉戒、衆人ニ代リテ、笹葉ヲ熱湯ノ中へ入レ廻シテ振リ、
湯ン参詣人ニカカルヲ吉事トス、是ハ応神帝御宇勅令ニテ磯城川浜
ニ於テ、深湯丹心黒心立処ニ現レ、忠心意ニ応へり、又允恭帝御
宇味橿丘禍戸碑ニ、詣人木綿手繦ヲ著テ、深湯瓮アリテ、実者全シ、
偽者傷ク、故ニ詐者退テ不進、自是後更ニ詐人ナシ、住古ハ此神社
ニモ勤行セシナリ。
一、御田植神事
但シ御田植ノ神事ト相唱テ、打手ノ小槌ヲ持テ舞ヲ奏シ、終テ其槌ヲ
神前へ供へ奉テ舞人控席ニ座ク、此時神宮ハ立テ、草岡神社四
十九ケ村ノ村々ヨリ不残奉ルノ御初穂米ヲ神前ニ供フ、是間奏楽全
書次第ハ、古風旧式ヲ言伝フノ侭例記、但シ今ニ海中ニ神楽バイノ
海名存ス、浜ヨリ一里斗リ北方、当今ハ網ノ良場トナレリ
右古風旧儀式等御調理ニ付御届申上候也
射水郡堀岡村大字古明神村鎮座郷社
草岡神社祠宮 多田 定信
明治二十五年五月五日 社惣代 織田 弥四郎
社惣代 崎木 九上衛門
社惣代 朽木 七三郎
鼠
(
ねずみ
)
の儀式
社伝によれば、春季例祭に大鼠をこしらえて御本殿を三度廻りその時、男女二人が大声で、「外はすうすう」「内はほらほら」と唱和し大鼠を神前に供え、式は終わる。
当神社の主祭神は大国主命である。古事記の「根の国訪問」に描かれている大国主命は、須佐之男命に焼き殺されそうになるが、鼠が助ける逸話は、「鼠」を神の使いとして描いている。
草岡神社の春季例祭に五穀豊穣の農業の神として、”鼠の儀式”を古代神事として伝承されてきたことは、神社史・郷土史を研究する上で面白い。節分に行われる「福は内、鬼は外」の唱和にも類似し家内安全祈願にも受け取れる。
又、古事記の「因幡の白兎」で八十神たちの荷物を入れた袋を持っていることから、室町以降、民族宗教と習合され、大黒天(大国主命)として崇められてきた。現在では大黒鼠は白色が吉兆とされ、福をもたらす大黒天の使いとされる。一般には米俵(鼠)に乗り福袋と打出の小槌を持った微笑の長者形で表されている。
副祭神に
事代主神
(
ことしろぬしのみこと
)
(恵比須) が祭られている。江戸時代初期から明神浜で漁業が盛んに行われていた。今日も海上安全、大漁を願って村民の祈願をしています。
事代主神は、古事記の「国譲り」で、美保ヶ崎で釣をしていた時、父の大国主命から国譲りを受ける神話の話しに基づき、鎌倉以降、民族宗教と習合され恵比須(事代主神)信仰となります。現在、七福神の絵図で恵比須が釣竿を持ち鯛を釣り上げた姿で描かれています。恵比須は大黒天と一対に信仰されているのは、父親である大国主命が大黒天と習合したと考えられます。最初、漁業の神様でしたが、やがて商売繁盛の神様となりす。
深湯瓮
(
くがだち
)
の式
社伝によれば
探湯
(
くがだち
)
(盟神探湯・深湯瓮・誓湯)の神事とは、釜で沸かした熱湯を笹の葉などで参拝者にかける湯立の行事で、県内の古社で広く行われていた。立山町岩峅寺の雄山神社に今もその時に用いられた釜が残っている。
日本書紀によれば、第15代応神天皇(即位:270〜310)、
允恭
(
いんぎょ
)
天皇、
継体
(
けいたい
)
天皇の時代に占い(
宇気比
(
うけい
)
、誓約、祈、誓)の要素が強い探湯による
神明裁判
(
しんめいさいばん
)
がルーツとされている。神に潔白を誓わせた後、釜で沸かした熱湯の中に手を入れさせ、正しい者は火傷せず、罪のある者は大火傷を負うとして物事の真偽、正邪の判断をした。その後行われなくなり、その一部が形を変え ”風習”(一年無病息災を祈る神事) として残り現在に伝えられたと考えられる。
道神社に残る「湯立釜」(氷見中田)
第15代
応神
(
おうじん
)
天皇
(即位:270〜310)
探湯1
第19代
允恭
(
いんぎょ
)
天皇
(即位:412〜453)
探湯2
第26代
継体
(
けいたい
)
天皇
(即位:507〜531)
探湯3
小槌
(
こづち
)
の舞
社伝によれば、御田植式の神事に打出の小槌を持って舞を
奉納し、小槌を神前に供え、草岡郷49カ村の初穂米を奉納し、この初穂米は 初穂守としてお分かちする儀式である。 当神社の神社紋が打出の小槌の違い槌であり御祭神にちなんだ神事であったことはいうまでもない。
明治25年(1892)
【古文書分類番号005 草岡神社奉賛会所蔵】
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