風に吹かれて神が宿る島 沖ノ島
《 Ⅰ、宗像市の概要 》 神宿る島
宗像市は福岡市(149万人)、北九州市(97万人)から30㎞圏内に位置し優良立地の住宅都市(ベットタウン)である。 平成28年1月15日に政府の閣議決定を経て、ユネスコに推薦書が提出され29年の「世界遺産」を目指しています。それを機に「宗像市景観まちづくりプラン」が策定されている。海の道 として5世紀頃、玄界灘の自然の中で大和王権がクニの祭祀として「神宿る島 沖ノ島」があり、大変魅力的な”まち”である。
2003年4月01日に隣接する宗像郡玄海町と合併し宗像市が誕生。その後、平成17年3月28日、離島である福岡県大島村を編入。
現在の人口96,558人、行政面積119.91㎢。議員定数20人、議員報酬は441,000円、政務活動費は月22,000円で交付は年度当初に1年分を交付。 普通会計の平成28年度予算総額は326.6億円、特別会計を合わせて590.2億円。26年度の財政力指数0.582。市職員432人。 「宗像市議会基本条例」は、平成22年7月26日制定、平成25年3月1日施行されている。
キャッチコピーは「ともに創る 個性輝く やすらぎの新コミュニティ都市」、「海・山・川に育まれ、教育・文化と歴史がいきるコミュニティのまち宗像」、「住みたい」「住み続けたい」と思ってもらえるよう、「子育て世代に選ばれる都市イメージ」の確立を目指し、都市ブランドの取り組みを進めていいる。「むむっ!むなかた」のロゴマークとキャッチコピーは、宗像市の都市ブランドの取り組みを表すシンボルとなっている。(宗像市HPより)
又、2017年秋「第37回全国豊かな海づくり大会福岡大会」のメイン会場に宗像市が選定されたことで、「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群の世界遺産に拍車をかけ、多くの企画展示が博物館で もよおされいる。
又、「海の道 むなかた館」の平成27年度の3Dシアター入館者数は25,159人で、「神宿る島」の3D映像(上演時間:18分)を見ることができる。古代体験学習では、勾玉づくり・古銭鋳造・火おこし・土笛づくり・化石発掘体験・土器づくり・馬鈴づくり等に平成27年度に2,789人の参加がある。 「むなかた電子博物館」の立ち上げの当初予算(九州大学)2000万円。現在の1年間の運営費200万。実行委員会が発信している。平成27年度のアクセス数は70万回を越えた。学芸員7名。
- 現地調査
- 神港渡航ターミナル
- 宗像大社 辺津宮
- 宗像市郷土文化学習交流館 海の道 むなかた館:学芸員7人
- 宗像市郷土文化学習交流館 「むなかた電子博物館」
- 宗像大社神宝館
神港渡航ターミナル 海の道
宗像市(辺津宮)~大島(中津宮)~沖ノ島(離島・沖津宮)
宗像大社:辺津宮
2、宗像市景観条例について!
景観団体になった経緯と「景観まちづくりプラン」について!
宗像市の都市計画は昭和49年に福岡県が指定区域(市街化区域・調整区域)を受け、平成25年(2013年)には離島を除く玄海地域も市街化調整区域の指定を受けている。平成27年1月の調査では、宅地が13.5%・田畑23.6%・山林原野が37.3%を占めている。
平成25年8月に景観法に基づく景観行政団体となり、良好な景観を形成するため、平成26年7月に景観計画と景観条例を制定し、平成26年10月1日以降に市内で建築物の建築や工作物の建設、開発行為等を行う場合には、届出又は申請が必要となる。
景観団体となる経緯については、宗像の歴史的風土は古代から守り受け継がれてきた宗像三女神を祀る宗像大社が大きな要因であろう。宗像市から大島そして沖ノ島という直線上に並ぶ海のルートが、姉妹都市である韓国の金海市(古代伽邯文化:かや)に通じることで、沖ノ島には出土品の約8万点が国宝に指定され、「沖ノ島」は海の正倉院とも呼ばれている。平成21年に世界遺産暫定リストに記載され、平成27年7月28日に文化庁新議会で世界文化遺産の登録を目指す候補に選定されたことに起因する。その為の宗像市の対応は宗像が宗像であり続けるために景観法に基づく「景観まちづくりプラン」が策定されたと強く感じた。
●都市計画との整合性(宗像市から提供された資料)
- 宗像市の都市計画2013
- 宗像市景観計画2014.9変更
- 宗像市景観まちづくりプラン2014.7
- 宗像市 景観重点区域ガイドライン(3地区)
景観重点区域(大島地域以外)
景観重点区域(大島地域)~沖の島・地島・勝島
景観形成一般区域(宗像地域の全部及び玄海地域の一部)
- 宗像市 景観まちづくり講座の開催(27年度 回数6回 / 28年度 回数3回)
●概要[宗像社]
- 本土 の辺津宮 - 市杵島姫神(いちきしまひめ)0㎞
- 大島 の中津宮 - 湍津姫神(たぎつひめ)11㎞
- 沖の島の沖津宮 - 田心姫神(たごりひめ)49㎞

海の道 むなかた館にて:学芸員から説明を受ける 2016.11.15
『古事記』に見る宗像市
稲作を行なうために人々が集団で暮らすようになると、共同体をまとめるために「祭祀」が不可欠になる。そのなかで、自分たちの先祖を敬う「祖霊信仰」が発達して、やがて共通の祖先をもつ人々の神は、「氏神」として祀られる。当初、古代人は山や自然そのものを神として祀った。やがて神が降りる”依り代(よりしろ)”として「磐座(巨石)いわくら」を祀り、その前に神を迎えるための「神籬(ひもろぎ)」を用意した。
神籬は木の台の上に枠を組、その中央に「紙垂(しで)」と木綿(ゆう)を取り付けた榊の枝を立て、そこに神を降ろす。この神籬が常設されたのが神の社(屋代)、神社となっていく。その古い形式を持つ神社が宗像三社の一つ「沖ノ島の沖津宮」に祀られている田心姫神(たごりひめ)である。
- 『古事記』には、
「この三柱の神は、胸形君等のもち拝(いつ)く三前(みまえ)の大神なり」とあり、胸形氏ら海人集団の祭る神であった。それが神功皇后の三韓征伐の成功や、朝鮮半島との緊密化により、土着神、地方神であった三神が5世紀以降国家神として祭られるようになった。
- 『日本書紀』には、
天照大神が「汝三神(いましみはしらのかみ)、道の中に降りて居(ま)して天孫(あめみま)を助け奉(まつ)りて、天孫の為に祭られよ」との神勅を授けたと記されている。
降臨の地は、福岡県の宗像地方東端の鞍手郡鞍手町の六ヶ岳という山で、筑紫国造の田道命の子孫の長田彦(小狭田彦)が、天照大神の神勅をうけ神籬(ひもろぎ)を建てたのが祭祀の始まり。また、天照大神が国つくりの前に、宗像三神に「宗像地方から朝鮮半島や支那大陸へつながる海の道は降って、歴代の天皇をお助けすると共に歴代の天皇から篤いお祭りを受けられよ」と示した。このことから、三女神は現在のそれぞれの地に降臨し、祀されるようになった。これが宗像大社が祀る田心姫君(たごり)、湍津姫君(たぎつ)、市杵島姫君(いちきしま)である。
- 文献
- 『古事記・日本書紀』
- 『宗像大菩薩御縁起』
- 『香月文書』
- 『六ケ岳神社記』
- 『福岡県神社誌』等。
●沖ノ島の掟・禁忌
- 「上陸者は、古式により、海水にて、禊をし、心身を清める事。」
- 「島で見たり聞いたりしたものは一切口外してはならない。」
- 「御神水以外の、一木一草たりとも何一つ持ちだしてはいけない。」
- 「古くからの、厳重な掟により、婦女子の上陸を禁ずる。」
《 Ⅱ、太宰府市の概要 》
太宰府市は福岡市(149万人)から16㎞に位置し、宇美町(3.8万人)・筑紫野市(10.2万)・大野城市(9.9万人)に隣接する。福岡都市圏の膨張に伴い、大規模な宅地開発や大学の立地等による人口急増期を迎え昭和57年に太宰府市が誕生した。
平成28年度3月末の人口71,183人、世帯数30,531世帯、行政面積29.60㎢。議員定数18、議員報酬444,000円、政務活動費は月額25,000円で、年度末に精算する。議員旅費は宿泊料(13,100~11,800円)や日当・費用弁償(一日2千円)は新たに規定している。 平成28年度一般会計予算:231億円(自主財源58%)、特別会計合わせて413億円。 「太宰府市議会基本条例」は平成26年3月27日の施行まで3年かかっている。改革特別委員会を設置し会派構成か全員構成も検討し、パブリックコメントで市民の声を聞き成立している。
政務活動については会派又は複数の議員の市政報告会の費用は認めるが、一人の市政報告は認めない。茶菓子代は一切認めない。事務所費(18人個人事務所なし)は一切認めない。備品については過去パソコンの購入は一度もない(少ない金額での多くが広報費に使用)。資料作成のインク代は30%認めている。食事は全て個人負担とする。
キャッチコピは「歴史とみどり豊かな文化のまち」、より豊かな住環境の充実を目指す「まほろばの里づくり」。九州自動車道・福岡都市高速のインターチエンジが設置や、3路線の太宰府市コミニテイバス「まほろば号」が市民の重要な交通手段である。
小さな行政面積29.629.60㎢(射水市の1/3弱)に大学4校、短期大学3校、専門学校1校、高校4校が設置されている。太宰府天満宮門前町を中心とした商業施設と、文化遺跡も多く、7世紀の「太宰府政庁跡」西の都は日本遺産に登録されている。太宰府市内にある、平成17年10月15日に開館した「九州国立博物館」の入館者数は今年1,300万人を越えた。行政面積の全体の16%が国指定の遺跡群である。現在の1年間の観光客数は800万人にのぼる。博多入港のクルーズ船(韓国・中国から2500人=大型バス50台)の入港により観光客数は増え続け、道路の渋滞が慢性化している。
●現地調査
- 太宰府政庁跡
- 太宰府展示館
- 太宰府天満宮及び参道
- 太宰府天満宮宝物殿
- 九州国立博物館

文化遺産からはじまるまちづくり 2016.11.16
太宰府の景観と歴史のまちづくりとは!
文化遺産からはじまるまちづくりは、まるごと博物館(まちぐるみ歴史公園)。
行政面積29.60㎢を太宰府市景観計画において5つの景観区分に指定し、その中で1・2(下記)を景観育生区域として進めている。「太宰府市民遺産」の取り組みにより、市民が自ら考える歴史的環境の保全と育成も併せて進めていいる施策に大変興味を持った。全国の条例を見てきたが他市の条例とまったく異なる。 「歴史まちづくり法」に基づく各種国庫補助制度や交付金制度の特長を精査し、まちづくり基金・ふるさと納税の活用なども検討されている。今導入されている市営駐車場(年間7000万円:1回500円)の一部からも景観まちづくりに活用され、継続的な推進に向けた資金の確保も検討されている。
●太宰府市景観計画(5カ所指定)
- 山並み共存区域(宝満山や四天寺の山並み)~役所からの紅葉が手つかずで美しい
- 遺跡共生区域(太宰府政庁跡や水城跡の遺跡共存)
- 丘陵住宅区域(緑に囲まれた住宅区域)
- 賑わい区域(古都の風格:天満宮参道)
- 平坦市街地区域(条坊の地割区域)
●文化庁事業と国土交通省事業の二つから連携し実践している。
- 文化遺産を見守る→→文化庁事業
- 文化財として保護する→→文化庁事業
- 市民遺産として育生する→→文化庁事業
- 文化遺産・文化財を地域の宝(個性)として活用する→→国土交通省事業
●「歴史的風致維持向上計画の認定」は、平成28年度11月1日現在で富山県高岡市を含め全国の59都市が認定されている。
都市計画との整合性(太宰府市から提供された資料)
『百年後も「古都太宰府の風景」が映えるまち』を目指して
- 太宰府都市計画総括図(まるごと博物館基本計画)
- 太宰府景観計画の概要(平成22年度に条例制定)
- 太宰府の観光と歴史のまちづくり
(都市計画課・市文化財課:景観・歴史推進係/学芸員)
①市民遺産活用推進計画~
文化遺産をみつける:市民が将来伝えたい「市民遺産カルテ」の作成
②市景観と歴史のまちづくり計画(市景観計画)~
ルールづくり:建築行為や開発行為等にみどり豊!
③市歴史的風致維持向上計画~
風致を探す:緑地の整備・サインの整備・歴史的建造物の修理
- 太宰府市景観と歴史のまちづくり(①②の連動し景観を姿にする計画)
①太宰府市景観まちづくり計画
+歴史文化基本構想(文化財保存活用計画
+市民遺産活用推進計画)
②太宰府市歴史的風致維持向上計画
- 太宰府まるごと観光ガイドマップ
- 太宰府の歴史:太宰府天満宮があるまち(イメージ)
- 特別史跡 太宰府跡
- 特別史跡 大野城跡
- 特別史跡 水城跡
- 史跡 筑前国分寺跡
- 史跡 国分寺瓦窯跡
- 史跡 太宰府学校院跡
- 史跡 観音寺および子院跡
《 Ⅲ、宇美町の概要 》 不彌(ふみ)国
宇美町立歴史民俗資料館と宇美八幡宮
福岡県糟屋郡宇美町の平成28年10月の人口37,313人(増)、世帯数15,238、行政面積30.21㎢。議員定数14、議員報酬275,000円。平成28年度一般会計予算111.4億円。 キャッチコピーは、「いきいき のびのび 誇れるまちづくり、自然と歴史をまもり、みんなが安心して暮らせるまち・宇美町」。昭和50 年代に入ると、福岡市の成長とともにベッドタウン化が進む。平成14年12月から、まず3町(宇美町・志免町・須恵町)破断。平成18年、篠栗町・久山町・粕屋町を含めた6町合併破断!!
宇美町の歴史は古く、西暦665年に築城された日本最古の古代山城「国指定特別史跡 大野城跡」をはじめ、近年、魏志倭人伝に記載がある「不彌(ふみ)国」として本町が注目される根拠となった「国指定史跡 光正寺古墳」などの史跡が多くあります。また、古事記や日本書紀に、神功(じんぐう)皇后が応神天皇を出産された地を「宇美(産み)」と呼ぶようになったという記述があるように、安産の神様として全国的に有名な宇美八幡宮があります。
●文化財
- 宇美町立歴史民俗資料館
- 宇美八幡宮(安産祈願:神功皇后)
・祭神:応神天皇・神功皇后・玉依姫命・住吉大神・伊弉冉尊
- 光正寺古墳(国指定史跡):邪馬台国の「不弥国」!
- 四王寺山頂にある毘沙門堂~ 金を借りて帰り、翌年返す 1/3
- 大野城跡
・西暦663年に百済(韓国)救援に派遣された日本軍は白村江の戦いで唐(中国)・新羅(韓国)の
連合軍に敗れ、本土防衛のために665年に築いた日本最古の山城。
宇美町立歴史民俗資料館に「不弥国」の痕跡が! 2016.11.17
国指定史跡 盗掘の光正寺古墳「不弥国」! と宇美八幡宮(中) 2016.11.17
金印実物:福岡市博物館 所蔵 2016.11.17
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