■メモリアル・コンサート
NEC玉川吹奏楽団創立40周年記念演奏会
ヤン・ヴァンデルロースト氏を迎え委嘱作品「ダイナミカ」を初演
■6月29日(日)/神奈川県民ホール ■文:西田克彦(音楽プロデューサー)
台風一過の6月29日(日)、快晴の横浜・神奈川県民ホールでNEC玉川吹奏楽団の創立40周年記念演奏会が開催された。会場は満員の盛況、吹奏楽団もそれに応える熱演で、ホールは熱っぽい空気につつまれた。
何といっても今回のコンサートの目玉は、この40周年記念コンサートのために作曲を委嘱された、ベルギーの人気作曲家ヤン・ヴァンデルローストが、自作を客演指揮したことであろう。
委嘱作品は「ダイナミカ」、現代曲にありがちな奇を衒ったところは微塵もなく、タイトルが示す通りダイナミックで色彩感あふれる魅力的な佳曲であった。
NEC玉川吹奏楽団も、この難曲を気迫のこもった演奏で答え、ドラマティックな盛り上がりのある緊張感の高い演奏を聴かせてくれた。
ヴァンデルローストはこの曲の他、自作の「トッカータ・フェスティーヴァ」と「プロヴァンス組曲」を指揮した。二曲とも曲想は豊かでのびやか、しかも力強くスケールも大きい。彼は吹奏楽器の個々の性能を実によく熟知しており、和声の響き合いも美しく、奏者に気持ちよくアンサンブルさせてくれる。また、吹奏楽をカッコよく聴かせる天賦の才能があるように思う。世界的に人気があるのもうなずける。
▲ヴァンデルロースト氏が自作自演をした
(Photo : TES・MUSICA/田中基重)
コンサートの第一部のバルトーク「舞踏組曲」へのチャレンジも聴きものであった。 磯崎敦博(東京クラリネット・クワイアー代表)の吹奏楽版アレンジということだが、原曲のオーケストラ版でも難曲に入るこの曲を、吹奏楽器の機能上の制約のあるなか、よくここまでまとめあげられたなというのが正直な感想である。充分バルトークを楽しませてくれた。変拍子のアンサンブル、ハンガリー独特のリズム、テンポ感と、一糸乱れぬとは言い難かったが、もしメンバー全員が曲を理解し”いつも通り馴れた道”といったゆとりある演奏になれば、他に誇れるレパートリーになるだろう。その証拠に、第三部の阿野次男(ドラムス)をゲストに繰り広げられたポピュラーの演奏は変拍子も何のその、水を得た魚のように生き生きと演奏していたではないか。特にノリのよい「スーザズホリデー/星条旗よ永遠なれ」は最高だった。
音楽監督・常任指揮者の稲垣征夫は、音楽に対する正しい、自然な姿を保ちながら、聞き手に成程と思わせる説得力を持っている。 NEC玉川吹奏楽団の指導も約20年に及ぶそうだが、よい意味での稲垣イズムがこの楽団の個性・持ち味になっているのだろう。
▲左が指揮の稲垣征夫氏、右がゲストの阿野次男氏(ds)
(Photo : TES・MUSICA/田中基重)
今回、彼らの演奏の中に、かなり自由なのびのびとした活気を聴いた。彼らが本来持っている自らの内に秘めたより豊かな可能性に気づいた時が楽しみである。
今まで何回か彼らの演奏に接したが、明らかな進歩を実感している。演奏家が成長していくのを見るのは、人ごとながらなんとなく嬉しくなる。今後ますますの演奏活動の発展に期待したい。
▲NEC玉川吹奏楽団
(Photo : TES・MUSICA/田中基重)
この文章は西田克彦氏の許可を頂いて掲載しています。
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