曲目解説

歌劇「ジプシー男爵」序曲(ヨハン・シュトラウスU)

 ヨハン・シュトラウス(1825-1899)は「ワルツ王」と讃えられているオーストリアの作曲家で、同名の父と区別するために「シュトラウス2世」とも呼ばれます。音楽家の長男として生まれたものの、父は息子が音楽を学ぶことに大反対だったため、工業学校で教育を受けました。しかし、小さい頃から音楽に興味を持っていたシュトラウス2世は自分の楽団を組織しワルツを発表して成功を収め、父の楽団と競争するようになりました。一時父親に勘当されましたが、父の急逝後その楽団を吸収し、当時のウィーンの舞踏音楽と娯楽音楽を支配して多忙な日々を送ることになりました。その後、彼はウィーンの宮廷舞踏会の指揮者となり、ウィンナ・ワルツの全盛時代を築き、『美しく青きドナウ』などの名作を次々に発表したのです。

 さらに後年、ウィーンで人気の出始めたオペレッタ(喜歌劇)に活動の幅を広げ、全16曲のウィンナ・オペレッタを作曲しました。その代表作として『こうもり』(1874)とともに挙げられるのが、この『ジプシー男爵』(1885)です。

 この喜歌劇は、ハンガリーの小説家マウルス・ヨカイの小説を原作とするもので、祖父が残した財宝を探すためハンガリーの田舎に帰ってきた領主の遺児バリンカイが、ジプシーの老婆とその娘(実は高貴な生まれの姫君)ザフィーの手助けで宝物を発見するというストーリーです。

 シュトラウス2世は、この喜歌劇『ジプシー男爵』の完成のために異例の2年という長い期間を費やし、脚本と音楽の密接な関係を満足させるようにしました。

 本日演奏する「序曲」は、主人公バリンカイと後に結ばれるザフィーが歌う「ジプシーの歌」をはじめ、劇中の名旋律が次々と登場します。中でもワルツの部分は、ザフィーが夢の中で財宝を見つけた嬉しさを表現する場面の音楽で「宝石のワルツ」と呼ばれ、特に親しまれています。

(出版:モレナール)

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