NEC玉川吹奏楽団

第17回定期演奏会

バンドジャーナル記事(1998年9月号)元原稿


 バンドジャーナル(1998年9月号)に第17回定期演奏会の記事を掲載頂きましたが、編集の関係で元原稿から大幅に割愛されたようです。ここに、筆者 高橋誠一郎氏(日本スーザ協会)のご了解を頂き全文を掲載致します。


”バンド・コンサートの神髄ここにあり”

 音楽監督稲垣征夫氏の指揮の下、NEC玉川吹奏楽団は、6月5日にオープンした立派な音楽ホールの記念すべき最初の吹奏楽コンサートをそんな素晴らしいコンサートで大成功裡に飾った。昨年の委嘱曲「ダイナミカ」初演、CD発表など近年の活躍振りも目覚ましい同バンドは、木管40名強を含む総勢80名を誇る充実した編成による、今日めったに聴くことが出来ない本格的なシンフォニック・コンサート・バンド・サウンドと吹奏楽らしい多彩で楽しいミックス・プログラムとで聴衆を圧倒。一般市民から音楽愛好者、吹奏楽愛好者までの幅広い聴衆は、吹奏楽の楽しさ・醍醐味、更には音楽の素晴らしさと言ったものを、まさに心と体との両面から充分に堪能することが出来た。

 3部構成のプロの1.2部では2曲のクラシックの序曲を配した。「ジプシー男爵」で期待感と共に優雅に幕を開け、「ウィリアム・テル」でドラマティックな盛り上りと共に華やかに幕を閉じた。「シンフォニエッタNo.2」では緩急の変化とリズミックな展開が現代オリジナル曲らしい斬新的な楽しさを感じさせ、ゲストの雲井雅人氏のSaxソロ、「アルトサクソフォーンのためのバラード」では暖かみある奥深い音色と情感豊かなリリシズムに深い陶酔感を味わうことが出来た。スーザ・マーチの2曲の日本初演曲「セヴィリアの花」(3つのバンドに依る本年同時初演)と「舟唄を歌う水夫たちの行進曲」は秘伝と言われるスーザ自作自演のオリジナル原典版演奏法(スーザ・バンド・スタイル=コンサート・マーチ・スタイルとも言われる強弱の抑揚や陰影効果による起承転結を持ったドラマティックな演奏法)で初演。マーチの極致、スーザの神髄を極めた芸術的演奏は驚嘆を呼んでいた。

 第3部ではステージ中央に配したゲストの阿野次男氏のドラムセットが繰り出すジャズ・ビートにサウンドもムードも一変。ダイナミックかつ繊細なドラムさばきの魔法にかかったかの如く、バンド全体に大きなサウンドのうねりが発生した。真のジャズ・スピリットとコンサート・バンド・サウンドとの驚異的融合による「キャラバン」「シャレード」など3曲の熱演に会場は興奮と熱狂のるつぼと化していた。

 アンコール曲「翼をください」終了後の場内には「色々な良い音楽を聴けた」との至福感の中で余韻に浸る聴衆の姿が多く見られた。

 誠実に音楽に取り組み演奏を通じて聴衆に音楽の喜びをもたらす市民バンド、NEC玉川吹奏楽団に心から賞賛の拍手を送ると共に、今後の更なる飛躍を大いに期待したい。

文、高橋誠一郎(日本スーザ協会)

この文章は高橋誠一郎氏の許可を頂いて掲載しています。
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