アドルフ・アダン(1803-1856)はパリ音楽院を卒業後、人気作曲家として成功を収めました。アダンの時代にはバレエ音楽は、踊りの技巧的発展に伴ってただの伴奏なってしまいましたが、アダンは「ジゼル」の音楽に"愛の主題","運命の主題"などの「モティーフ(主題)」を採用して、音楽とドラマを密接に関連づけ、音楽と舞踏の劇的展開の融合に成功し、ロマンティック・バレエの代表作として不朽の名作となりました。
物語は、スラブ民話によるバラード「ヴィリの踊り」が元になっています。このヴィリはバンパイアに属する精霊で、結婚を目前に死んだ踊り好きな娘たちの霊魂が生前満たされなかった踊りの情熱のために墓で安らぐことができずに、深夜になると森で群れ踊り通りかかった若者を捕らえて死ぬまで踊らせる、といった伝説です。
あらすじ:中世ドイツ。ライン河に近い静かな村に、村娘ジゼルに想いを寄せる貴族、シレジアの公爵アルブレヒトはロイスと名乗って村に住んでいました。ジゼルはロイスと愛を誓い合っていましたが、ロイスが貴族であり婚約者がいることを知ると、驚きと悲しみのあまり理性を失い、狂乱の中、手にした剣で自分の胸を貫くのでした。一同が涙する中、悲劇的な音楽と共に1幕は終わります。今回演奏するのは小長谷宗一氏の編曲による、この1幕の音楽のダイジェストです。
(導入曲〜愛の情景〜葡萄収穫人の帰途〜ワルツ〜狩り〜終曲)
第2幕では、深夜の森の中、ヴィリたちはこの夜加わった新しい仲間〜ジゼルと共に森のなかで踊り、通りかかった祭り帰りの若者たちを引き込むと死ぬまで踊らせるのでした。森の中にジゼルの墓参りに来たロイスはヴィリとなったジゼルと再会しました。ヴィリたちがロイスを見つけると、ヴィリの女王はジゼルにロイスを引き入れるよう命じます。ジゼルに引き込まれ踊り続けるロイスが精根尽き果て倒れて、ヴィリたちの手に落ちようとしたとき、朝が来てヴィリたちは姿を消してしまいました。ジゼルはロイスに愛を婚約者に与えるよう懇願して永遠の別れを告げると、森の奥へと消えて行きます。
(使用楽譜:全音:レンタル)
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1999 Shoji Kaneshige, Manager, The Band of NEC Tamagawa
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