アレクサンドル・ボロディン(1833-1887)は、生涯作曲を専門の職業とすることはなく、軍医として、またペテルブルク医科大学の教授として生涯をおくった、いかにも「5人組」らしい生き方をした作曲家でした。「5人組」の中で彼は最年長でしたが、参加したのも27歳の時ともっとも遅く、また実際の創作の面でも、その個性的表現や高い芸術性はともかく、筆の遅い作曲家でした。
歌劇「イーゴリ公」はそんなボロディンが1869年から構想を練りながらも、結局その生涯には完成することができず、作曲家の死後リムスキー=コルサコフとグラズノフのふたりによって完成され、ボロディンの死の3年後に演奏されました。
歌劇「イーゴリ公」は12世紀のロシア建国時代が舞台で、ノヴゴロ公イーゴリと南部の草原地帯に攻め込んできた遊牧民族のポロヴィッツ人(ダッタン人)との戦いが中心の、愛国物語です。「ダッタン人の踊り」はその第2幕で演奏されるもので、ダッタン人に捕らえられたイーゴリ公の目の前で繰り広げられる彼らの激しい踊りです。
曲ははじめに「ダッタンの娘たちの踊り」と題された短いながらも活気にあふれた舞曲に始まり、続いて5つの部分からなる「ダッタン人の踊り」になります。第1部は「若い奴隷女の踊り」オーボエによる美しい旋律、第2部は「荒々しい男達の踊り」クラリネットが速い動きを見せます。第3部は「ダッタンの奴隷たち全員の踊り」荒々しく勇壮な舞曲、第4部は「少年たち・娘たち・若い男たちの踊り」さらに野生的で、激しいリズムが加わります。「少年たち・男たち・全員の踊り」続いて第1部の旋律が現れます。第5部では、第2部の旋律も加えられ、さらに熱狂的な盛り上がりを作り上げます。
(使用楽譜:ハインズレー)
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1999 Shoji Kaneshige, Manager, The Band of NEC Tamagawa
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