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工藤一幸税理士事務所ホームページ

(注)このページの内容は主に税理士試験から合格して比較的日が経っていない、ホームページを立ち上げたばかりの’97年当時に主に書いたものです。あれから受験時代よりも税理士をやっている時代の方が長くなってしまったので、内容が少々陳腐化している可能性があることをご了承ください。

 

いま税理士試験の勉強中の方や、これから受けてみようかなと思っている方もいらっしゃるかと思います。個人的な意見ですが書いてみました。本音の部分も少し書いてあります。

小さい税理士事務所の日常を見たい方は「税理士日記」をどうぞ。(’08年7月終了)

受験資格について

せっかく目指そうと思っても、受験資格が無いと受けられません。主なものには、簿記1級、法律学または経済学を主たる履修科目とする大学の学部を卒業した人、大学3年生以上で、法律学または経済学に関する科目を含め、一定以上の単位を習得した者、など、いろいろ細かい規定があります。詳しくは国税庁または税理士の受験予備校にお尋ね下さい。

国税庁タックスアンサー へのリンク(受験情報もあります)

大学または短大の卒業生の場合、法学部、経済学部、商学部、経営学部などを出ていれば、卒業証明書の提出で、その他の学部(工学部、文学部など)であれば、法律学または経済学に関する科目を1科目以上履修していれば、成績証明書の提出で受験資格になるので、これからはずれる人はあまりいないのではないかと思います。

学歴については、合格しやすさという点から考えると、周りの合格した方や合格までの年数などを見ていても、あまり関係ないのでは、と思います。有名大学を出ているからすぐに合格するというわけでもないようです。5科目最後まであきらめずに頑張った人が(途中でやめていく人も多いので)最終的に受かるようです。

最近、大学院を出て会計科目の2科目免除、税法科目の3科目免除、あるいは両方の5科目免除(不勉強ですが、これはなくなったかも?)で税理士登録をする人もいます。例えば、税法の受験勉強をしていなくても、税理士として立派に仕事をされている方は多いので、心配はご無用。ただし、本当に何も勉強していないと、あとで本人にツケがまわってくるので注意。税理士という肩書きだけで仕事が集まってくるわけではありません。

独学か学校に通うか

今は、独学で勉強するのは難しいと言われています。受験予備校では、重要性の高いものに比重を置いて効率的に講義を行い、本試験のような形式で模擬テストを何回も行い、試験の対策が取られているので、私は受験生の時代はずっと通っていました。学校はいろいろありますが、私の場合はTACに通っていました。

資格の学校 TAC へのリンク

仕事を17時で切り上げて、その後水道橋か横浜の学校に、週2−3回夜通うというパターンはけっこうきつかったですが、習慣づけてしまえば何とかなりました。あと、電車に乗っている時間なども有効な勉強時間でした。私の勤めていた会計事務所の場合、客先を訪問するタイプの事務所だったので、移動時間はけっこう多く、その時間も勉強時間にあてました。

何の科目から受験するか

何を最初に受けるかが問題ですが、簿記論と財務諸表論の2科目は必修科目で、まず簿記論から受験する人が多いようです。論述問題の無い科目でもあり、一番受験する人が多いです。時間に余裕があれば、簿記論と財務諸表論の2科目、さらに余裕があればプラス税法1科目の3科目といったところでしょうか。

私は受験予備校に通って初年度に簿記、財表を含め3科目合格してしまったのですが、確率的には非常に珍しいことだそう (当時のデータでは1,000分の2)です。ちなみに、4科目目はそれから5年かかってやっと合格しました。やはり受験は甘くありませんでした。

受験に専念するか、仕事をしながら通うか

難しい問題です。短期合格をめざすなら、受験に専念したほうがいいのでしょうが、各科目の合格率が10%くらいなので、専念しても本当に受かるという保証はなく、税理士登録には、会計事務所または会社で経理などの仕事の実務経験を2年以上積まなければならないので、実務経験が無い場合、5科目全部受かってしまうと、実務経験目当ての腰掛け就職とみられ、就職が狭き門になってくる可能性もあります。

仕事をしながらですと、勉強時間があまり取れず、受かるまでに時間がかかってしまう可能性もありますが、大多数の方は働きながら勉強しているようです。私は最初の2年間は受験に専念し、あとは会計事務所で働きながらの受験でした。試験では、実務を知っていたほうが有利な出題のされ方をするときもありました。

税理士試験は5科目をいちどに合格しなくても、1科目ずつ合格していける試験ですので、しかも有効期間が一生ですので、働きながら受験する事が多いようです。周りを見ても、一般の企業や銀行などに勤めている、あるいは勤めていた合格者の方もいます。ですから、合格者の年齢は、30歳代や40歳代の方も多いようです。

最初から会計事務所に勤めるか、他の仕事を経験しておくか

これも人それぞれです。私の場合、一般の企業での営業や貿易などの、あるいは会社組織の経験は大変良い経験だったと今でも思っています。サラリーマン時代に、ふと方向を変えてみたいとはじめて思ったので、戦略的に自分でそういう道を歩もうとしたわけではありませんが。早く税理士としての仕事を覚えたい方は最初から会計事務所に就職するでしょう。ちなみに、一般企業の経理で実務経験をクリアして、会計事務所の経験が全く無くて独立する方もいます。 ただ、仕事をはじめてみても仕事内容は初体験のことばかり、というのはちょっときついのかもしれませんが。

Q 「会計事務所に就職するにはどうしたら良いのでしょうか」というご質問

大手企業にお勤めと思われる方からのご質問が多いのですが、コネで就職するか、新聞や就職情報、職業安定所などでこまめに捜すという、定石通りの方法しかないと思います。定期採用をしている事務所はほとんどなく、たいていは人手がたりなくなった都度、採用をするためです。景気が良いと採用が多く、景気が悪いと採用が少ない傾向があるようです。現在勤めていらっしゃる会社が一流企業であればあるほど、給料などの条件には覚悟をされた方がいいでしょう。 小さい事務所には給与規定がない事務所もあります。 また、会計事務所は小規模零細事業の事務所が多いので、所長や職員の方との相性もあります。個性的な方も多いです。就職が決まらなかったといっても、相性の問題もありますので、あまり落胆しないように。

Q 「なにかアドバイスを」というご質問

やはり大手企業にお勤めと思われる方からのご質問が多いのですが、受験予備校などで話を聞かれるのが一番良いのではないでしょうか。簡単にひとことで言ってしまうなら、「大変な思いをして合格しても、これからは食えないかもしれない可能性があるので、それでもこの道しかないんだと思えば、この道に入ってくるでしょう。」 ということ。

独立して自分で事業としてやっていくのだから、見ず知らずの人に漠然と「何かアドバイスをくれ」、という姿勢はどうかと思います。真剣に考えているならば、もっと悩みや欲しい情報は具体的なものになっているはずではないでしょうか。

会計事務所に就職するにあたって

一般論で申し上げると、雇う側は、最初の1−2年は給料を払って仕事を一生懸命教えて覚えてもらって、そこからやっと事務所のために働いてもらうという段階なので、実務経験2年をクリアして仕事を覚えたら、はい独立します、という人は、採用の対象からはずれてしまわないとも限りません。わざわざ独立させるために給料を払ってノウハウを教える人は多くないのでは。ましてやお客さんを持って行かれるおそれがあるならば。ただし、事務所によっては5科目受かった人材を積極的に採用している場合もあります。最近は、 税理士法人化の動きも少なくなく、独立しない勤務税理士の方も増えてきているようです。

数科目合格の方の就職については、採用に積極的なケースと消極的なケースと、ケース・バイ・ケースです。あまり気にしなくてもいいのでは。科目合格のない方、簿記の資格のある方ない方についても、同様ではないでしょうか。景気が悪い時はなかなか求人がない、ということはあるようです。

事務所によってその経営方針はさまざまですので、就職活動の時は、ポイントを絞って、受験に対しての考え方、職員に対しての考え方、合格したら独立してもらいたいのか勤務税理士として働いてもらいたいのか、その他知りたいことを面接の時に率直に聞いてみるといいと思います。自分にとって相容れない点があった場合、就職してから大変です。仕事が忙しすぎて受験できない、というケースもたまにあるようです。現在は就職すること自体が大変かもしれませんが、職員と会計事務所との相性はやはりあると思います。

事務所によって、会計事務所経験者を雇ったほうが即戦力になって良い、という事務所と、他の事務所で変なクセがついてしまっているので、会計事務所の未経験者を雇う、という事務所と2通りあるようです。どちらのパターンの事務所かは、入ってみなければ分かりませんが、そういう理由で就職できたりできなかったりすることもあるようです。

私も昔そういう面もあったので反省の意味もこめて書いてしまいますが、税理士受験をしていると税法や会計の勉強もしているので、会計事務所の職員としては自分は優秀なんだという錯覚にとらわれることがあります。こういう時は独断で大きいミスも起こしてしまう可能性もあるので、仕事をしている時はもっと所長に報告・相談して、仕事に対して謙虚になることが大事だと思います。

不景気が長引いていることもあって、募集が少ないことだけではなくて、事務所の職員のリストラの話もよく耳にします。やっと就職できても、そこで働き続けることができる保証がない、ということもちょっとつらいことかもしれませんが、本当です。所長にとっては事務所の維持の方が大切、というのは他の会社と同じことだからです。

また最近は、事業者数の減少傾向により、一般的には急激にお客さんが増えるということはないので、従業員を雇わないで、一人で、あるいは家族だけでやっている事務所も増えてきました。その中で就職していく、というのも大変だろうと思いますが、頑張ってください。

(’19年5月追記)逆に大手の税理士法人も増えているので、その中で働くことは昔よりは入りやすくなっているとは思います。

(’08年7月追記)毎年、年間12万軒ずつ、日本の中小企業が減ってくる時代になってきました。そんな中でお客さんを獲得していくのは、昔に比べて容易ではないことは想像にかたくないです。

(’10年1月追記)未曾有の不景気もあってか、実際には詳しく調べていないけれども、感触的な感想ですが、食えていない税理士もどんどん増えつつあるようですね。

(’19年5月追記)税理士試験の受験者数(科目ごとの延べ人数)が平成24年で94,918人、平成30年で58,400人と最近大きく減らしているらしい。会計事務所の採用意欲は高まっていると記事にはあったけど、受験生にとっての魅力的には、どうなのかなあと、ふと思う。

これが5科目合格者(最終合格)数だと、平成24年1,104人、平成30年672人、となる。まあ、大学院卒の科目免除とか、税務署出身の人は数えられていないけど。こういう時代が来るとは思ってもみませんでした。

試験合格がゴールかスタートか

受験のときはとにかく合格する事を目標にしていましたが、いざ税理士になってみると、本当はここから先がスタートなんだというのが当時の実感でした。資格があっても、仕事は自分自身で動いて努力しないと入ってきません。逆に、相談を受けても何も分からなければ、あるいは仕事の質が良くなければ、お客さんは離れていきます。「資格を身につけて高収入」というキャッチフレーズに惑わされないように。 仕事では、営業力と業務の質が大事なのは普通の企業と同じです。

資格はあっても自由業ですから、そこから先はまったく自分の努力で、これは他の仕事と同じく楽な仕事ではないと思います。仕事のクオリティーを高めていくのも自分次第なのですから。 平成14年4月からの広告の自由化や報酬規定の撤廃などで、営業しやすくなってきているとは思いますが、その分報酬も落ち着くところに落ち着く方向にあると思います。

受験中は、何はともあれ、試験合格をゴールとして考えたほうが、励みになっていいのではないでしょうか。受験自体、自分自身の努力に他ならないのですから。早く私達のライバル、そして友人になってください。今度の税理士試験に合格されることをお祈りいたします。

(注)このページの内容は主に税理士試験から合格して比較的日が経っていない、ホームページを立ち上げたばかりの’97年当時に主に書いたものです。あれから受験時代よりも税理士をやっている時代の方が長くなってしまったので、内容が少々陳腐化している可能性があることをご了承ください。

 

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