●メルコゲタを改造してみよう●
※改造は個人の責任で!
【概要】
メルコのSocket5/7用CPUアクセラレータ、HK6シリーズ、HM2シリーズに使われているゲタ (とりあえずメルコゲタと呼ぶことにします) を改造して、コア電圧を16段階に設定できるようにします。
メルコゲタには、大きく分けてNEC PC-9821用とAT互換機用がありますが、どちらも改造方法は同じです。
まず、これがメルコゲタです。写真1はCPUや電源ケーブルなどを取り外した状態です。
←写真1◆メルコゲタ
CPUソケットがハンダ付けされたベース基板に、電源ユニットが垂直に取り付けられています。
それから、CPUソケットのすぐ横にある3組のジャンパは、クロック倍率の設定用です。K6-2の場合の設定を、以下に示します。この一覧は写真1とは逆向き、つまりジャンパが奥になるように見た時の図です。設定を間違えないように注意しましょう。
【改造するのは中期タイプ】
メルコゲタには種類がたくさんありますが、ここで改造するのは、写真1に写っている中期タイプです。タイプの簡単な判別方法ですが、初期タイプだと、電源ユニットに、基板とほぼ同じサイズの巨大なヒートシンクが付いています。MMX Pentium(P55C)搭載製品が該当します。このタイプは電源の構造上、改造は非常に困難です。最新の後期タイプは電源ユニットが約半分のサイズに小形化されていて、出力もパワーアップされているようです。後期タイプの改造法は、メルコゲタ2の改造ページで紹介しています。
中期タイプと後期タイプの区別ですが、CPUアクセラレータの型番の末尾が「-N2」「-V2」「-NV2」「-V2000」「-N3」になっている物には、基本的に後期タイプの電源ユニットが使われているようです。
とりあえず、中期タイプと思われる製品の一覧表を示しますが、調査不足のため、間違っている可能性があります。必ず、自分の目で電源ユニットの形状を確認するようにしてください。
HK6-MD333-N HK6-MD333-V
HK6-MD300-N HK6-MD300-V
HK6-MD266-N HK6-MD266-V
HK6-MX266-N HK6-MX266-V
HK6-MX233-N HK6-MX233-V
HM2-MX233-N HK6-MX200-V
HM2-MX200-N
ちなみに、メルコ製品カタログの'99年1月号によると、この中で現行製品はHK6-MD300-VとHK6-MD333-Vの2つだけとなっています。あとは、店頭在庫や中古を探すしかないでしょう。とくにPC-9821用の「-N」タイプは貴重になりつつあります。
なお、中期タイプには、写真1のタイプのほかに、対応機種の設置スペースの関係から、電源ユニットが逆に付いている物もありますが、電源ユニット自体はまったく同一のものが使われているようなので、改造は可能です。
【準備】
さて、改造を始める前に、まずはゲタを分解します。分解しなくても改造はできますが、分解した方が作業がやりやすいでしょう。ベース基板と電源ユニットはネジとL字型金具とコネクタで結合されています。ネジを外し、コネクタピンを曲げないように注意しながら、電源ユニットをまっすぐ上に引き抜きます。
電源ユニットを観察してみましょう。写真2の向きに見た時、左上の方にジャンパピンを挿すための4組(8本)のジャンパポストが並んでいます。
←写真2◆電源ユニット
中期タイプの電源ユニットでも、ごく最近製造されたロットはコストダウンのためジャンパポストがハンダ付けされていませんが、パターンは用意されています。パターンだけのタイプでも、もちろん改造は可能です。また、一部のロットではここにメッキ線がハンダ付けされていて、電圧が固定されています。
コア電圧の変更は、この部分のジャンパ設定によって行います。改造前の状態では、電圧は5種類しか設定できません。ジャンパが4つあれば、その組み合わせは16通りになるはずですが、そのほとんどの組み合わせは、利用価値のない電圧であったり、電源ユニットが正常に動作しなかったりします。これを、すべての組み合わせでちゃんと動作するようにしてしまおうというのが、今回の改造のポイントです。
ジャンパポスト周辺を、拡大して見てみます。
←写真3◆ジャンパ周辺の拡大
シルク印刷が基板の端にかかって切れていたり、部品の陰になっていたりして、ちょっと読みにくいですが、ジャンパポストの周囲に、R1、R2、R3、R4、R5、R6という、6つのチップ抵抗が並んでいます。これらの抵抗の組み合わせによって、電源回路の動作が決定されます。抵抗の組み合わせは、ジャンパの切り替えによって変化します。
改造前の状態では、ジャンパ設定とコア電圧の関係は、以下のようになっています。なお、実際の電圧は、個体差によって数%の変動があります。
すべてOPEN 2.2V
1-2 SHORT 2.5V
3-4 SHORT 2.8V
5-6 SHORT 2.9V
7-8 SHORT 3.2V
【改造します】
いよいよ改造に入ります。改造内容は非常に単純です。要するに、R1〜R6を適切な値の抵抗に交換すればいいだけです。
今回は、R1=47kΩ、R2=22kΩ、R3=10kΩ、R4=5.1kΩ、R5=3.3kΩ、R6=7.5kΩとしてみました。こうすると、最低1.8Vから最高3.3Vまで、0.1V刻みで16通りのコア電圧が設定できるようになります。
←写真4◆抵抗を交換
基本的にR1〜R6の交換だけで改造は終了です。ただし、ジャンパポストが付いていないロットの場合は、ジャンパポストも追加する必要があります。
ジャンパ設定は、以下の表のようになります。
ロータリー
1-2 3-4 5-6 7-8 core スイッチ
OPEN OPEN OPEN OPEN 1.8V 0
SHORT OPEN OPEN OPEN 1.9V 1
OPEN SHORT OPEN OPEN 2.0V 2
SHORT SHORT OPEN OPEN 2.1V 3
OPEN OPEN SHORT OPEN 2.2V 4
SHORT OPEN SHORT OPEN 2.3V 5
OPEN SHORT SHORT OPEN 2.4V 6
SHORT SHORT SHORT OPEN 2.5V 7
OPEN OPEN OPEN SHORT 2.6V 8
SHORT OPEN OPEN SHORT 2.7V 9
OPEN SHORT OPEN SHORT 2.8V A
SHORT SHORT OPEN SHORT 2.9V B
OPEN OPEN SHORT SHORT 2.0V C
SHORT OPEN SHORT SHORT 3.1V D
OPEN SHORT SHORT SHORT 3.2V E
SHORT SHORT SHORT SHORT 3.3V F
設定が増えたため、ジャンパの切り替えでは電圧の変更がちょっと面倒になりました。そこで、さらに工夫して、ロータリースイッチを取り付けてみました。
ちなみに上の写真4では、ロータリースイッチを取り付ける準備として、すでにジャンパポストが外された状態になっています。
ここでは、写真5のように端子が側面から出ているタイプのスイッチを使います。このタイプなら、ジャンパポストを外したあとのパターンに、そのまま取り付けることができるからです。
←写真5◆ロータリースイッチ
スイッチを回していくと、上の表のように電圧も順番に変化するようになります。これはものすごく便利だと思います。ジャンパを変えようとして、落としたジャンパピンを拾い出すのに苦労した経験は、きっと誰にでもあるでしょう。
←写真6◆スイッチを付けて完成
これで完成です。
写真6では、あとで基板の写真を撮影するために、スイッチを基板の裏に取り付けましたが、実際は表に付けます。スイッチを裏につけると、スイッチと電圧の順番が変わってしまうので、ややこしくなります。それから、ロータリースイッチを指で簡単に回せるように、ノブも付けてみました。
【終わりに】
このページの内容がよく理解できない人、ハンダ付けなどの工作が下手な人は、決して手を出してはいけません。また、当然のことながら、改造によって一切の保証がなくなりますから、覚悟の上で作業に臨んでください。メールであまりにも初歩的な質問をされても、お答えいたしません。
文責:YU
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