●メルコゲタ4の電圧設定について●

   ※改造は個人の責任で!

【追加情報 2000/05/11】

2000年5月、ようやくAMDからK6-2+とK6-III+のデータシートが公開されました。
それによるとコア電圧はいずれも2.0Vとのことで、N4ゲタもすでに公開している改造方法だけで対応できることが判明したため、「改造・応用編」の公開はとりあえず無期延期とさせていただきます。

AMDのデータシートダウンロードページ


【はじめに】
メルコから発売されたN4ゲタの解析です。
ただし、ゲタの裏面にあるディップスイッチの機能は、BFピンの設定以外は自力で解析することができませんでした。
これらのスイッチの設定については、すでに雑誌などで発表されていますが、それをそのまま引用すると、著作権の問題にひっかかる可能性があるため、ここでは触れないことにします。詳細は、他の資料を参照してください。
一方、CPUのコア電圧の設定については、今のところ公開された資料を見たことがないため、ここで解析結果を発表することにしました。

【製品について】
2000年1月末現在、N4ゲタを採用したCPUアクセラレータは4種類発売されています。

  HK6-MD500-N4
  HK6-MD533-N4
  HK6-MS466-N4
  HK6-MS500-N4

これらの製品に使われているのがN4ゲタです。型番がMDの物はK6-2、MSの物にはK6-IIIが搭載されています。
下の写真がN4ゲタです。この写真では、CPUは外してあります。

N4ゲタ ←◆N4ゲタ

過去に発売されたメルコゲタは、色々な種類のCPUに対応させるために、いずれも電圧を比較的簡単に変更できるように設計されていました。ですから、メルコゲタ4にも電圧を変更する機能が用意されていると思われるのですが、残念ながら、製品に付属の「ディップスイッチ設定シート」には電圧に関する記述がありません。
CPUをオーバークロックで動作させるには、コア電圧の設定が重要になってきます。それに、将来発売が予定されているK6-2+は、コア電圧がさらに変更されるかも知れないという噂も流れています。
そこで、メルコゲタ4でコア電圧を変更できないか、調査してみました。

【調査結果】
まず、先に結論を書きますと、電圧の変更は可能でした。
しかし、その機能は用意されているものの、基板の所定の位置には部品がハンダ付けされていないため、実際に電圧を変更するには、ゲタを改造する必要があります。
むしろ、変更が可能だったというよりは、将来電圧が変更できるように準備してあるだけだった、と言った方が正確でしょう。

【詳細な説明】
ゲタからCPUを外すと、CPUソケットの内側に、大小2つのICが見えます。このうち小さい方がリニアテクノロジー社製のLTC1530という、スイッチングレギュレータ制御チップです。

LTC1430の位置 ←◆N4ゲタを真上から見たところ

そして、このチップのすぐ隣には、ディップスイッチ(SW3)を取り付けるためのパターンが存在します。ただし、そこにはスイッチは付いていません。なお、「SW3」のシルク印刷は、ちょうどCPUのソケットの下に隠れてしまっているため、かなり見にくいです。
このSW3こそが、コア電圧を変更するスイッチなのです。

SW3の位置 ←◆電源制御チップ付近の拡大

上の拡大写真で、赤い枠で示した部分にSW3が付くようになっています。SW3は4連のディップスイッチです。シルク印刷をよく見るとわかると思いますが、電源部を上にした時、左から1、2、3、4の順に並びます。このうち、SW3-1〜SW3-3がコア電圧設定のためのスイッチです。ちなみにSW3-4の機能は不明で、デフォルトは基板上のチップ抵抗(R40)によって「常にON」の状態に固定されています。

では、この空きパターンにディップスイッチを付ければいいだけかと言えば、そうではありません。ちょうどSW3と重なる位置に、R39、R40という、2つのチップ抵抗が存在します。まずはこれらを撤去しないと、スイッチを付けることができません。また、SW3のすぐ右側には、チップ抵抗を付けるための空きパターン(R33)が存在します。このR33も、電圧の設定に必要な物です。
これらの抵抗を適切に処理せずに、むりやりスイッチだけを付けた場合、使い物にならない電圧しか設定できなくなってしまいます。

【改造・基本編】

では実際の改造に移ります。
まず、R40を撤去します。次に、R39を外して、それをR33に移動します。抵抗を外したあとの、R39とR40のランドに残ったハンダは、きれいに取り除いてください。そうしないと、スイッチを付ける時に邪魔になります。

抵抗の移動 ←◆チップ抵抗の処理

そして、SW3の場所に4連のディップスイッチを取り付けます。

SW3 ←◆ディップスイッチを付けて完成

電圧設定は、以下のようになります。
    SW3-1 SW3-2 SW3-3  電圧
     OFF   OFF   OFF   1.8V
     ON    OFF   OFF   2.0V
     OFF   ON    OFF   2.2V
     OFF   OFF   ON    2.4V ←デフォルト設定
SW3-4は、電圧の設定とは無関係です。常にONの状態で使用するようにしてください。
これを見ると、N4ゲタにはちゃんと2.2Vの設定があるにもかかわらず、2.4Vがデフォルト設定になっています。搭載されているCPUは2.2Vです。メーカー保証のある製品なのに、クロックだけでなく電圧まで上げてあるとは、ちょっと驚きです。本当に大丈夫なんでしょうか、メルコさん。
SW3-1〜SW3-3の設定についてですが、2つ以上のスイッチを同時にONにするような設定は、設計上盛り込まれていません。とりあえず、以下のような電圧になります。
    SW3-1 SW3-2 SW3-3  電圧
     ON    ON    OFF   2.4V
     ON    OFF   ON    2.6V
     OFF   ON    ON    2.8V
     ON    ON    ON    3.0V



【最後に】
やはり、メルコゲタ4でも電圧の変更は可能でした。しかし、電圧を変更するには、ゲタをかなり改造しなくてはなりません。しかも、そのスイッチはCPUの下に隠れてしまうため、設定を変更するたびにCPUを外す必要があります。
メルコゲタ4に使われているCPUソケットは、今までのメルコゲタと違って、かなり柔らかい材質の物が使われているため、簡単に破損してしまいます。実際、ぼくも精密ドライバーを使って大きな傷をつけてしまいました。
メルコゲタ4は非常に高価ですから、上記の改造をやってみようと思っている方は、ぜひ、専用のCPU取り外し工具を入手されることをおすすめします。専用工具は、秋葉原の若松通商というお店で取り扱っているそうです。(2000年1月現在、商品名「CPUリムーバ」500円)


【おわり】