マーラー 交響曲 第一番 「巨人」

   指揮 キリル・コンドラシン
    北ドイツ放送交響楽団

CIN CIN  CCCD1022

かなり怪しげな、イタリア海賊盤レーベルのライブ録音盤。

演奏は極めて豊かな情感と、激しいテンションに溢れたもので
特に最終楽章の 白熱的な盛り上がりは、コンドラシンのライブの
凄まじい熱気を伝えるものである。
録音もこの手のものとしては良い方で、鑑賞上の問題はない。
問題は、この演奏の録音日時である。
7 March,1981
と記載されている。これはコンドラシンの亡くなった当日のことである。
海賊盤レーベルのデータなど当てにならないとも思えるが
詳しい方に教えていただいたところ、どうもこの録音は、実際コンドラシンの死んだ当日のものであるらしい。
当日は、北ドイツ放送響のアムステルダムでのコンサートであり
本当はツアーに同行していたテンシュテットが指揮する予定だった。
ところが、何かの事情でキャンセルとなり
当時アムステルダムにいたコンドラシンに白羽の矢がたったのである。
マーラーを得意としていた、コンドラシンは代役としてはうってつけの人だったわけである。

こうした、特殊事情による登板であり、おそらくは大して練習もできなかったであろうが
これほど、自在にオケをコントロールし昂揚させて行くコンドラシンの
テクニックと熱気はいささかもそうしたハンディを感じさせないものである。
ただ聴いている分には、気楽なことを言っていられても、実際の指揮では
膨大な緊張と労力が必要だったのであろう。
この演奏の終了後数時間のうちにコンドラシンは心臓発作で亡くなってしまった。
67才と言えば、指揮者としてまさにこれからと言う時期であった。

録音の中でも僅かであるが指揮者のうなり声が聞こえる部分もある。
聴くのがつらくなるような愛聴盤である。


この演奏に関する情報は
もっぱら、ニフティーサーブのFCLAで、ぐす さん、キルギス旅行団 さんに
教えていただいたものである。
あらためて、お礼を申し上げます。