アルヴェーン   交響曲第4番ハ短調「海辺の岩礁から」
スティグ・ウセェステルベリィ指揮
ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団
エリサベト・セーデルストレーム
イェスタ・ヴィンベリィ
 

北欧と言うと何を連想するだろう。
鉛色の海ーフィヨルドー白夜ーオーロラー暗く長い夜
そして、やっぱり、男と女の物語ではないだろうか。そういうことにしよう
その意味で、アルヴェーンの「岩礁から」はまさに、北欧の物語なのである。
ベルイマンの「野いちご」とか「処女の泉」「沈黙」の世界。
(見たのは「処女の泉」だけだけど)

この交響曲はある意味で赤裸々にそれを描いて行く。
何しろ「男と女のいろいろ」がテーマなのに。
それをテノールとソプラノの「あ〜〜あ〜〜」でやってしまう曲なのだ。
そういうと、何かしらぎらぎらした音楽のようだが、
そこは北欧である。
冷たい海の世界、眩い色彩、波頭の煌めき、コバルトの水底から銀色の泡が
ふわーっと浮かんでくるようなそんな感じの音楽である。
音で色彩を現すのは困難だが、この曲を聴いていると、その独創的で見事な
オーケストレーションにより
北欧の海の色が浮かんでくるようである。(しかし、見たことはない。)

アルヴェーン自身の説明
夜想曲風の第一のエピソードは若い男の燃える、さいなむような欲求を
二番目は若い女のおだやかで夢みるようなあこがれを
(これも夜ではあるがもっとやさしくて月明かりに照らされた大きな波のうねる
海で)物語っている。三番目のエピソードは太陽が昇ふたりの最初でしかも
最後の幸福な日、男と女は互いに大いなる至福を見いだし、愛は彼らに啓示
される。四番目のエピソードは嵐によって揺さぶられ、悲劇的な結末が啓示され
幸福は絶滅する。
(パイオニア 北欧音楽の魅惑ー10 H−6062の大束省三氏の解説から引用)
この作曲者の説明にそうとらわれる必要はないと思う、
大変、色彩的で、リヒャルト・シュトラウスの北欧版と言えばよいかもしれない。
何か上質のアニメーション映画でも見るような、幻想的で、
(私が幼いのだろうが)「人魚姫」でも見ているような、童話的なメルヒェンの世界さえ
感じてしまうのである。
ただ、やはり男と女の「声」が物語の主人公であるから、
その辺が演奏の鍵になってくる。
今容易に手にはいるのはヤルヴィ盤(BIS CD−505)だと思うが
残念ながら、テノールがひ弱で、「冬虫夏草」入りのサモンゴールドを
あと10本は飲ませないとだめである。
やはりスウェーデンの名花セーデルストレーム(多少熟女だが)
これもまたスウエーデン屈指のリリックテノールヴィンベリィ
を擁する、ヴェステルベリィ盤が優れている。
またヤルヴィのダイナミックな指揮よりも
柔らかく、抒情的で幻想的なヴェステルベリィの指揮も優れている。
後半のさざ波のような弦を背景に
コールアングレ等の木管が楚々とした囁きを交わす部分の美しさは
絶品である。

但しヤルヴィ盤には交響詩「岩礁の物語」も収録されていて
これはすばらしく美しい演奏である。

真面目な注釈
ヒューゴ・アルヴェーンは1872年5月1日ストックホルムに生まれ、1960年
5月8日ダーラナの病院で亡くなった。青年時代画家になるか作曲家になるか
悩んだと言うだけに、その音楽は絵画的感受性に満ちている。
この交響曲は1908年の作であり。
スウェーデン狂詩曲(ラプソディ)とともに
彼の代表作の一つである。