1990年3月3日

「ははじま丸」は島に沿って北に向かう。沖村から北港に向けて歩いた所を、海側から眺める訳だ。あらためて母島は断崖絶壁に囲まれているなぁと判る。北港の先の乾崎を過ぎる頃、
「クジラだ!」
の言葉で、デッキにいた全ての乗客が右舷に集まる。潮を吹くクジラが見えた。そして、潜行するために尾ビレを高くあげた。
「クジラだ!」
と声をあげたのは実は船長で、乗務員は全て海をにらんでクジラを探していた。

 


1990年3月5日

「アッ!!クジラ!。」
目の前をクジラがジャンプしたそうだ。船長さんが叫んだ。皆、一斉に外を見る。頼む、もう1回ジャンプしてくれ!
船の一番前に数人が集まる。皆、目を皿のようにして海を見つめた。回りにいた漁船も(おそらく客がチャーターしている感じだった。)クジラに気がついて寄ってきた。両船ともエンジンをアイドリング状態にして、無動力で海に浮かんでいた。


「ザブーン!!。シューッ!!」
いきなり海が持ち上がったと思ったら、クジラが潮吹きの為に浮上した。”シューッ”という音は、潮を吹く時の音だった。音が聞こえるほど近距離でクジラを見るのは初めてだった。その距離は50mはなかった。
我々はもう大騒ぎだった。クジラはその後も、船の周りで何回も浮上した。
「3頭いるね、両親と子供だ。」
船長さんが言ったが、3頭のクジラが次々に現れる。ファインダーの中に2頭以上が入って欲しかったが、そうは思うようにゆかなかった。

一番接近した時で、20m以内だったと思った。ピントを合わせなければならない所でクジラが見れたのは良かったが、このクジラ達は、派手なアクションは何もしないのだ。そのうち、飽きてきた。せめて、深く潜行する時に、尾ビレを高く上げる仕種を撮ろうと思った。ところが、彼らはそんな事もせずに遠ざかっていった。

oga11_1.jpg (13480 バイト) oga12_1.jpg (11261 バイト)



http://www2s.biglobe.ne.jp/~kurume/my_hp.gif (6911 バイト)


back