●寝台特急「出雲」

・2006年5月14日  作成
訪れた日 2006年2月24日〜25日
 

「本日、この列車の寝台は全て売り切れて降ります」のアナウンス。普段からこの状態だったら廃止の憂き目に合う事も無かっただろうに・・・。写真、ビデオ撮影者がホームにひしめき、通勤客が驚いた表情を見せている東京駅21時・・・。青い電気機関車に繋がる車両は、電源車、寝台車、食堂車(非営業)と、編成こそ10両以下で寂しいが、かつてのブルートレイン全盛期を思わせる雰囲気があった。

東京駅を出て、横浜まで大都会のネオンを見ながら列車は進み、やがて暗い夜道を突っ走る。本来なら落ち着く時間帯だが、団体に占拠された食堂車を含め、鉄道ファンで占められた車内は本来のブルートレインとは異なっていた。減光されてからようやく落ち着き、通路に設置された、折りたたみの補助席に座り、流れる夜景を肴にアルコールを嗜んでいると、侘しい夜汽車の旅情を感じられた。

未明の京都駅で、軽い衝撃があった。電気機関車からディーゼル機関車へ付け替えが行われたのだろう。東海道線から山陰線に乗り入れた訳だが、この非電化の長大ローカル線を延々と走る夜行列車はとうとう全廃となる(伯備線経由のサンライズ瀬戸は残るが)。山奥の無人駅を黙々と通過する夜行列車・・・。想像するだけで旅情が湧いてくる。

夜明け、朝霧の中を列車は走っていた。右手には日本海が見え隠れする。昨夜の東京駅から想像も出来ない景色だ。6時32分、「城崎」着。まだ駅は眠りの中にあるようだ。香住から先は山陰線の中で一番好きな区間。深い入江と小さな集落を高い所から眺める事が出来る。特に「鎧」駅は、最も山陰らしい景色だと思う。7時09分、トンネルから空中に飛び出すと餘部鉄橋。ここは下から眺めた方が素晴らしいかもしれない。

車内販売の弁当を食べ、腹が満たされた頃、右手に雪を被った単独峰、伯耆大山(別名出雲富士)が現れた。海ばかりが注目される山陰線だが、名山、伯耆大山も素晴らしい車窓である。8時07分、長時間停車の「鳥取」を出ると、すっかり昼行列車の雰囲気になってきた。米子では機関車の写真撮影が出来るとあって、先頭に人だかりが出来ていた。私が山陰線の鈍行客車列車で旅をした時、追い抜いていった出雲の牽引機は重連だったと記憶しているが・・・。

最後の見所は海のような湖、宍道湖。これが過ぎるといよいよ終点「出雲市」だ。10時57分着。走行時間13時間47分、車窓も楽しめて、飽きない旅であった。廃止騒ぎでフィーバーしている列車ではなく、普段着の夜行列車の旅をしたかった・・・。寝台特急「出雲」は惜しまれつつ2006年3月18日のダイヤ改正で廃止された。

東京駅
夜が明けると・・・
小さな集落を空中から
小さな駅にも止まり
大山の絶景
最後は宍道湖
後日、宍道駅で撮影

デビルイヤー提供



http://www2s.biglobe.ne.jp/~kurume/my_hp.gif (6911 バイト)


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