●急行「天北」号(2/4)
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名寄、美深で下車客が目立ち、コンパートメントのような区画を占有できた。15時34分、音威子府を出ると、いよいよ宗谷本線から天北線に乗り入れた。電化幹線、非電化ローカル線、廃止候補のローカル線・・・・。急行「天北」は進むにつれ僻地へ僻地へと進んでゆく。
稚内に真っ直ぐ向かうならば宗谷本線を直進すれば良いのだが、この「天北」は天北線を迂回する。そして天北線は廃止候補の赤字ローカル線。150qという長距離だから廃止が保留されているが、輸送密度的には廃止条件を満たしている。線路規格は最下級・・・。天北線に入った途端、パンクしたタイヤでダートを突っ走るような振動が襲ってきた。想像以上に荒れた線路だ。しかし車窓は素晴らしい、牧場やサイロが広がり、牛たちが放牧されているのが見られる。
ガラガラの車内は静かで快適なのだがジョイントを刻む音が忙しい。短尺レール(通常の半分ほどの低規格のレール)を使用している区間が多く、ゴーというジェットコースターのような音がしたと思ったら、バタバタと普通の2倍くらいの間隔でジョイント音がする。カーブと重なると廊下側に畳まれている補助椅子が次々に飛び出してくる。
15時55分に上頓別を出発し、敏音知を過ぎた頃から車両1両分も無いような板張りの仮乗降場を通過するようになる。車窓に見える川は天北線に沿ってオホーツク海まで流れる頓別川。この辺りの地名は「頓別」とつくものが続く。駅名も小頓別、上頓別、中頓別、下頓別、浜頓別と続く。そのうちのひとつ中頓別には16時24分に着いた。ホームにひっかかるのはせいぜい2両。天北線の各駅は、1両編成のローカル気動車が止まれる程度しかない。
日が西に傾き、心なしか草原が赤く染まり始めた16時43分浜頓別着。かつて、ここは興浜北線を分岐していた天北線最大の駅。それでもホームに収まりきれない。抜けるような青空にオレンジ色のいわし雲が浮かぶ中、列車は雄大な景色の中を走り出す。この辺りが天北線のハイライト。大湿地の中にシラカバや小さな沼が点在する。
「列車はただ今北オホーツク道立公園の中を走っております。まもなく左に見えてまいりますのがクッチャロ湖です。」
車掌のアナウンスに車窓を眺める。このあたりはベニヤ原生花園。花は少ないが沼のほとりにポツリ・ポツリ咲いているのが素敵だ。白樺の向こうに向こうに大きな湖が広がった。西日を浴びて、大草原も白樺の木も、そして湖もオレンジ色に染まっている。まさに大草原のオアシス。このような景色の中に人の姿は確認できなかった。
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各駅ではホームからはみ出してしまう |
湿地帯らしく沼が多い |
白樺・湖沼が続く |
車窓に広がるクッチャロ湖 |
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