那覇から４００km絶海の孤島大東島諸島。折角だから船で行こうとするが、船は約４日ごと（４日サイクル）。しかも曜日には無関係。小笠原諸島のように、船し交通手段が無いという事はないが・・・・。綿密にたてたスケジュール。出航日の朝に連絡するように言われていたので電話すると「今日は波が高くて船は出ないよ。水曜日に延期（２日後）だよ」と事務的に、あっさりと・・・・。怖れていた事が起きてしまった。２日後だって出航できるかわからない。それでも１日前には出航を知らせるメールを受信し、当日も事務所に電話すると乗船手続きについて説明があった。嬉しくなって、事務所の開く時間に合わせて大東海運に向かった。とりあえず発券だけしてもらい、荷物を預けて乗船時間を確認した。
出航３０分前が乗船時間の締め切り。１６時すぎぐらいに船に向かったが、港の外れである。これが遠い・・・。タクシーで乗り付けてくる客もいた。食事は予めとまりん内の売店で購入したが、なんと船酔い止めの薬が無い！ 苦しい船旅が決まった瞬間だった。乗客自らリネン物をとって、寝台に敷く。下段を確保できたが、乗客は５５名の定員に対して、２０名もいなかったのではないだろうか。皆、２日待ったのだろうか。
まだ明るい１７時出航。船には自販機はあるが、売店も、アテンダントもいない。録音放送で説明が流れたが、アルコールは禁止だとか。乗客同士のトラブルを避ける為なのだろう。まさに貨物船に便乗しているのである。船酔いする前に酒に酔う計画も断念せざるをえない。沖縄の南海岸に沿って進む。その為、結構長い時間、スマホでネットを閲覧する事が出来た。やがて日が沈み、本島の灯台の光に見送られて、いよいよ太平洋の孤独な旅となった。
「何処の工場ですか？ え？ 精糖じゃないの？」乗客のひとりに話しかけられて戸惑った。乗客は男性が多かったが、精糖工場で働く季節労働者ばかりだったのだ。精糖の意味もわからず聞き返した私・・・。それ以上、他の乗客と話す事もなかった。聞き耳をたてていると、毎年同じ面子が集まるみたいで、今年は誰がまだ来てないとか、まるで同窓会のような雰囲気だった。
寝るには早く、座席でテレビを見ていたが、それも退屈して早々に布団に入る。今日の海は穏やかで、心配した酷い船酔いは大丈夫だった、やはり小型船らしい短い周期の揺れは気持悪い。そして寝付けない。柱時計から毎時流れる音に、寝なければと焦って、さらに目が冴えてしまった。入港予定時刻は８時であるが、６時すぎに北大東島到着予定を伝えるアナウンスがあった。外に出てみると、朝焼けの中に二つの島が見えた。山頂の灯光（北大東島灯台）に吸い寄せられるように北大東島に近づいた。巨大なクレーンのシルエットが見た。
北大東島の入港は江崎港。港というものの、岸壁に接岸する事ができない。大東島諸島は断崖絶壁に囲まれているので、堤に守られた港を作る事ができないのだ。その為、荷物も人もクレーンで荷役される。下船する乗客は甲板に集合した。我々を迎え入れるゴンドラがクレーンで甲板に降ろされた。遠心力を考慮した見事な操作である。ゴンドラと言えば響きが良いが、どうみても檻にしか見えない・・・。乗客が乗り込むと、グイッと持ち上げらた。まるで気球に乗った雰囲気だ。船が真下に遠ざかって、やがて島の大地に向かって降下した。一瞬の出来事であったが、忘れられない感覚だった。
