間違ったらcancelを出さなければならない?

さいとう のぼる(j0315@cocoa.ocn.ne.jp)

そもそもCancel、カタカナ表記でキャンセルとは何か、から始めましょう。

RFC 1036に書いているとかそういう難しい話をしないでキャンセルを説明するとしたらずばり、

『大声で送り先に向かって「今のなし今のなし今のなし」と騒いでいる』

状態のことを指します。 それで、"Distribution: world"、つまり配布先を「世界」としておくと、全世界へ向けてということになります。 Distribution: が特に指定されていない場合は、ニューズサーバの設定によります。 多くの場合は元の記事と同じ範囲になります。 ただ、これは私感なのですが、いわゆるプロバイダでは、fj.*については無指定の場合多くは"Distribution: world"を意味しているようです。つまり、あなたの「今のなし」は多くの場合全世界向けに流れていると。

まあ、多少正確に説明すると、キャンセルというのは、

『メッセージIDでいうところのこれこれという記事を取り消してくだされ』

という「記事」を出すことで、そのメッセージIDの記事があれば取り消して、なければそれが来るまで待っているというふるまいをします。 ちなみにその記事のことを、「キャンセルメッセージ」と呼んだりします。 待ってる期間は、まあニューズサーバがそれだけを特別扱いしてなければ、普通の記事が消されるまでの、いわゆるイクスパイア(expire)と同じ期間。

つまり、ある記事を消すためにまた別の新たな記事を出しているわけでして、間違ってもその記事を出した事実自体がなくなるわけではありません。

ですので、ときどき見るケースとして何か間違いを指摘されたとして、

「キャンセルしたんだからそれでいいだろ、文句あるか?」

とかいって指摘してくれた人に八つ当たりするケースが見られることもありますが、これはまちがいなわけです。

さらにいえば、ほっときゃその記事だけだったというのに、さらによけいな記事を出しているわけですから、データ通信量の観点からいえば、あんまりお得な話ではありません。 まあ、ハードディスクなどの記憶媒体の観点からいえば、記事が消えないような設定をしていない限り消えるわけですから、多少はうれしいかも知れません。 特に、ついうっかり(うっかりか?) 画像等えらく大きいデータを流してしまった場合とかだと、ほんの少しだけ迷惑の量が減るかもしれません。 それでも、キャンセルメッセージの方は普通、残ってしまいます。 まして、たとえば本文が非常に短いテスト記事をうっかり不適切なニューズグループへ出してしまった場合、いちいちキャンセルするとかえって迷惑に思う人がいるかもしれません。 まあ、そういうのはそもそも投稿時に確かめましょう、とか、テスト投稿はローカルなtestグループで、といったかたちのより基本的なお話に行き着くので、深くはふれません。

また、ニューズへ投稿した記事はすべてのサーバに直ちに届くとは限らず、むしろ遅れはあるものだと思った方がいいものです。そのため、たとえばある記事を出し、キャンセルし、改訂版を送るといったことをした場合、キャンセルメッセージの配送(feedと呼ばれます)が遅れた場合は、はじめの記事と改訂版を読まされる場合もあるわけです。

と、キャンセルした場合のデメリットをいつの間にか説明していましたが、それではどういう場合にキャンセルをした方がいいのでしょうか?

ここでは大まかに 3例しかあげません。それ以外の場合は、各自で考えてください。というのも、記事の全責任は、根本的に書いた本人にあります。 つまり、第三者にできるのは、「こうした方がいいよ」という助言であっても、「俺がこう思ったから、おまえはその通りしなければならない」といったものでは(多くの場合)ありません。 つまり、普通は記事をキャンセルする、というのはある記事に関する責任者、すなわち書いた本人の判断にゆだねられているのです。

(1)

たとえば、それを真に受けてしまったら、何かえらいことになってしまうというような記事を流してしまった場合。

もちろん、fj.*に限らず社会一般論的な話として、何かに書いてあるものを盲目的に信じて実行した結果、何か法に触れたとして、「何々に書いてあるから私には全く責任はない」なんてことは通じません。 それを信じる信じないはその人次第ですし、それを各自でも判断する必要はあるということなんです。 けれども、何か夢見が悪くなりそうだったら別にキャンセルをしてもいいかも知れません。 もちろん、そういった記事をできるだけ流さないようにするのが大前提とはいえますし、自分の記事はちゃんと見直してやった方がいいんですけど。 ただ、"Make Money Fast"みたいなねずみ講まがいの違法なものを、うっかり流してしまった場合は、できるかぎり早くキャンセルした方がいいでしょう。 はっきりいって、それを放って置いて手元にお金が来てしまった場合、最悪捕まります。

(2)

じゃあ、誤字脱字誤解誤用乱筆乱文乱丁乱調とかではどうか。

ここらへんの判断はけっこう難しいです。 というよりも、その人の考え方にもっとも左右されるところ、といってもいいでしょう。 でも、それの訂正版を送るとして、前の文を丸ごと新しい文で置き換える、いわゆる改訂ならSupersedes:を(使えるなら)使った方がいいと思います。 たとえば先の例のように、前の記事をキャンセルしてその後に改訂版を送る場合なら、同じようなやつを何度も読まされることもあり得るわけですから、誤りの程度によってはそう過敏に反応することもありません。 文意を左右されないぐらいでの誤字脱字なら、私はわざわざキャンセルする必要はないと思います。 誰かにつっこまれるのをびくびくしながら待ってもいいでしょうし、その部分の訂正と、さらに記事の内容を補足したぐらいのものを付け加えて自分の記事にフォローする(これをセルフフォローといいます)のもありでしょう。 もちろん、どうしてもさっきのはキャンセルして訂正版を出したい、というのであれば止めはしませんが、訂正版を出すときにはもう一息入れたりとか、桃を食べたりとかしつつ他にも間違いがないか見直すといいでしょう。 たいていの私の失敗談からいって、完璧と思った間違いの訂正には、さらにもう一つ間違いがあるものです。

(3)

最後に、書いたときはかっかしていて気づかない(またはそれでいいと思った)けど、あとで見直したら他の人に対しとても失礼に見えるものを投稿していた場合。

これは、投稿者の「気持ち」に左右されるところです。 たとえその記事が他の人に対して失礼に見えたとしても、それを「問題ない」と主張し続け、キャンセルしない自由も投稿者にあります。 また、キャンセルしたからといって、その記事自体を「なかったこと」にすることはできませんので、たとえばあなたが記事を出し、それをキャンセルするまでの間に、何らかの反応があるかもしれません。

そういうとき、つまり相手を怒らせる記事を書いた場合はどうすればいいか。 相手によっては記事をキャンセルしてメールなどで謝れば、許してくれるかもしれませんし、絶対に許さない、という人もいるかもしれません。 ただ、取り消そうとした記事が、たとえば何かの法(刑法とか)に触れないぎりぎりの線だったとしても、第三者がその記事を見て、

「ああ、この人はこんなことをするんだ」

という目で見るための判断材料に使われる可能性は大きいでしょう。 そういった場合、キャンセルが遅れたり(もしくはしなかったり)したときには、投稿者自身に対するイメージも悪くなるかもしれません。 つまり、まわりまわって自分に返ってくるということですね。

まあ、結局一番いいのは、「キャンセルする必要のない記事を書く」ことです。 一番はじめにあげたとおり、キャンセルとは(場合によっては世界中に)「今のなし今のなし今のなし」といっているようなものです。 つまり、考え方によってはけっこう恥ずかしいといえば恥ずかしいものですし、おそらくそんな思いをしてまで取り消したいような前段の記事とかでは、多分もっと恥ずかしいことを書いているのかもしれません。

そんな恥ずかしいまねをしないためにも、記事は見直しましょう。

なお、本文においては、

「こ、こんな恥ずかしいことをしている私を見て!!」

などといって興奮する趣向の持ち主を対象にはいたしておりません。 ご了承願います。


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